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【Vol.482】冷泉彰彦のプリンストン通信『日本型空洞化が生む格差社会』

冷泉彰彦のプリンストン通信
「感染症専門家への責任転嫁を停止せよ」  一連の選挙を乗り切ったことなどで岸田内閣の支持率はアップしているよ うです。悪いことではないと思います。また、その背景には、コロナ禍への 懸念が軽減されたことも大きいと思います。  その一方で、現在の世論には、感染症の専門家に対する「批判」がかなり あるようです。世相が明るくなったので、政権の好感度は上がったが、改め てこの3年間の「制約」を考えると、いわゆる「専門家」に対する悪感情が 出てくるらしいのです。  これは違うと思います。  感染症学の専門家、つまり医師であったり医学の研究者である人々の使命 は明確です。それは「感染症患者を100%救命すること」「感染症の伝染 を100%防止すること」です。そのために、高度な医学を学び、様々なケ ースを経験して世界の学問的水準の向上に貢献している人々です。  ですから、基本的にその目標は「ゼロコロナ」です。一時期までの中国政 府、あるいは日本の立憲や共産が主張していた政治的な「ゼロ」ではなく、 本当に究極の目標として「一人の命も犠牲にしない」ことを職業倫理として 人生を捧げているのがこうした専門家の人々です。  勿論、全くの空理空論ではいけませんから、現実論にも関与しています。 ですが、例えば「コロナと経済のバランス」を考えて責任を取るとか、「マ スク着用による子どものメンタル崩壊とのバランスを取る」といった大局観 の必要な判断を行うのは政府です。具体的には官僚と政治家です。  今回のような新しいウィルスの場合は、勿論、専門家の助言は必要です。 ですが、最終的な責任や判断は政治家が行う問題であり、専門家はあくまで 「死者ゼロ」を目指すスタンスが正しいのです。  問題解決の途中で、世論を説得するには政治家や官僚の「利害や組織防衛 の透けて見える」言葉ではダメなので、専門家に前面に出てもらうことがあ りました。本来はそれも姑息な逃げであり、ダメと言えばダメなのですが、 百歩譲って仕方がない面はありました。ですが、現状については絶対に良く ないと思います。  この3年間のあらゆる問題については、責任を引き受けるべきは政治と官 庁です。世論の悪感情が専門家に向かうようではダメです。こうした状況を 放置していては、仮にいつの日か「SARS級の危険なウィルス」が出てき た際に、専門家の動きが取れなくなります。政府が前面に出て、この間の 「社会的な影響の責任を背負う」ことを明言し、専門家への批判を止めるべ きと思います。

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  • アメリカ北東部のプリンストンからの「定点観測」です。テーマは2つ、 「アメリカでの文脈」をお伝えする。 「日本を少し離れて」見つめる。 この2つを内に秘めながら、政治経済からエンタメ、スポーツ、コミュニケーション論まで多角的な情報をお届けします。 定点観測を名乗る以上、できるだけブレのないディスカッションを続けていきたいと考えます。そのためにも、私に質問のある方はメルマガに記載のアドレスにご返信ください。メルマガ内公開でお答えしてゆきます。但し、必ずしも全ての質問に答えられるわけではありませんのでご了承ください。
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