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vol.179:もうこれ以上の地下鉄はつくれない。限界に達した中国各都市が注目をする香港地下鉄のTOD

知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード
  • 2023/06/05
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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード vol. 179 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ みなさん、こんにちは!ITジャーナリストの牧野武文です。 今回は、香港地下鉄(MTR)のTODついてご紹介します。 中国ではこの15年ほど地下鉄建設ラッシュが続いていて、2022年末現在で、53都市で290路線、営業キロ数は9584kmにもなっています。日本の20倍ほどになります。 しかし、中国政府が地下鉄建設計画の基準を厳しくしたことから、この数年は建設計画が許可されない例が続き、建設ラッシュも一段落しています。 政府が地下鉄建設計画を抑えるようになった理由は採算性です。各都市の地下鉄収支は一見どこも黒字に見えますが、実は地方政府からかなりの補助金が投じられていて、これがなければ大赤字というのが現状です。 その中で、補助金に頼らず、自立運営できているのが、深センと武漢の2都市です。この2都市は、香港地下鉄のTODについてよく研究をしました。TODとはTransit Oriented Development(公共交通指向の都市開発)のことで、マイカーに頼らない、公共交通を軸にした都市開発のことです。 公共交通運営だけでなく、駅付近の不動産開発も同時に行い、運賃収入と不動産収入の2本立てで運営ができるようになります。また、都市の構造も合理的になり、市民の生活の利便性も上がります。 特に、これから地下鉄を建設したい地方都市にとって、香港のTODは注目の的になっています。 今回は、香港地下鉄(MTR)のTODとはどのようなものであるのかをご紹介します。 知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード vol. 179 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ▼目次▼ もうこれ以上の地下鉄はつくれない。限界に達した中国各都市が注目をする香港地下鉄のTOD 小米物語その98 今週の「中華IT最新事情」 次号以降の予定 Q&Aコーナー ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ もうこれ以上の地下鉄はつくれない。 限界に達した中国各都市が注目をする香港地下鉄のTOD ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 今回は、中国と香港の地下鉄についてご紹介します。 中国の地下鉄は、1969年に開通した北京地下鉄1号線が最初ですが、この15年、20年ほどはどこの都市でも地下鉄建設ラッシュでした。都市を訪れるたびに地下鉄が増えていて、人の流れが大きく変わったことに驚かされます。 2022年12月末の交通運輸部の発表によると、中国の地下鉄は53都市で290路線が運営され、営業キロ数は9584kmに達したとのことです。日本の地下鉄は、Wikipediaの情報によると、札幌、仙台、東京、横浜、名古屋、京都、大阪、神戸、福岡の9都市で、営業キロ数は433.1kmですので、中国の営業キロ数は日本の20倍上もあります(ただし、中国では日本のような郊外私鉄という考え方がないため、日本の私鉄に相当する部分も地下鉄が役割を担っています)。 都市別に見ても、上海市は営業キロ数が900kmを超え、北京市も800kmを超えています。このため、「北京市内での遠距離恋愛」が話題になったこともあります。すでに北京市の端から端までだと2時間近く地下鉄に乗ることになります。市の中心部の会社に勤めている東へ45分の男性と、西へ45分の女性が恋愛をすると、休日に恋人の家に行くのに地下鉄で1時間30分、歩く時間を考えると2時間近くかかることになります。休日に恋人の家に遊びに行って帰ってくると、移動時間に4時間ほど取られてしまうことになるのです。同じ北京に住んでいながら、遠距離恋愛をしているようだというわけです。 しかし、やみくもに地下鉄を建設してだいじょうぶなのでしょうか。地下鉄は鉄道路線の中で最もコストがかかります。特に新路線は深部地下に建設せざるを得ず、さらに建設コストがかかります。一方、運賃は政策的に安く抑えられています。北京地下鉄の場合、初乗りが3元(約60円)で、ゾーン制で加算され、最高でも10元(200円)に抑えられています。これでは、地下鉄をつくりすぎると、運営会社が破綻をしかねません。 そこで、中国政府は都市の公共交通の整備を奨励しながら、同時に地下鉄建設審査基準を厳しくするということを行なっています。都市交通は、何も地下鉄がすべてではありません。輸送能力は地下鉄よりも落ちますが、モノレールやライトレール(鉄道と路面電車の中間形態)などは地下鉄よりも低コストで建設することができ、路線バスも郊外などでは活用できる可能性があります。中国政府は、地下鉄建設計画の審査を厳しくすることで、このような多様な公共交通を組み合わせて、都市交通を整備することを促しているのです。 しかし、まだ地下鉄がない地方都市にとって、「おらが街にも地下鉄を」は悲願になってしまっています。あと先を考えずに、「とにかく1本地下鉄を」で計画を立ててしまい、審査が通らずに、関係者が肩を落とすということが続いています。

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