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【Vol.484】冷泉彰彦のプリンストン通信『日米における政治力学の反作用』

冷泉彰彦のプリンストン通信
「違和感満載の総理秘書官更迭ドラマ」  岸田総理は長男で政務担当秘書官の翔太郎氏を更迭しました。週刊文春の 報道によれば、昨年12月に「総理公邸」で「忘年会」なるものが開催され たそうで、その際、翔太郎氏は親族ら約10人とともに記念撮影を行ったそ うです。  その場所が「赤じゅうたん」が敷かれた公邸内の階段で、つまり内閣発足 などの際に新閣僚の撮影が行われる場所でした。総理が記者会見で使う演台 で若い男女がポーズを取る写真もあったそうです。また、岸田総理自身も食 事の場に顔を出して挨拶をしていたとも言われています。  そうした撮影が不謹慎だということで、翔太郎氏はクビになったというわ けです。この事件ですが、違和感満載としか言いようがありません。とりあ えず3点指摘しておきたいと思います。  1つ目は、どうして情報が漏洩したのかという点です。バカッターの炎上 現象などを理解していたら、この種の写真が漏洩したらマズいということは、 三井物産OBの翔太郎氏であれば、理解できるはずです。にもかかわらず、 どうして漏洩したのか、これはかなり重要なポイントです。この種の情報管 理でミスをした、これは政治家秘書としては致命的ですし、同時に解明の待 たれる部分です。  2つ目は、閣僚の記念写真を撮る場所だから「ダメ」という発想法です。 そもそも、この「公邸」というのは、元の首相官邸を移設したものです。そ して、様々な国家の意思決定が行われた場所でもあるし、何よりも五一五事 件や二二六事件などの惨劇の現場であり、昭和史の厳粛な舞台でもあります。  そのことを知っていれば、そもそも妙な記念写真を撮ろうなどという気持 ちにはならないのが普通です。またスキャンダル報道を行った側も、閣僚の 記念写真に使う階段だから不謹慎などという「セコい指摘」で終わらせてい るわけで、これでは、関係者一同が、乃木神社の由来を知らなかった某野党 の代表と同レベルとしか言いようがありません。  3つ目は、岸田総理の対応です。まず、自分の子どもを「トカゲのしっ ぽ」のように切って捨てる冷酷、これはかなり奇妙です。ロンドンの一件も そうですが、ああいう報道の罠に引っかかった後は、ちゃんと説明させると かフォローがあってしかるべきですが、今回も翔太郎氏の釈明などはありま せんでした。その上で、父親のくせに自分の長男を切って捨てています。  もしかしたら、翔太郎氏というのは、パブリックスピーチのスキルが限り なく零点に近く、秘書というのもダメ元で務めさせていたのかもしれません。 とにかく、何も説明がないし、それにしては冷たすぎるし、奇妙です。  更に言えば、この「忘年会」には総理自身も顔を出していたというのです から、よく分かりません。一部の報道では、翔太郎氏の友人や知人が招かれ ていたというのですが、そこから写真が漏洩したとすると、総理としても長 男の脆弱な人間関係を分かっていて甘やかしていた可能性もあると思います。

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  • 冷泉彰彦のプリンストン通信
  • アメリカ北東部のプリンストンからの「定点観測」です。テーマは2つ、 「アメリカでの文脈」をお伝えする。 「日本を少し離れて」見つめる。 この2つを内に秘めながら、政治経済からエンタメ、スポーツ、コミュニケーション論まで多角的な情報をお届けします。 定点観測を名乗る以上、できるだけブレのないディスカッションを続けていきたいと考えます。そのためにも、私に質問のある方はメルマガに記載のアドレスにご返信ください。メルマガ内公開でお答えしてゆきます。但し、必ずしも全ての質問に答えられるわけではありませんのでご了承ください。
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