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第216号 広島サミットの評価は2.5点/うわなりねたみ/袋角/オマケの小噺

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  • 2023/05/24
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「広島サミットの評価は2.5点」 広島市で開催されていた「G7広島サミット」が、3日間の日程を終え、21日、閉幕しました。取りあえず、大きなテロなどが起こらずに無事に終了したことだけは良かったですが、その評価は様々です。政権に極めて近いスタンスのメディアが諸手を挙げて「大成功!」と報じた一方で、広島の被爆者たちからは厳しい批判の声が相次いでいます。 カナダから広島市に帰郷している被爆者のサーロー節子さん(91)は、岸田首相が主導した「広島ビジョン」の核軍縮に関する声明について、「国際社会には核兵器禁止条約がありますが、声明ではひと言も触れていないので驚きました。広島に来て被爆者と会い、資料館に行って考える機会もあったのに、これまで議論されて来たようなことしか書けないのかと、失望しました」と述べました。そして、「自国の核兵器は肯定し、対立する国の核兵器だけを非難する内容の声明が、被爆地から発信したのは許されないことです」と厳しく批判し、今回のサミットを「失敗」と結論づけました。 15歳のときに被爆し、広島を訪れる修学旅行生などに被爆体験を伝える語り部を続けている広島市の切明(きりあき)千枝子さん(93)は、「核保有国を含めたG7の首脳が原爆資料館を訪れて核兵器の悲惨さを目の当たりにすることで、核廃絶の糸口になることを願っていましたが、その気配がないのが残念です。広島が利用されたのなら悲しいことです」と肩を落としました。 日本原水爆被害者団体協議会(被団協)の木戸季市(すえいち)事務局長(83)は、「核廃絶を正面に据えた議論を求めて来たのに、核の傘の下で戦争を煽るような会議となってしまったことに怒りを覚えます。核兵器廃絶への希望を完全に打ち砕かれました」と厳しく批判しました。 浜住治郎事務局次長(77)は、「核兵器禁止条約には一切触れず、核の抑止力や核の傘を強調した内容には、被爆者の一人として憤っています。広島で開催した意味があったのでしょうか?」と疑問を呈しました。和田征子事務局次長(79)は、「『核なき世界を目指す』という文言だけはありますが、具体的なプロセスが一つもありません」と失望した様子で述べました。 また、被爆者ではありませんが、2017年にノーベル平和賞を受賞した「ICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)」の国際運営委員をつとめる川崎哲(あきら)さん(55)が、閉幕後にメディアの取材に応じました。川崎さんは「世界の多くの指導者が原爆資料館を訪れたことは良かったが、実際の核兵器廃絶の行動が伴わないといけない。その意味では成果がなく、とても失望している」と述べました。そして、「広島ビジョン」については、「相手の核兵器は悪いが自分たちの核兵器はいい、と核保有各国が言っている限り、起きることは核軍拡競争であり、最終的にはわれわれ全員の破滅だ」と厳しく批判しました。 ‥‥そんなわけで、リモート参加の予定だったウクライナのゼレンスキー大統領の訪日によって、完全に主役の座を奪われてしまった岸田文雄首相でしたが、岸田首相も十分にゼレンスキー大統領を支持率稼ぎに利用できたと思います。それは、岸田首相らしからぬ強気の発言の数々から伝わって来ました。 議長の岸田首相は、「G7とウクライナの揺るぎない連帯を示すとともに、法の支配に基ずく自由で開かれた国際秩序を守り抜く決意を新たにするとのメッセージを力強く示せた」などと、ウクライナとの連携、つまり、ロシアとの対決姿勢を強調たのです。閉幕後の会見でも、「対ロシア制裁を維持・強化し、その効果を確かなものとするために、(ロシアによる)制裁の回避・迂回防止に向けて取り組みを強化していく」と、ロシアを名指しで敵対視しました。しかし、本当にこれで良かったのでしょうか? ゼレンスキー大統領としては、G7の強い援護射撃を再確認できただけでなく、バイデン大統領から「EUの同盟国からのF16戦闘機の供与を容認する」という言質が取れたのですから、これだけでも大成功でした。その上、グローバル・サウスを束ねるインドのモディ首相と対面できたのですから、これも棚ボタです。 ロシアとのパイプも大切にしているモディ首相ですから、「紛争の解決方法を見出すために協力する」、つまり、「ウクライナの味方をする」ではなく、あくまでも「和平の仲介に寄与する」と述べただけですが、G7という場がなければ実現できなかった対面ですから、これは大きいです。 ま、インドの外交は、ヒンドゥー教の最高神シヴァの三面神のように、1つの顔はアメリカや日本を始めとした西側諸国の方を向きながら、別の顔はロシアの方を向いており、3つめの顔が周辺のグローバル・サウスに向いているのです。これが一番賢いやり方でしょう。 しかし、G7以外の招待国がどのように動こうとも、主役はG7であり、所詮は「西側諸国の西側諸国による西側諸国のためのサミット」なのです。議論は西側諸国の利益を最優先したシナリオに沿って進められ、その結果、「休戦や和平のための橋渡し」を模索したのではなく、ロシアを名指しで煽って火に油を注いだのです。「ドラクエ4」の作戦コマンドで言えば、「いのちだいじに」ではなく「ガンガンいこうぜ」を選択したわけです。そして、岸田首相が掲げた「核なき世界」というご立派なお題目とは、完全に正反対の方向へ進んでしまったのです。

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