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ヒエラルキーは人を安心させるが、同時に抑圧の根源として憎まれる 佐々木俊尚の未来地図レポート Vol.756

佐々木俊尚の未来地図レポート
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 佐々木俊尚の未来地図レポート     2023.5.22 Vol.756 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ http://www.pressa.jp/ 【今週のコンテンツ】 特集 ヒエラルキーは人を安心させるが、同時に抑圧の根源として憎まれる 〜〜〜戦後の日本社会で人々はヒエラルキーとどう向き合ってきたか 未来地図キュレーション 佐々木俊尚からひとこと ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■特集 ヒエラルキーは人を安心させるが、同時に抑圧の根源として憎まれる 〜〜〜戦後の日本社会で人々はヒエラルキーとどう向き合ってきたか ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ヒエラルキーは、ピラミッド型の社会の階層のことを指します。たとえば社長、役員、部長、課長、ヒラ社員というピラミッドがある伝統的な会社組織は、典型的なヒエラルキーです。 スタートアップなどの若い業界では、ピラミッド型のヒエラルキーはあまり好まれません。最近だとブロックチェーンの文脈でDAO(自立分散型組織)という管理職を置かない組織形態が注目されました。同じようなフラットな組織は、以前からホロクラシーとかティールなどがありました。無理にブロックチェーンと結びつけずとも、フラットで機動力の高い組織形態はずっと注目されてきたのです。 ヒエラルキーを敵対視する人は多く、つねに破壊されることが期待されます。それでもヒエラルキーが決してなくならないのは、ヒエラルキーが組織を効率的に動かすのに最適だからです。構成メンバーの数が5人や10人ぐらいだったら、DAOやティールでもうまく駆動するでしょう。しかし社員が1000人以上もいるような企業にDAOを全面的に導入すれば、混乱を招くだけです。 これはロニー・リーというペンシルベニア大学ウォートンスクールの経営学者が「フラットなスタートアップ企業の神話」という論文で指摘しています。 ★米大学で意外な研究結果「スタートアップが失敗する原因は、組織にヒエラルキーがないことだ」 | フラットな組織づくりを目指す起業家は多いけれど https://courrier.jp/news/archives/276127/ リーはこう指摘しています。 「『ヒエラルキー』や『管理職』という概念を嫌う起業家は多いですが、結局のところ管理職は絶対に必要です。起業家が考えるよりもずっと早い段階で組織構造について計画し、適切なヒエラルキーを設計しなくてはいけません」 「フラットな組織構造においては、初期段階では試行錯誤が可能になり、創造性を育むことができます。一方、従業員間の調整がうまくできず、従業員の対立や離職が起こり、最終的に商業的な失敗に至る可能性もあります」 またヒエラルキーには、社会を安定させるというメリットもあります。ヒエラルキーがあることで、わたしたちは安心して企業に属し、将来にいたるまでの生活の持続を夢見ることができるのです。ヒエラルキーはセーフティネットの役割も果たしていると言えるでしょう。 ではこのように役割の大きいヒエラルキーが、なぜ人々に嫌われるのでしょうか。 それはヒエラルキーには、あまりにも強い上下関係があるからです。会社で言えば、社長や役員という強者が君臨し、ヒラ社員は最下層の弱者として従わなければならない。組織を駆動するためにはヒエラルキーが必要だと頭ではわかっていても、上下関係にわたしたちは打ちのめされるのです。 しかしヒエラルキーは、突如として破壊されることがあります。DAOやティールやホロクラシーによってではありません。ヒエラルキーを破壊するのは、戦争や災害や黒船のような外部要因です。 幕末に黒船がやってきて江戸時代が終わり、明治政府の要職についたのは薩摩や長州の下級武士たちでした。武士といっても名ばかりで、日ごろは農業にたずさわって半農生活を送っていた郷士たちが倒幕の中心になったのです。

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