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知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード
vol. 176
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みなさん、こんにちは!ITジャーナリストの牧野武文です。
今回は、アントグループついてご紹介します。
アントグループは、アリババが開発したスマホ決済「アリペイ」を運営する会社で、それだけでなく、アリペイの付随サービスとして、貸付、保険、資産運用、信用調査などを手掛ける巨大フィンテック企業です。
このアントグループは、2020年11月に上海と香港の証券取引寺の上場をする予定でしたが、その直前に政府が介入をし、上場が延期となりました。その後、監督当局とアントの話し合いが行われ、アントの構造改革が進められました。
そして、2023年1月7日、株主構成の大きな変更が発表されました。その内容の眼目は、それまで53.46%あったジャック・マーの議決権が、6.208%にまで減らされるというものです。
この発表に驚いた方は多いのではないでしょうか。政府の介入により、民間企業の上場にストップがかけられたり、大株主の地位がただの一株主に落とされてしまうなどということは、普通の国では起こり得ないことです。
この背後には、アント、アリババと政府当局の緊迫した関係性があります。アリババは「規制があるからこのビジネスはできない」とは考えません。「規制があるけど、どうしたら実現できるだろう」と考え、規制のないルートを発見して、攻略をしてきます。
一方、政府は放置をしていたら、消費者を守ることができませんし、他の事業者との公平性も失われてしまいます。経済の成長を阻害しないように、新たな規制の枠組みを構築していかなければならないのです。
その結果が、アントグループの場合には、上場中断、株主構成の大幅変更という形になって現れました。
今回は、アントグループに何が起きていたのかついてご紹介します。
知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード vol. 176
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▼目次▼
アリペイ運営のアントに上場中断と株主構成の変更。統治権を奪われたジャック・マーに何が起きていたのか?
小米物語その95
今週の「中華IT最新事情」
Q&Aコーナー
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アリペイ運営のアントに上場中断と株主構成の変更。
統治権を奪われたジャック・マーに何が起きていたのか?
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今回は、アリペイを運営するアントグループについてご紹介します。
今年2023年1月7日に、スマホ決済「アリペイ」を運営する螞蟻集団(アントグループ)が株主構成を大きく変えたという発表を行いました。アントは、アリババのスマホ決済「アリペイ」を運営するフィンテック企業で、決済だけでなく、投資や貸付、保険、信用調査などにも事業を広げ、未上場であることから、中国最大級のユニコーン企業と呼ばれています。
その株主構成変更の眼目は、アリババの創業者、馬雲(マー・ユイン、ジャック・マー)の議決権の大幅縮小です。この変更があるまで、ジャック・マーはアントの議決権の53.46%を持っていました。過半数を超えているので、ジャック・マーは個人でアントの重要事項を決定することができます。アントを統治している、支配していると言ってもいいでしょう。これが変更後には、ジャック・マーの議決権は、わずか6.208%に減少してしまいました。
アントグループは、2020年11月5日に上海証券取引所の科創板と香港証券取引所に上場をする予定でした。しかし、政府当局から待ったがかかります(形式的には、アント自ら上場申請を取り下げたことになっています)。金融監督部門とのミーティングが11月と12月にかけて数度行われ、さらに翌2021年4月になって、アントグループの新しい構成をどうするかが決まり、そこから1年以上もかけて、株主構成の大幅変更の準備が行われてきたものと見られます。
つまり、上場しようとしたら、政府から待ったがかかり、最終的にジャック・マーの影響力を排除する形で決着をしたということになります。
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