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葛根湯は風邪に効くのか

ドクター畑地の診察室
ドクター畑地の診察室193.2023.5.28. 現役呼吸器内科、総合内科専門医 畑地治です。 世の中に「○○飲んだらすべての病気が治った」「○○制限食をとったらすべての人が健康になる」等、出鱈目情報が溢れています。現代医療の特徴は精密医療で万人に効くような治療はありません。治療方法は個人によって全く違います!おそらく日本で一番多くの呼吸器疾患患者(肺癌、喘息、COPD、肺炎など)を診療する専門医が、最先端の精密医療を解説&ネットでは出し辛い医療や治療の裏側も配信! https://zipangu-management.co.jp/culture_000/hataji/ 三重県出身 自治医科大学卒業後、僻地診療、三重大学勤務を経て、呼吸器内科医師となる 松阪市民病院院長 診療の傍らFM三重で「肺、おさむに聴け!radioを聴いてらんらんらん(lung lung lung)」という毎週月曜日放送の番組を担当 https://fmmie.jp/program/getsumoku/hiosamu.php ***************************** 葛根湯は風邪に効くのか  風邪を引いたら葛根湯を飲む方も多いと思います。風邪を引いた際に、早目に葛根湯を内服したら、早く治ると信じている方も多いと思いますが、このことを前向きに証明する臨床試験を行うことはかなり難しいのではないかと考えます。したがって、風邪を引いたら早目に葛根湯を内服した方が早く治るかどうか証明することは永遠に不可能ではないでしょうか。  これを臨床試験にするとこの様になります。まず、風邪を引いた患者さんを集めるわけですが、風邪引きの定義をどの様にするかから考えないといけません。例えば、「来院時、37.5度以上の発熱があり、日常生活の範囲を超えて、関節痛、鼻水、鼻詰まり、くしゃみ、咳、痰のうち2つ以上の症状が出現すること」を風邪ひきの定義とするわけです。次に、早目と言うのがどの様な時期が早目か考えないといけません 。例えば、「症状発現後、24時間以内を早目とする」と、具体的に時間を限定します。その上で風邪引きの患者さんを集め、葛根湯と、偽薬を医師も患者もわからない状態で投薬し、症状や発熱などをチェックし、葛根湯を内服した患者さんの方が、偽薬を内服した患者さんより明らかに早く改善することを証明すれば良いわけです。  ただ、ここで、大きな問題が少なくとも2つあります。一つ目は「来院時、37.5度以上の発熱があり、日常生活の範囲を超えて、関節痛、鼻水、鼻詰まり、くしゃみ、咳、痰のうち2つ以上の症状が出現すること」と言う定義に合致する患者さんが、果たして本当に風邪引きの患者さんだけなのかと言う問題です。例えば、肺炎を起こしている患者さんも発熱、咳、痰を伴うことが多いですし、進行した癌患者さん、膠原病などの患者さんでもこの定義のような症状が出現します。したがって、定義を満たすだけでなく、色々な検査で、他の病気を否定する必要があります。  胸部レントゲンや採血、場合によってはCTや内視鏡などを行なって、肺炎など、他の病気が隠れていないかどうかチェックする必要があります。そのような検査を行うと、24時間以上時間がかかってしまい、早目に投薬できなくなってしまうのではないかと言うことです。しかしながら、まずは投薬を行なってみて、後で他の病気と判明した方は試験から除外するようにすれば、この問題は回避可能かもしれません。  2つ目は、葛根湯の味の問題です。多くの患者さんは、葛根湯を内服した経験があると思います。したがって、偽薬の形状をほぼ葛根湯と同じように作ったとしても、内服した時の味でどちらか本物か、偽薬か判別できてしまい、試験にならなくなってしまうのではないかと考えることです。このことは、オブラートに包んで内服すれば大丈夫かもしれませんが、臭いにも特徴があり、完全に偽薬を葛根湯に似せて作ることはかなり難しいでしょう。  さらに、大きな問題があります。正確に臨床試験を行うためには、少なくとも単一の施設でなく、多施設で臨床試験を行う必要があります。また、偽薬を作る費用、試験にかかる手間を考えると、お金と人手をどの様に調達するかと言う問題です。葛根湯はもうすでに世の中に出回っている薬剤です。正確にこのような臨床試験を行い、効果があることが証明てもあまり漢方薬のメーカーにはメリットがありませんが、逆に効果がないことが証明されてしまった場合、ダメージは計りしれません。また、多くある漢方薬のメーカーのうち、どこがスポンサーになるかも問題でしょう。  一つ一つの薬が世に出るには(少なくとも最近は)臨床試験をして、しっかりと効果を示さないと認められません。手間もお金もかかります。この週末、某喘息薬開発のミーティングのため、東京のホテルで一日過ごさなければいけない私は、かなり憂鬱な気分です。 ***************************** ドクター畑地の診察室193.2023.5.28号 毎週日曜日お昼に配信予定です。 次号は2023.6.4.です。 お問合せ、感想などはコチラまで zm.magumagu@gmail.com 畑地 治 https://zipangu-management.co.jp/culture_000/hataji/ 三重県出身 自治医科大学卒業後、僻地診療、三重大学勤務を経て、呼吸器内科医師となる 松阪市民病院院長 https ://mie-matsu-kokyuki.mars.bindcloud.jp/ https://www.facebook.com/mch.respiratory.center/ 診療の傍らFM三重で「肺、おさむに聴け!radioを聴いてらんらんらん(lung lung lung)」という毎週月曜日放送の番組を担当 https://fmmie.jp/program/getsumoku/hiosamu.php ***************************** ★お知らせ★ 好評発売中『ドクター畑地の診察室』バックナンバー 1ヶ月分を220円で購入できます。気になった号がある方はぜひチェックしてみてください! ◆2023年04月 https://www.mag2.com/archives/0001688238/2023/04 2023/04/30 無理し過ぎは

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