久米信行(裏)ゼミ「大人の学び道楽」
授業や講演では話せないこと。連載やSNSでは書けないこと
毎月第1-4 火曜日発行 vol.135 2023/06/06発行
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4.大人の放課後相談室
Q:子どもの「辞めたい」を尊重すべきか引き止めるべきか
小5になった息子が、小1から続けてきたラグビーを辞めたがっています。
高学年に上がり、コーチが代わり、練習が厳しくなったことが一番の理由です。
ただ、昨年辺りから周囲の子たちの体の成長が目覚ましい中で、息子は特に体重面で伸び悩んでおり、それも一因ではないかと親としては思っています。低学年時代は体が大きい方だったので、活躍できていましたが、今はパワー負けすることが目に見えて増えており、それが余計に辞めたい気持ちに拍車をかけているのかもしれません。
小学生の習い事なら誰しも通る、辞めたい時期のような気がしますし、ここで踏ん張れば新たな景色が見えてくると思うので、5年生のうちは頑張ってみないかと引き止めています。
ただ、毎週、ラグビーの練習の前日になると、ため息ばかりになり、これまでは興味を示したラグビー関連のYou Tubeも嫌がるようになりました。
息子の辞めたい気持ちを尊重すべきか、もうひと踏ん張りさせるか、悩んでいます。
神奈川県/46歳/男性
A 子供の「やりたい」を伸ばし、意思決定を促すのが親の役目。また体を大きくするなら小中学校時代の過度な運動は逆効果
おそらく、お父様ご自身は、ラグビーをご自身でも続けられてきて、大好きなのですね。だからこそ、お子さんにも生涯続けて欲しいのが本心でありましょう。
しかし、親と子は、性格も体格も全くの別の人格です。いずれお子さんは、ひとりで人生を歩んでいくのです。そして、多くの場合、親が先に亡くなるので、お子さんの人生を見守り続けることも、何が幸せだったのか確かめることもできません。
私の場合は、残念ながら、子供にやらせたいほどのめり込んだスポーツはありませんが、家業の国産Tシャツメーカーの三代目としては、思うところがあります。
私は、職住一致の環境、しかも周りが町工場だらけの東京下町で、社長の長男として生まれたため、小さい頃から「三代目になる宿命」を負ってきました。
大学卒業後、やがて店頭公開する創業期ベンチャーに就職し、転職後も大手証券会社で新規事業とシステム開発と普及に従事したので、どちらの会社にいても、それなりには成功できたと思います。
しかし、私の心にあったのは、家業を継ぐことのみで、それ以外は考えもつきませんでした。そこで、バブル崩壊後に、特に深い考えも無しに、父に言われるがままに、多大な負債を抱えた構造不況業種に飛び込みます。
死ぬ気で働き、イノベーションを繰り返したので、何とかサバイバルして、五十数億の借金も返すことができました。今考えれば(当時はとてもそう思えませんでしたが)波乱万丈で面白い人生でした。
しかし、最晩年に、末期がんだった父親から「後継者にしてすまなかった」と謝られたことは、今でも忘れられません。親として良かれと思って、息子に薦めた「家業の後継者になる人生」が、愛する息子に多大な苦労を与える結果になってしまったことを反省したのでしょう。
ですから、私は、息子二人に、家業の久米繊維を継げと言ったことは、幼い頃から一度もありません。
その結果、それぞれに、好きな業種の好きな会社に就職しました。
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