推進力失う中国経済の限界
途上国への巨額融資焦付け
グローバルサウスは金次第
中国外交最大の欠陥は、秦の始皇帝が中国統一を実現させた手法を今なお受け継いでいることだ。「合従連衡」や「遠交近攻」という策がそれである。これらが成功したのは、「漢族社会」いう前提あってのことである。同じ民族であるから、心理的にわかり合える部分があった結果だ。現代世界においては、全く条件が異なる。異民族の世界である。これを忘れて「恫喝・札びら」外交をしているので、西側諸国から警戒されている。広く解釈すれば、「文化の衝突」という面もあろう。
「恫喝」外交とは、戦狼外交である。強い調子で相手国を非難する外交だ。これには、経済制裁も交え腕力で相手国を屈服させようという強引さが特色である。この被害国は、日本・韓国・豪州がある。日本は尖閣諸島帰属をめぐってレアアース輸出禁止策に出た。韓国は、THAAD(超高高度ミサイル網)設置に反対した経済制裁を実施。豪州は、新型コロナ発生源をめぐる調査要求に対して、石炭・小麦・ワインなどで輸入禁止措置にした。
通常、外交上のもめ事が発生すれば、話し合いが行われる。中国の場合は、問答無用で一挙に「実力行使」だ。GDP世界2位の国家が行うことではない。ある意味で、「児戯」に等しい振る舞いをしてきたのである。
「札びら」外交とは、発展途上国への一帯一路プロジェクトで多額の資金を貸付け、インフラ投資を行うことだ。中国は、資金の貸付けからインフラ工事まで、一切を賄い多額の利益を得てきた。国内の余剰生産化した、鉄鋼やセメントのはけ口に途上国を利用したものだ。途上国側は、こういう裏事情も知らずに高利(商業ベース)の金利(5%以上)を支払う羽目に陥り、財政破綻に陥る国が増えている。
最大債権者の中国は、途上国のデフォルトに直面している。破綻した財政を再建する目的で、貸付元本の切り捨てが要求される立場へ一変している。中国が、商業ベースの高い金利を課しているのは、貸付資金を国際金融市場で調達して、「又貸し」している結果である。「自己資金」の貸付であれば、低利になるはずだ。中国は借りた資金の「又貸し」のために、貸付元本切り捨てには、「絶対反対」の姿勢を見せている。丸損になるからだ。
推進力失う中国経済の限界
以上の経緯によって、中国外交を特色づける「恫喝・札びら」外交は、一大転機を迎えている。裏付けになる中国経済が、従来のように「順風満帆」ではないことが明白であるからだ。不動産バブルの崩壊(内需不振)と米中対立の激化(輸出不振)に加えて、人口動態の悪化(貯蓄率の急低下)の3要因によって、中国経済はもはや昔日の面影を失う危機に直面している。
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