【父親との別れ】
「今年のMVPは、みっちゃん、おめでとう」
忘年会は大いに盛り上がった。
約束通りみつおが全ての店を決めていいというので、みつおは自分が働いていた居酒屋で打ち上げ忘年会をすることにしたのだった。
従業員を連れて訪れたので、その居酒屋のオーナーも喜んでくれた。
みつおがトップ営業マンになった事を伝えると
「そうなの、金城さん凄いねぇ、じゃ今日はボトル1本サービスするね」
そう言って泡盛ボトルを出してくれたのだった。
今日はみつおにとってメインイベントだった。
次の店も決まっていた。
長年お世話になった五番街である。
そこに行くのが超楽しみであった。
今まではカウンターの中でボーイをやっていた店で、シートに座って接待されるのは初めての経験だった。
そこでもみつおがトップ営業マンになった事を伝えると、ママさんがウイスキーのボトルをプレゼントしてくれた。
みんながみつおの成功を喜んでくれている感じだった。
そこでけっこう盛り上がったので、いい気分のうちに解散したのだった。
しかし、みつおはそこで終わるわけもなく、自分の行きつけの店に一人で向かったのだった。
その日は記憶が無くなるまで飲み明かして、何時にどうやって帰ったのかも覚えていなかったが、自分の家で寝ていたのでホッとしたのだった。
二日酔いで頭が痛くて、夕方までダラダラしてすごした。
家には誰もいないので、一人でポツンと大きな家でたたずんでいた。
「せっかくここまできたのになぁ」
なんだか虚しい気持ちだった。
一番喜ばせたかった母親はいない。
そして、せめて父親にだけでも親孝行しようと思っていたのだが…
あれはみつおが営業マンとしてやり始めた夏の日だった。
「みつお、お前のお父さんが入院したからすぐに病院にきなさい」
突然に従兄弟の奥さんから連絡がきた。
急いで国立病院へと向かうと、お医者さんに大事な話があるからと呼ばれて2人で話をしてした。
「金城さん、残念ですがお父さんは肺がんでステージ4の末期になっているので、完治するのは難しいと思います」
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