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216回 コロナの死者が少なければコロナ対策は成功だったのか

和田秀樹の「テレビでもラジオでも言えないわたしの本音」
中学校の教師が人殺しをしたということで話題になっている。 それが事実だとすれば、「いい先生なのに」と驚きの声があがっているらしいが、私に言わせれば「いい先生だから」のように思えてならない。 多額の借金を抱えていて、犯行に及んだということだが、まじめな人ほど、借金を返さなければと思い詰めてしまう。 厳しい取り立てもあったのかもしれない。 自己破産という選択(この場合、ローンを抱えた家も精算しないといけなくなるが)もあったし、ラジオで宣伝しているように弁護士に頼んで債務整理という手もあっただろう。 借りた金は返さないといけないという自分のある種の道徳観にかられて、人を殺すようになったとすれば、まさに道徳の本末転倒である。 いずれにせよ、殺人を犯すのは悪い人というような短絡的なものの考え方では事件は見えてこない。もともと、まじめな人やいい人が追いつめられてということのほうが多いはずだ。 確かに、最近は道徳観が崩れた人の犯罪が目立つようになった。 高額バイトというのにつられて平気で悪事に手を出す人もいる。 でも、いっぽうで、うっかり応募に乗ってしまった人が、断るとお前の家族の命がないぞと脅されて、家族のことを思って強盗をする人もいたらしい。 彼らをあやつる人間の中には根っからの悪がいるのだろうが、私の印象では犯罪者というのは、ほかの方法で金を返せないとかいう不器用な人が多い気がする。 それに対して、テレビのコメンテーターは推定無罪のはずの容疑者を、犯人と平気できめてかかるし、そのうえ、道徳的に断罪する。否認している容疑者の人権は完全に無視され、警察報道を垂れ流す。さらにいうと、容疑者が悪人だと決めてかかるということだ。しかしながら、長嶋一茂のような男に、金がなくて苦しくて犯行に及ぶ心理の想像は無理だろう。でも、この手の単細胞の正義感でないとテレビには出られない。 そして、また知ったかぶりで、この学校の生徒の心のケアの話も出る。確かにふだん優しい先生が人殺しとしれば、人間不信に陥るかもしれないし、心のケアもあるに越したことはない。 しかし、犯行現場をみたとか、自分が襲われたというのとはトラウマの程度が違うのも確かだ。 それより、ずっと心のケアが必要なのは、今の容疑者の3人の子供たちだろう。 ネットの時代だから、それが特定され、知らないところに引っ越しても、いろいろといじめを受けるかもしれない。 複雑性PTSDになりかねない。 彼らは何も悪いことをしていないのに。 ここでは、容疑者の人権どころか、家族の人権も踏みにじられる。これが先進国と言えるのか? でも、心のケアが大事だというきれいごとはいう。そのくせしてそういう「正義の味方」たちは、彼らに同情を寄せることはない。 悪い奴となっている人を叩いて快感を得ている人たちにしか私には見えない。 彼らに心のケアを語る資格があるのか疑問を感じてならない。

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  • 和田秀樹の「テレビでもラジオでも言えないわたしの本音」
  • 世の中のいろいろなことにたった一つしかないと考え、それを信じ込むことは、前頭葉の老化を進め、脳に悪い。 また、それが行き詰った時に鬱になるというメンタルヘルスにも問題を生じる。 ところが日本では、テレビでもラジオでも、○○はいい、××は悪いと正解を求め、一方向性のオンパレードである。 そこで、私は、世間の人の言わない、別の考え方を提示して、考えるヒントを少しでも増やし、脳の老化予防、メンタルヘルス、頭の柔軟性を少しでもましになるように、テレビやラジオで言えない暴論も含めて、私の考える正解、私の本音を提供し続けていきたいと思う。 質問、相談、書いてほしいテーマ等、随時受付。
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