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伏木悦郎のメルマガ『クルマの心』
第515号2023.4.11配信分
●半径5m以内が10代、20代の現実的なテリトリー
私は高校時代にサッカーに魅入られた。高校2年生が第19回夏期
オリンピックメキシコシティ大会のタイミングだった。ここで日本
代表が開催国メキシコを3位決定戦の末銅メダルを獲得したことが
強く記憶に残っている。
今ではW杯(FIFA WORLD CUP)が日本(フル)代表にとって出場し
て当然のデフォルトになっている。そこでの優勝を目標に掲げると
ころまで時代が進んだわけだが、あの時代の日本人の国際感覚はロ
ーカルであり、必ずしも世界の現実を反映するものではなかった。
50年/半世紀からさらに遡る1968年の出来事……遠い昔話が現代
において歓迎されるとは思わないが、馬齢を重ねるとついこの間の
出来事に思えるのは事実なのだ。この頃の日本(人)は、ひたすら
西洋の背中を見ながら世界中を駆け回り、エコノミックアニマルと
揶揄されていた。直訳が憚られる表現ではないだろうか。
『24時間闘えますか?』が流行り言葉となる遙か前に、ガムシャラ
に働く世代がいた。後にモーレツからビューティフルを経てここに
来るまでに紆余曲折が数知れずあったはずである。私はぶっちゃけ
『オイルショック以後世代』であり、高度経済成長ピークの1970年
は学生の分際だから、現実をライブで見聞きしたわけではない。
社会に出る前の若い世代が世相の全体像を把握し得ないのは、主
に生活感を持っていない”子供”であることによる。今から振り返
ると、10代、20代は己の身の回り半径5m以内が現実的なテリトリ
ーであり、今日の及ばない範囲については基本的に無知という他は
ない。率直に言って世の中全体がうっすらと見渡せるようになった
のは老境に入ってからという気がする。人にもよるが、そのことに
気づかずに終わることの方が多いのではないかと思う。
そんな当時、テレビ東京が放映していたのが『三菱ダイヤモンド
サッカー』だった。記憶するのは私の世代+5歳がやっとだろう。
現在のプレミアシップが始まる遙か前のイングランド1部リーグを
中心にオンエアされたテレ東の番組名だが、リアルタイムとは程遠
い1~2週遅れの放送。今では生(ナマ)が当たり前のスポーツ中
継に馴れた世代には理解不能だろうが、実業団中心の日本リーグに
はないプロサッカーの世界を知る唯一の手立てとしてこれに優るも
のはなかった。情報通信の技術の進歩はまさに隔世の感があり、地
球が小さくなったと錯覚するほどだ。
まだ”巨人・大鵬・玉子焼き”が日本中を覆う価値観を代表し、
常識とされた時代。サッカーは野球/相撲に比べたら遙かにマイナ
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