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『グーグル日本法人元社長 辻野晃一郎のアタマの中』
~時代の本質を知る力を身につけよう~【Vol.4】
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【今週号の目次】
1.最近気になったニュースから
◆ AIのゴッドファーザーがグーグルを退社
2.今週のメインコラム
◆ グーグルが最強の企業になったわけ(前編)
3.読者からの質問に辻野晃一郎が答えます!
4.スタッフ“イギー”がつぶやく今週の辻野晃一郎
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1. 最近気になったニュースから
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◆ AIのゴッドファーザーがグーグルを退社
ジェフリー・ヒントンといっても皆さんにはあまりなじみがないかもしれません。AI研究における先駆者として、この分野では世界で最も尊敬される研究者の一人です。この人がいなければ、今話題のChatGPTのような生成AIの出現はもう少し先の話になっていたかもしれません。
その彼が、ニューヨークタイムズのインタビューに応じて、10年余り務めたグーグルを辞めたことを明らかにし、業界関係者をザワつかせています。その理由を、「AIがもたらす深刻な脅威について自由に発言するため」としており、「自分のライフワークを後悔する気持ちさえある」とも述べていますので、穏やかではありません。ちなみに、彼がグーグルに関わるようになったのは2013年以降であるため、2010年にグーグルを離れた私は、残念ながら彼とは直接の面識はありません。
ヒントン博士が、AIを積極推進する立場から、逆にそのリスクを憂慮する立場に転じたことは、今後のAI開発やその普及に少なからぬ影響を与える一つの変曲点になる可能性があります。本メルマガ第2号の「最近気になったニュースから」でChatGPTを取り上げましたが、その中で私は以下のように述べました。
「どんな技術革新にも、必ず正負両面があります。AIにも人類の幸福に大いに寄与する正の側面もあれば、戦争や犯罪に悪用されたり、既存の雇用を消滅させていったりという負の側面もあります。サイバー犯罪の専門家によれば、既に闇サイトなどでは、ChatGPTの悪用ノウハウがさまざま出回っているとも聞きます。能天気に諸手を挙げて歓迎できるわけではありません。」
あらゆる技術革新において、まず「楽観」が先行し、「悲観」がその後を追いかけるものですが、ヒントン博士もまさにその流れをたどったと言えます。「自分も中心的に関わって、何か制御不能なとんでもないモンスターを生み出し、世に放ってしまったのでないか、そしてそれがいつしか人類に深刻な危険をもたらす存在になり得るのではないか」という恐れが高じたのでしょう。やはり本メルマガ第2号で、ChatG PTは「息をするようにウソをつく」ことにも触れましたが、生成AIが誤情報のソースとなっていることは、すでに方々で問題視されています。さらにヒントン博士は、「悪人がAIを悪用することを防ぐ方法を見つけるのは困難だ」とも述べています。
今年3月に、――
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