池田清彦のやせ我慢日記
/ 2023年5月12日発行 /Vol.239
INDEX
【1】やせ我慢日記~mRNAワクチンと現代版オカルト~
【2】生物学もの知り帖~PM2.5は非喫煙者の肺がんリスクを高める~
【3】Q&A
【4】お知らせ
『mRNAワクチンと現代版オカルト』
コオロギ食バッシングよりはるかに厄介な現代版オカルトは、反ワクチン原理主義とでも言うべき闇雲なワクチンバッシングである。これは、コオロギ食バッシングと異なり、権威筋(政府やマスコミ)が、相当バイアスがかかった情報を流し続けた反動で起きた面が強く、この手の現代版オカルトの元凶は、情報を操作して、国民を自分たちが主導する政策に誘導しようとする、政権の思惑だと言ってよいと思う。
一応建前は民主主義の国では、国民の健康と安全のためにという錦の御旗を立てて、科学的なエビデンスに基づいて(基づくふりをして)、政策を遂行するのが最も一般的なやり方だろう。政府が公表するエビデンスには正しいものといかがわしいものがあり、政権や政権が擁護するグローバルキャピタリズムにとって有利な正しい情報は、大々的にマスコミによって流されるが、不利な情報は、たとえ正しくとも隠蔽気味になることが多い。
こういう状況を前にして、国民の取る態度はいくつかの類型に分けられる。1.マスコミの流す情報を素直に受け入れて、自分ではほとんど何も考えない人。2.自分の感性や嗜好に反する情報をハナから排除して、自分の気に入る情報だけを選択的に受け入れる人。3.様々な情報を自分なりに判断して、最も合理的だと思われる選択をしたり、最も合理的だと思われる言説を擁護したりして、エビデンスに基づいて自分の行動や意見を変えることができる人。
圧倒的な多数派は1で、次に2、3はむしろ少数派であろう。現代版オカルトに嵌る人は圧倒的に2のタイプの人が多い。一番よく見られるのは、情報の真偽を全く確かめることなく、自分が気に入らない情報を排除して、気に入った情報だけを受け容れる人である。ここで、気に入った情報のほとんどが偽で、気に入らない情報のほとんどが真という人は、典型的な現代版オカルトの信者になる。
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