久米信行(裏)ゼミ「大人の学び道楽」
授業や講演では話せないこと。連載やSNSでは書けないこと
毎月第1-4 火曜日発行 vol.135 2023/06/06発行
*========*========*=======*=======*
第135号 美しくて優しい仏像たち・人間たち
*========*========*=======*=======*
●INDEX●
1. 今週の東奔西走&七転八倒
>秩父美術館で、美しくやさしい無名の仏像たちに出会う
2. 大人のミュージアム&庭園
>松岡美術館で出逢った「美しい人びと」
3 大人のアニメ&映画劇場
>美しい二人の出会いが旧習を解き放つ「後宮の烏」
4 大人の放課後相談室
>Q 子供の辞めたい気持ちを尊重すべき?引き留めるべき?
5.編集後記~時には大人もボヤキ&ため息を~
>わが見立てで何もかも美しいと感じられる自分に
*========*========*=======*=======*
1.今週の東奔西走&七転八倒
秩父美術館で、美しくやさしい無名の仏像たちに出会う
みなさんには好きな仏像がありますか?
私的に祈る念持仏(ねんじぶつ)をお持ちですか?
気が付けば、私は仏像好きになっていました。
小学校で美術部マンガ班だった私は、修学旅行パンフレットのイラストを依頼され、なぜか十一面観音の絵を描いたのです。特に仏像好きでもなかったのですが、京都のお寺を巡るので、仏像でも書くかと思ったのでしょう。
何を見て書いたのか、不思議なことに、それは渡願寺の十一面観音でした(京都ではなく滋賀の仏さまだと後で知りましたが)。こちらの観音さまは、日本中の仏像を見て回った今でも、私が最も美しいと感じる仏像で、国宝にも指定されています。
大学生になって、祖父が他界しました。それをきっかけに、祖父の代わりに般若心経を唱えようと思ったのか、わが家の仏壇の中の鎮座する、小さな仏さま(念持仏)に向かうようになりました。今でも、週に1~2度、実家で母と食事をする際には、手を合わせて読経しています。
大人になって、旅先で、お寺巡りをすることも増えました。本堂に上がらせていただき、仏像と目を合わせながら般若心経で語り合う。それこそが、私の人生におけるひそかな楽しみになっていったのです。
先日、秩父での用事が早く終わり、思いがけず時間ができました。
そこで検索してみると、近くに秩父美術館があると気づきました。首都圏の美術館は大体回ったと思っていたのですが、私の知らない美術館、盲点でした。
さっそく雨の中、クルマで向かうと、そこは思ったよりも小さな美術館でした。お客さんも誰もいないようで、受付の方も、大声であいさつするまで出てきません。
大丈夫かな?と正直思ったのですが、その不安は見事に裏切られました。二階に上がってビックリ。年代物の彫刻群、それも仏像群が、ガラスケースの中に雑然(失礼)と並べられていたからです。
入口には、いきなり風神雷神がお出迎え。迫力満点の形相で私を睨みつけています。
説明書きを見ると、なんと左甚五郎作とあります。日光東照宮の「見ざる聞かざる言わざる」の三猿で知られる伝説の彫刻家が魂を込めたものでした。
これは油断ならない。ひょっとして名のある仏像、恐ろしい神々や明王の類ばかりでは、、、。
ところが、、、そこは、静かな楽園でした。なんともやさしいお顔をされた小さくて美しい仏像が、ひっそりとたたずんでいたのです。
これまで、私が、国宝だ、重要文化財だとミーハー仏像ヲタクとして捜し歩いていた、大きくて華やかな仏像とは全く違います。
おそらく、誰かが家の仏壇で大切にしていたり、あるいは信心深い人がいつも持ち歩いていたりした私的な仏像、無名の人たちの祈りを集めてきた念持仏なのでありましょう。
そんな愛らしい仏像たちが、何の因果か、秩父の里山のちいさな美術館に集められていたのです。
美しくて愛らしい仏像の中でも、特に私を魅了した仏さまをご紹介いたしましょう。
この記事は約
NaN 分で読めます(
NaN 文字 / 画像
NaN
枚)