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第214号 前代未聞の不祥事/原チャリで派手にコケた話/母の日/安倍晋三の亡霊

きっこのメルマガ
  • 2023/05/10
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「前代未聞の不祥事」 すでに報道でご存知の人も多いと思いますが、JRA(日本中央競馬会)で前代未聞の不祥事が起こりました。騎手の今村聖奈(19)、永島まなみ(20)、古川奈穂(22)、河原田菜々(18)、小林美駒(みく)(18)、角田大河(つのだ たいが)(19)の6人が、通信機器の持ち込みが禁止されている開催中の競馬場の控室などにスマホを持ち込み、インターネットを閲覧したり通話をしていたとして、5月13日から6月11日までの30日間(開催10日間)の騎乗停止処分を受けたのです。 競馬に限らず、競輪やオートレースやボートレースなど、公営ギャンブルの選手は、レース開催中のレース場の控室などには、スマホなどの持ち込みは禁止されています。これは、内部の者しか知りえない情報を外部に漏洩するのを防ぐための規則で、JRAでは入室前にスマホなどはセーフティーボックスに預けることになっています。 しかし今回、永島まなみ、古川奈穂、河原田菜々、小林美駒の4人は、4月23日の福島競馬の控室にスマホを持ち込み、インターネットを閲覧しました。今村聖奈と角田大河は、同日の京都競馬の控室と調整ルームにスマホを持ち込み、インターネットを閲覧したり、お互いに通話をしていたのです。今村聖奈と角田大河は、競馬学校でも同じ第38期生ですし、小学校も中学校も同級生という幼馴染なので仲良しですが、それとこれとは別の話です。 日本には、北海道帯広市の「ばんえい競馬」や各地の「地方競馬」を含めて、約20人の女性騎手がいます。このうち6人が日本の競馬の頂点であるJRAに所属しているのですが、その6人のうち5人が一斉に処分を受けたのです。きちんと規則を守っていたのは、最年長の藤田菜七子(25)だけなのです。女性騎手を応援しているあたしとしては、本当にガッカリです。特に今村聖奈は素晴らしい才能を持った若手騎手なのに、どうしてこんなことになってしまったのでしょうか。 昨年2022年のJRAの女性騎手の優勝回数は、藤田菜七子が8勝、古川奈穂が10勝、永島まなみが21勝、今村聖奈が51勝です。今村聖奈は昨年3月に18歳でデビューしましたが、そのデビューした年に51勝もしたのです。それも、新人はあまり良い馬には乗せてもらえないのに、人気が下位の馬を上手に操って何度も優勝したのです。これまで、JRAの女性騎手のデビュー年の最多優勝数は「9勝」だったのに、それを22年ぶりに「51勝」に更新したのです。 一方、その今村聖奈とスマホで通話していた角田大河も、昨年3月5日の阪神1Rのデビュー戦で、8番人気の馬で優勝し、続く阪神2Rでも優勝し、栗田伸一、福永祐一に並ぶ史上3人目の「デビュー2連勝」を達成しています。これほどの逸材である上に、父はJRAの調教師、兄はJRAの騎手なのですから、スマホの持ち込みが規則違反であることを知らないはずがありません。 今村聖奈と角田大河は、外部や第三者との通話が規則違反だということは知っていたが、騎手同士の通話は許されるという「誤った解釈」をしていた、とのことですが、そもそも「持ち込み禁止」なのですから、こんな言い訳は通用しません。それに、今村聖奈はインターネットも閲覧していたのですから、完全にアウトです。 これまでにもJRAでは、2011年5月に大江原圭(おおえはら けい)、2013年7月に原田敬伍、2015年3月にクリストフ・ルメール、2016年10月に丸山元気が、それぞれ開催中の調整ルームにスマホを持ち込み、ツイッターなどを閲覧するなどしていたため、全員が30日間の騎乗停止処分を受けています。 特にルメールの場合は、必死で日本語を勉強して、試験問題がすべて日本語のJRAの騎手免許を外国人で初めて取得して、この開催がデビュー戦だったのです。それまで10年以上も短期免許でJRAのレースに出場して来て、日本の競馬の規則は十分に知っていたはずなのに、デビュー開催で調整ルームにスマホを持ち込み、自分のツイッターを更新してしまったのです。 ルメールはJRAのレースだけでなく、ドバイのG1「シーマクラシック」でワンアンドオンリーに騎乗する予定だったので、多くのファンがショックを受けました。結局、デムーロ兄弟の弟のクリスチャンが代わりに騎乗しましたが、3着に終わってしまいました。ルメールは2006年の「シーマクラシック」をハーツクライで勝っているので、もしもルメールが騎乗していたら‥‥と、あたしもガッカリしたことを覚えています。 でも、この「30日間の騎乗停止」は、他の公営ギャンブルと比べると、極めて軽い処分なのです。たとえば競輪の場合は、トップレーサーだった手島慶介が2003年11月に携帯電話を管理施設内に持ち込んで使用したことで、1年間の斡旋(あっせん)停止処分を受けました。「斡旋停止」とは「レース出場の斡旋を停止する」ということ、つまり「出場停止」と同じことですが、最長が1年間なので、手島慶介は最も重い処分を受けたのです。それでも、1年間の処分が明けてから活躍しましたが、5年後の2009年、34歳の若さで自殺してしまいました。 ボートレースでは、福岡所属の平田忠則が、2004年1月に通信機能付き電子手帳をレース場に持ち込んだため、こちらも1年間の出場停止処分を受けました。競輪でもボートレースでも「1年間の出場停止」なのに、競馬では「30日間の出場停止」、ずいぶん違うと思いませんか? また、これは少し内容が違いますが、昨年2月、最強ボートレーサーの峰竜太が、選手自身が主催するインターネット上のゲームイベントで、ボートレースの予想屋と接触したことが判明したため、4カ月間の出場停止処分を受けました。つまり、公営ギャンブルの選手がレース期間中に、インターネットにアクセスしたり外部の者と通話したりすることを禁止しているのは、こういうことなのです。 いくら「自分のツイッターを見ただけ」「騎手同士で通話しただけ」と言っても、その日のレースに出場する選手が、外部の者と連絡できる通信機器を控室などに持ち込むということは、不正行為を疑われても仕方ないことなのです。そのため、出場停止期間の長短はあっても、すべての公営ギャンブルで禁止されているのです。 でも、学生時代には携帯電話などなく、社会人になってから初めて携帯電話を持った、あたしのような昭和生まれとは違って、生まれた時からスマホやPCが身の回りにあった今どきの若い選手にとっては、スマホは生活必需品なのかもしれません。 そして今回は、控室の問題もあったと思います。男性騎手の控室には、ベテラン騎手が何人もいますので、20歳前後の新人がスマホなど手にしていたら、すぐに叱られてしまいます。しかし、女性騎手は最初に書いたように6人しかいません。最年長の藤田菜七子でも25歳ですが、リーダー格の藤田菜七子が他の競馬場のレースに出場していれば、女性騎手の控室は今回処分された5人のうちの何人かになってしまいます。 そうなると、暗黙の了解でコッソリとスマホを持ち込み、インターネットを閲覧したりすることが習慣化されても不思議ではありません。スマホがあって当たり前の時代に生まれた若い選手たちにとって「持ち込み禁止」は、「外部と通話しなければいいだろう」「インターネットも閲覧するだけならいいだろう」という甘い認識だったのかもしれません。 一方、今回の角田大河も、過去に処分された大江原圭、原田敬伍、クリストフ・ルメール、丸山元気も、男性騎手がスマホを使っていたのは、すべて調整ルームなのです。調整ルームとはレースの前日から隔離される宿泊部屋のことで、基本的に個室なので、複数の目がある控室とはまったく違います。 今回、処分された6人は、みんなとても反省していて、涙を浮かべながら謝罪した騎手もいます。今村聖奈は「このたびはご迷惑をおかけして、本当にすみませんでした。私たちがいけなかったです」と謝罪しました。この「私たちがいけなかったです」という表現からも、女性騎手同士が暗黙の了解で控室にスマホを持ち込んでいたことが読み取れます。 30日間の騎乗停止は5週間10開催なので、1日に5レース乗るとすれば50レースを捨てることになります。デビュー年に51勝という奇跡の記録を打ち立てた100年に1人の逸材が、こんなことで自らのチャンスを削ってしまうなんて、本当にもったいないです。6人とも、見ていて気の毒になるほど反省しているので、あたしは強くは言いませんが、これからの30日間、競馬学校に戻った気持ちで、それぞれの所属する厩舎で働いて、この経験をプラスの方向へ活かしてほしいと思います。みんな、がんばれ!

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