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【痛くない死に方 2023年第23号】「滝山病院事件」――精神病院問題とワクチン問題の共通点とは?

長尾和宏の「痛くない死に方」
  • 2023/06/10
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2023年 第23号 【長尾和宏の痛くない死に方】 長尾和宏です。全国的にいよいよ梅雨入りしましたね。 昨日から、日本尊厳死協会などの仕事で東京に来ています。日本尊厳死協会は、東京 本郷三丁目が最寄り駅。駅のすぐそばに昔ながらの和菓子屋さんとか金魚屋さん、 あとそうそう、いい匂いがしたと思ったら近くに鰹節屋さんもあった。鵜飼商店と いって、東京の名だたる料亭が買いにくるらしい。 そして本郷三丁目といえば、そう、東京大学だ。 僕は、東京医科大学卒。だけど、関西の人は東京大学医学部も、東京医科歯科大学も 東京医科大学も、ぜんぶごっちゃに聞こえるようです。患者さんの中には、長尾さん はさすが東大出身や!とほめてくれる人もいます。まあ、二文字で略したらどれも 東大だよね。だけどほんとに、このコロナ禍を経験して、僕は東大医学部のエリート の道を歩まないでよかったなあと負け惜しみでなく思っている。 東大医学部出身のエリート医者たちほどコロナ禍の発言がめちゃくちゃだったから。 鳥集徹氏と医師の和田秀樹氏が対談した「東大医学部」という本が面白い。 これでもか!というほど、東大医学部がいかにおかしくなったのか、ということを 縦横無尽に語っている。 東大医学部の前身は日本初の官立医科大学として設立された東京帝國大学医学部。 それまでは東洋医学を主体としていた日本であったが、明治政府はドイツ医学を 採用し、日本中に普及することがこの医学部の目的だった。 そう、東洋医学から西洋医学へのパラダイムチェンジ。そのために作られた機関 である。そして、全国各地に「医学校」を設立するべく、東京帝國大学医学部では その各地の医学校の配属するための教授を育てるための役割を担った。 だから、日本医学会、日本内科学会、日本外科学会をはじめとする主要な専門医学会 の歴代理事長も、ほぼ東大医学部出身者が占めている。 確かにみんな、頭がいい。いや、良すぎる。ではその頭の良さが、良い臨床医として の素質かと言えば――そこは大きな疑問である。 頭が良すぎる人は、えてして、コミュニケーションに問題を抱えている人が多い。 いわゆるアスペルガー的な天才肌の人もいる。でも、超エリートとして育てられてき たから、話が通じないのは、相手が馬鹿だからと考えるため、コミュニケーション力 を高めるための努力をしない。 もちろん医師になるためには、大量の医学知識が必要だし、それを引き出して使いこ なす応用力も大切。さらには、統計や論文を読み込むための数学的な知識も必要。 だけどやっぱり、臨床医にとってもっとも必要なのは、人間力なのである。 東大医学部出たなら、臨床医じゃなくて大学で研究者を目指すべきでは? そう思われる人もいるであろう。 しかし、実際に研究者から大学教授のポストにつける人は、東大医学部を出ていて もほんの一握り。つまり、コミュニケーション能力がなくて研究者を目指して東大 医学部に入ったけれど、そのポストにつけなかった人たちが仕方なく臨床医になる、 というケースもたくさんある。基礎医学の研究をしたいけれど、それでは東大医学部 とはいえ食べていけないから、食い扶持を稼ぐために臨床の教室に所属し、研究も 臨床も中途半端のまま中年医師になっている人も多くいるようだ。

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  • 本邦初!100パーセント「死」のことについて語るメルマガ。2000人以上を看取った医師であり、日本尊厳死協会副理事として、日々「死」と向き合う医師と一緒に、死に方について考えませんか? 家族の死と向き合わなければならない人、大切な人が死んで、喪失感から抜け出せない人、今、どうしようもなく「死にたい」人も……あなたのこころに届くメッセージが満載です。
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