林を伐採して畑に戻す愚
世界最大の自然災害国へ
歴代王朝衰退は食糧危機
デリスキングが致命傷に
1200兆円の時限爆弾
習近平国家主席は事実上、「皇帝」の地位にある。習氏は極権を握っているだけに、その行動が皇帝並みに「国土防衛」という安全を最重視するパターンに変わった。もはや、国民の暮らし向きに気を遣うことよりも、習氏自身の命運に直結する国防へ焦点を移しているのだ。
習氏は6月30日、中国共産党の国家安全保障委員会で、「現在、直面する国家安全保障上の問題は、格段に複雑かつ困難なものとなっている」と述べ、「最悪のシナリオ」を想定しつつ「荒れる海」への備えを進めるよう呼び掛けた。現実論から言えば、中国の「最悪のシナリオ」は国防面にないのだ。地方政府が、抱える膨大な債務のもたらす「デフォルト危機」こそ、最悪のシナリオである。
中国の国防危機は、台湾侵攻を始めない限り起らない問題だ。台湾防衛に関わる米国から、あえて中国と開戦する必要性はゼロである。この意味で、習氏の国防危機は台湾侵攻を抑止する西側の防衛強化を指している。習氏は、できれば台湾へ侵攻して自らの名前を永遠に中国史へ刻み込みたい。そういう野望が、フツフツと起っているのだろう。だが、米国と同盟国が台湾への守りを固めている。それゆえ、これを見て焦らざるをえないのだろう。習氏の立場では、「最悪のシナリオ」になるのだ。
林を伐採し畑に戻す愚
中国では、「国防最悪のシナリオ論」と符節を合わせたニュースが報じられている。ウクライナ侵攻が起きてから、習氏は地方政府に対して農地を徹底して保護するよう厳命を下したことだ。食糧安保論の立場から、森を切り開き農地にする「退林還耕」措置が推進されている。これは、20年以上にわたり進められてきた「退耕還林」(農地に植林して自然保護する)政策を完全否定する「逆行コース」である。
中国が、「退耕還林」政策を採用した理由は、世界的な自然保護による異常気象対策である。中国は、世界一の二酸化炭素排出国である。これが、異常気象をもたらす要因であることから、中国が緑を増やす取り組みを始めた。その中国が、今なお世界一の二酸化炭素排出国でありながら、森を伐採して畑に戻すことがどれだけ無謀であるか自明のことだ。
習氏は、ウクライナ侵攻による穀物不足を懸念したのだ。そうであれば、侵略国ロシアに対して、無条件「撤兵」を呼びかけるべきである。だが、それを行わないで「退耕還林」政策に走ったのは、中国の台湾侵攻による輸入食料の途絶を危惧したものと見るほかない。だが、中国の食料自給率は年々下がっているのだ。「退耕還林」でカバーできる域を超えている。もっとハッキリ言えば、「焼け石に水」の状態である。
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