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<Vol.1346号:自由な判断の前提の、認識ということについて>
2023年6月14日:深層学習型AIと共生するために
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著者:システムズリサーチ:吉田繁治
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われわれは、自分の目の感性で「ありのままの存在を認識している」と考えています。果たして、そうか?
人間の目は、3000万画素を感知できるという。デジタル画像の4K(フルハイビジョン)は、3814×2160=829万画素からなります(ピクセル)。
8Kの放送が7680×4320=3318万画素ですから、目の網膜が受け取る画素とほぼ同じです。情報の量だけでいえば、8KのTV≒目の網膜が区分する画素数です。
では、われわれは、高精細のテレビカメラと同じように視覚で画像を受け取って、モノを認識しているのかというと、それは違います。
◎目の画像情報は、脳にある概念(=知識)と照らし合わせられ、確率的に像を結んでいるからです。われわれは、認識を意識することがない。「ありのままに見ている」ように考える。脳は、自動的に働いています。
AIの、特徴量による画像の識別と似ています。適切な学習が進んだAIは無限数の変化がある画像を見て、経験ある人間に準じるまたは人より優れた判断をします。深層学習型AIは、人間の認識をマネですが、脳と同じとはいえない。
情報を受け取った脳は、具体物の演奏やリンゴにはある違い(情報)を捨象し、「これはグールドのバッハだ、あるいはリンゴだ」と認識します。
具体物の音や映像は、無限の変化があるアナログです。人間の画像認識も、確率的です。青い梨を、青いリンゴと間違えることもあります。具体物の梨とリンゴには無限に近い変化があるからです。
「これが唯一のリンゴだ」という画像はない。フランスの画家、ルネ・マグリットはパイプの絵を描いて、下に「Ceci n'est pas une pipe(This is not a pipe)」という謎かけをしています。
不定冠詞のune(フランス語)は英語のaと同じです。脳にあるリンゴの概念を示す。一方、the pipeとすると、ここにある具体物のパイプです。
不定冠詞と定冠詞のない日本語では、自分の外部にある事物や自然と、脳内の事物の概念を区別することが少なかった。
このため、古典文学に多い、「(山に籠もって)変化する自然と一体になる人生観」も生まれたのでしょう。『方丈記』や『徒然草』の自然感がそれです。都市は人工ですが、山と植物は自然です。ビット(0/1)の観点では、アナログの自然のものは、情報量が無限です。人工の概念は、情報量が少ない。
近代でも、志賀直哉の時任謙作では、自然との一体が最後の救いになっています(名作:『暗夜行路』)。
一方、脳内で個人を確立しようとしていた夏目漱石は、中断した最後の小説、『明暗』の悩みのうちに、胃潰瘍で亡くなっています。漱石の「明」とは、何だったのか。西欧的な個の自由だったかもしれないと考えています。漱石の小説は、個人を自由にしてくれるお金(遺産)にこだわっています。親が不自由なこと(仕事)をして、ためた資産です。自由に仕事はできない。仕事には、顧客に向かう目的と手順があるからです。漱石の主人公は、ほぼ全員が遺産で生きる遊民です。
◎マグリットは、具体物のパイプ(the pipe(=this pipe))は、描くことができる。しかしパイプという、自分の脳の抽象概念は、描けないという論理的なことを言っているのです。
(パイプではないというパイプの絵)
https://www.artpedia.asia/magritte-the-treachery-of-images/
あなたの脳に浮かぶリンゴの画像は、過去のいろんな機会にたくさん見てきたリンゴの特徴量を、確率的に抽象化した概念です。
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