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【痛くない死に方 2023年第21号】猿之助さん事件に想う―睡眠薬の過剰摂取で「安楽死」できるのか?

長尾和宏の「痛くない死に方」
  • 2023/05/27
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2023年 第21号 【長尾和宏の痛くない死に方】 長尾和宏です。今週も全国各地で地震が起きていますね。 阪神淡路大震災を経験した身としては、もう一度僕が生きている間に大地震が 来るのか……ととても暗い気持ちになります。 しかし生きるということは、それ自体がサバイバルです。天変地異、感染症、 事故や殺人から奇跡的に逃れてきたからこそ、今日まで生きている。 私たちは、全員がサバイバー。今生きているということはつまり、運がいい。 病気になったり事故に遭えば、自分の運命を嘆くでしょう。でもね、嘆いている 自分がいるということは、運よく今日も生きているということでもある。 こう書くと、尊厳死協会の副理事長のくせに、一日でも長く生きることが運は良い 人だとでもいうのか、と怒る人がいるかもしれない。しかし、そんなことを言って いるのではない。ほんの少し前までは、長生きしたことが不幸だなどという価値観は 日本に、いや、世界中に存在しなかったはずです。 超高齢社会、多死社会という言葉はお先真っ暗…というイメージを僕たちに与えがち。 しかし、長生きできる社会というのは、全人類の長年の夢でもありました。 今から約1000年前、日本は平安時代のころになりますが、日本人の寿命は 男性が33歳、女性が27歳だったといわれています。平安時代の三大死因は、 結核、脚気、皮膚病だったそうです。このころの主食はヒエやアワといった 雑穀で、肉や魚が庶民の口に入ることはほとんどありませんでした。 たんぱく質を摂らなければ、人間はせいぜいこれくらいしか生きられないのでしょう。 世界の平均寿命を見ても、1000年前はどの地域も20代後半です。 その後、栄養面や衛生面が文明とともに進化をし、徐々に平均寿命は延びていき ましたが、平均寿命が50歳を超えたのは、実は、戦後1947年になってから のこと。そこから戦後の繁栄を経て、平均寿命が男女ともに80歳を超えたと発表 されたのは、2015年のこと。 30代→50代に延びるまで1000年近くかかっていたものが、 50代→80代に延びるまでにかかった時間は、たった60年である。スゴイ。 これは、医療の勝利、文明の勝利に他ならない。 僕らは1000年前のご先祖様の、3倍も生きることができる。 ……僕が大好きな聖徳太子さんは48歳まで生きたというから、超ご長寿だった、と いうことになる。肉を食べていたのかもしれない。 で、ここから僕の話。 先週、ニコニコ生放送や、このメルマガで、来月で長尾クリニックを丁寧し、町医者 から卒業をすると発表したところ、多くの方からメッセージを頂いた。 「65歳なんてまだ早い」「一生、かかりつけ医でいてほしい」「長尾先生は若いよ」 なんて、うれしい言葉を患者さんからもたくさんかけていただいて、毎日ホロリ、と している。だけど、僕はもう50年も働き続けてきた。 人類の歴史上、後にも先にもないだろう平均寿命80代、人生100年時代という社会

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  • 長尾和宏の「痛くない死に方」
  • 本邦初!100パーセント「死」のことについて語るメルマガ。2000人以上を看取った医師であり、日本尊厳死協会副理事として、日々「死」と向き合う医師と一緒に、死に方について考えませんか? 家族の死と向き合わなければならない人、大切な人が死んで、喪失感から抜け出せない人、今、どうしようもなく「死にたい」人も……あなたのこころに届くメッセージが満載です。
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