Weekly R-style Magazine ~読む・書く・考えるの探求~ 2023/06/05 第660号
_____
今週の目次
○「はじめに」
○「セルフ・ステアリングの三要素」
○「慣れたツールで実験する」
○「一周回ったEvernote」
○「Evernoteは循環型」
○「おわりに」
_________
―――――――――――――――――――――――――
○「はじめに」
以前、早稲田大学高等学院中学部の入試問題に倉下の文章が使われたとお知らせしましたが、その問題文がPDFでダウンロードできるようになっていました。
◇2023年度 早稲田大学高等学院中学部 入試問題 | 早稲田大学 入学センター
https://www.waseda.jp/inst/admission/other/2023/03/29/13864/
初っぱなの第一問目ですので、よければ皆さんも問いてみてください。落ち着いて考えないとわからない問題もあるのでなかなか楽しいです。
〜〜〜成功と失敗〜〜〜
自己啓発分野において「成功法」は常なる興味のテーマでしょう。インフルエンサーが主催するオンラインサロンでも、「いかに成功するか」が主眼になっているのだと想像します。少し前には「勝ち組・負け組」みたいな言葉も流行しました。
いろいろなところで「成功」への渇望が高まっています。
それ自体は別に悪いことではありません。欲望の在り方としてよく見られるものです。しかし、その「成功」への渇望が「成り上がりたい」という自身の欲望からではなく、「絶対に失敗したくない」という欲望の裏返しとして表出しているなら少し困ったことになります。
なぜなら失敗を避けていては、どう頑張っても成功を手にすることはできないからです。もう少し言えば、不確定性のある行為──チャレンジと呼びましょう──を避けていては、「何者か」と認識されるような社会的成功は得られないからです。
よって、「絶対に失敗したくない」と思いながら「成功しよう」とすると、屏風に描かれた虎を捕まえよ、みたいな話になってきます。そうなると、悪質な情報商材や怪しい自己啓発セミナーなど「現実にはあり得ないことを謳う」言説に引き寄せられてしまうでしょう。なにせそうしたものでない限り解決できない欲望を抱いているのですから。
妙な話になりますが、「絶対に失敗したくない」という気持ちを抱いているならば、確実な成功を手にすることよりも、気楽に失敗できる環境に身を置いてみることが有効です。そうした環境でむしろ積極的に失敗して、少しずつ慣れていくのです。言い換えれば、認知行動療法的に「絶対に失敗したくない」という気持ちそのものを緩和させていくわけです。
だって、生きていく上で何の失敗もしないなんて、そもそも不可能なことでしょう。
しかしながら、濃い自己啓発界隈以外の領域でも過剰に「失敗」が忌避され、人が失敗の経験を積まないように配慮されているものを多く見かけます。それでは、無菌室で育てられたみたいに失敗に対して免疫がなくなってしまうでしょう。
個人的に大切だと思うのは、成功を確実に手にできるノウハウではなく、失敗してもそこからなんとかやっていけるという実感です。それは「実感」なので、知識として手渡せるものではありません。経験こそが唯一の入手経路なのです。
だからこそ、「場」の設計が大切なのだなと、最近は強く感じます。
〜〜〜ライフハックの引き算〜〜〜
昨今では、意味が希薄化しすぎてもはや存在の知覚すら怪しくなっている「ライフハック」という言葉ですが、そこには当初「生産性向上」という意図が込められていたように思います。
この記事は約
NaN 分で読めます(
NaN 文字 / 画像
NaN
枚)