2023年 第20号 【長尾和宏の痛くない死に方】
長尾和宏です。奄美・沖縄地方は梅雨入りをしたそうです。
季節がめまぐるしく変化していきますね。コロナ禍の3年間、時間の流れが止まっ
ていたからか、いつもに増して、初夏の訪れが早い気がしています。
にもかかわらず、やはりまだマスクをしている人が多いね。
マスクを着けている人の街頭インタビューをテレビで見ましたが、
若い女性のなかに、「表情を作るのが面倒くさい」と真顔で言っている人たちが
いて、とても驚きました。女性というのは、終始表情を作って街を歩いている
ものなのでしょうか。
いえこれは若い女性だけに限らず、高齢者にとっても大きなテーマになっている
ようです。5月7日の毎日新聞には、こんな記事もありました。
毎日新聞(5月7日)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが5類に引き下げられるのを機に、
笑顔の作り方を学ぶ講座が人気を集めている。
7日には東京都北区の赤羽高齢者あんしんセンターが、区内でセミナーを開催。
笑顔講座などを開く民間企業「笑顔育」(神奈川県逗子市)の指導で、約30人が
マスクを外して練習をした。
笑顔育では昨年11月にマスク着用緩和のニュースが出てから講座への参加者が
急増し、3月の緩和後はさらに参加者が増加した。
コロナ禍に伴うオンライン講座に参加者はほとんどいなかったが、今年2~4月の
参加者数は昨年同期比の4・5倍という。
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笑顔の作り方が、ビジネスになる。すごい国だなと思う。
今日は、笑顔について少し考えてみましょう。
2015年に翻訳出版された笑顔と脳の関係を解き明かした本を紹介します。
インディアナ大学のマシュー・M・ハーレーらが書いた、『ヒトはなぜ笑うのか』
という認知科学・哲学・心理学の側面から笑いを研究した本です。
人が、あるモノを見て「A」だと思っていたのに、実は「B」であった……そうした
脳の誤謬(間違い)があったとき、人はあえておかしさを感じるのだという。
要は、脳のバグを責めずに笑い飛ばすことで脳の報酬系を活発にし血流をよくする。
間違いにくよくよしてもいいことがない。笑って前に進もうという人間の素晴らしい
システムだということがわかった。
しかし、まだ言葉のわからない赤ちゃんも笑う。新生児期から生後2か月後くらいま
では、お母さんやお父さんの笑顔を真似て笑う時期がある。はっきりと「うれしい」
という感情があるわけではないが、両親の真似をしてコミュニケーションをとる。
その後、生後3~4カ月後からは、大人の笑顔を真似ているうちに、これは、「うれし
い」や「たのしい」という感情のときにするものだ、と赤ちゃんは学習するのだ。
とすれば、コロナ禍でマスク姿の大人しか見ていない赤ちゃんはどうなるのだろう。
笑うという、新生児期の大切な学習をしないまま成長していくことになる。
また、ある学者によれば人間の「笑い」には、動物同士のグルーミング効果と同じ
ことがあるという。犬や猫、猿などは、仲間内で毛づくろいをすることで、親交を
深め仲間意識を高めていく。しかし人間は、仲間同士で毛づくろいをするわけにも
いかないから(毛もないしね)、その代わりに笑いあうのではないか、という説だ。
ある実験では、人は、ほんの短い笑い声を聞いただけで「その人が友人か、そうで
ないか」を瞬時に判断しているという。
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