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『 田中優の未来レポート 』
第284号/2023.5.30
http://www.mag2.com/m/0001363131.html
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今回は2023.5.14に開催されたライヴ・アースまつやまでの田中優トークをお届けします。
トーク書き起こし@ライヴ・アースまつやま2023
今お話があった坂本龍一さんですが、坂本さんとは2001年9月11日、アメリカの貿易センタービルでテロがあって、これはどういうことなんだろうか?ということで共通の友人がメーリングリストを作ってれて、そのメーリングリストに呼ばれてその時初めて坂本龍一さんとお会いしました。
坂本龍一さんは実に威張らない人で、あくまで自分は一人の人間に過ぎなくて音楽をやっていて何か特別な扱いをされるのは嫌だという想いのある人で、メーリングリストができていくうちにそれを本にしようかということになって、それが「非戦」という本になりました。
以来坂本さんとはなぜか色々話が合って、それでずっとお付き合いをしていたんですが、今回の訃報を聞いてすごくショックでした。とにかく坂本さんのような普通の意識を持っている人が亡くなってしまったのは、非常にショックなことでした。
坂本さんが言うのは、音楽に対して思う人たちは音楽には伝える力があるって言うんだけれども、坂本さんは何と逆のことを言うんですね。「音楽には伝える力があるっていうのは間違いだ、なぜならば音楽を受け取る人はそこで誤解をするものだから、どんな風に誤解をしてもいいものが音楽なんだから、だから音楽は何かを伝える道具ではない。」そういう風に坂本さんは言うんですね。
悲しき道具、という言葉があって要は悲しき玩具と石川啄木は言っているんだけれど、それが何かというと石川啄木は詩人ではあるけれども、そこで言う言葉は伝えたいとは思っているけれども正しく伝わるものではないんだ。それはあくまで自分が思っていることを伝えるための一つの悲しい道具に過ぎない。それはどんな風に誤解されたとしても、そういうものだからという考え方なんですね。
坂本さんにとっての音楽というのは、悲しきおもちゃ、悲しき玩具、悲しき道具だったんですね。だから音楽として自分としてはこういう想いを入れているけれども、それがそのまま伝わるとは思わないし、伝わったとしてもそれは誤解されても仕方がないんだという風に考えている人でした。
そういう風に考えている人だったから、音楽を伝える道具としては実はなかなか不完全なもので、ちゃんと伝えられるものではないんだという考え方を持っている人でした。
だからこそ、あんなに音楽としては世界的に非常に優れた人であるにもかかわらず、それを自分としては誇るつもりもないし、ただ一人の人間として生きていただけなんですね。
それはなぜかというと、坂本龍一さんのお父さんは出版社の名編集者として有名な人で、戦後の椎名麟三氏や高橋和巳とかいくつもの作家を世に送り出した名編集長だったんですね。
その息子だったから、もともと非常に文学にも詳しくて、そういう中で彼は悲しき道具に過ぎない音楽というものをやっている、それは特別なことではない、だから自分が特別な人間ではないからという風に捉えていたんです。
そのおかげで言うならばぼくのような普通の人と同じように付き合うことができたんだろうと思います。
その坂本さんがついに亡くなられてしまって、すごくショックだったんですが、その中で一つ伝えそびれたな、何とか伝えたかったなということが今頃になってあります。
それは何かというと、皆さん病気にならないための免疫ってありますね?人間の免疫の7割がどこでできるか知っていますか?腸なんです。大腸菌のその腸で免疫が作られるんですね。その免疫に一番かかわっている菌がビフィズス菌だとか色々言われていますが、実はそうじゃなくて腸内の細菌で酪酸菌(らくさんきん)というのがあるんですよ。この酪酸菌って臭いんです。だから酪酸菌って嫌われているんですね。
ところがその酪酸菌が腸の中では微生物に栄養を与えたりして、そして腸管の表面に免疫のための粘膜がありますが、その粘膜を作っているのが酪酸菌。その酪酸菌が腸を一番重要な形で構成していて、その酪酸菌が強いと病気にならない、免疫が非常に強くなるということになります。その酪酸菌って非常に重要なんですよ。恐らく腸の中で一番重要な菌は、ぼくは酪酸菌ではないかと思っています。
その酪酸菌は何をやるとたくさん増えるかというと、酪酸菌の栄養源は水溶性食物繊維。植物の繊維ではなく食物の繊維です。食物繊維の中の、水溶性、水に溶けやすいもの。要はぬるぬるしたものは割りとそうですね。あとはこんにゃくなど。そういうものを原料にして腸内の酪酸を作っていくんです。それが酪酸菌の仕事で、酪酸菌が非常に強い人というのは病気になりにくい。その点でいうと腸を支えているのは酪酸なんだという風に思います。
残念ながら臭いがちょっと臭くて、今いち人気がないんだけれども、その人気のない酪酸が実は私たちを一番支えている菌なんです。その酪酸の話を坂本さんにするのを忘れたなと思っていて、坂本さん最終的には大腸がんで亡くなってしまったので、大腸という部分が非常に重要だということを知っていてくれたら、もしかしたらもっと長生きをしてくれたんじゃないかという気もして、そのことを話しなかったのがとっても残念でならないんです。
この酪酸菌を強くしていくためには水溶性の食物繊維を皆さんもそうですがなるべくたくさん摂ってほしい。
水溶性=水の溶けやすい食物ですね、その食物繊維を摂っておくと、それをせっせと酪酸菌が酪酸にしていって、腸を強くしてくれる、その結果として人間の病気にならないための免疫の7割を作り出すのは腸です。その腸が非常に強くなる、そうすることによって病気にならなくて済むんだと思っています。
その話を坂本さんにすれば良かったのになと今頃になって思うわけです。
逆に今から知ってほしいのはとにかくその酪酸菌のものすごさを、皆さんも酪酸菌を元気にさせると非常に強くなります。
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