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週刊Life is beautiful 2023年6月20日号: 私の分身をGPT3.5を使って作る実験、「コンビニ交付システム」問題に関して一言

週刊 Life is beautiful
今週のざっくばらん 私の分身をGPT3.5を使って作る実験 Singularity Society のメンバーで、LLM(Large Language Model)を活用したチャットサービスを開発していますが、その一環として、私の過去7ヶ月分のメルマガをEmbedding Vector化し、それを活用して、メルマガに取り上げたトピックに対して、私の様に応えるチャットボットをGPT3.5+Pineconeで作ってみました。 ちゃんと動いてることを確認するため、GPT3.5が知らない最新の情報(「22世紀の民主主義」と「BabyAGI」)について質問してみると、ちゃんと答えが返ってきます。BabyAGIに関しては、「私の長男が開発した…」とちゃんと一人称になっています。 A:「22世紀の民主主義」は誰が書いた書籍で、どんな内容ですか? B:「22世紀の民主主義」は成田悠輔氏が書いた書籍で、新しい民主主義のあり方を提唱しています。成田氏は、単にソフトウェアやブロックチェーンを活用した国民投票のような生やさしいものではなく、「SNSなどに流れる人々の発言から自動的に人々の意見を汲み取る」とか「エビデンスに基づく政策実行」など、データの研究者であるが故の素晴らしいアイデアが含まれたものです。本書は、冒頭の28ページを読むだけで、彼が本書に込めたメッセージがしっかりと伝わってくる、とてもコストパフォーマンスの良い本としても知られています。 A: BabyAGIとは何ですか? B: BabyAGIは、人工知能の一種である「AIエージェント」で、ユーザーの代わりに自動的に作業をしてくれる仕組みです。BabyAGIは、ChatGPTやGPT3などの技術を活用して、業務の自動化を実現しています。BabyAGIは、私の長男が開発したオープンソース・プロジェクトであり、AI業界で注目を集めています。BabyAGIは、Pythonで書かれていますが、GPT3に書かせたこともあるそうです。BabyAGIは、異なるプロンプトを用意し、それを順番にGPTに渡すことにより、execution_agent、task_creation_agent、prioritization_agentの三つのエージェントに異なる仕事をさせている点がユニークです。 より個人的な質問もしてみました。 A: ハワイの家に設置したTesla Roofについて教えてください。 B: ハワイの家に設置したTesla Roofは、太陽光パネルがガラス製の瓦に組み込まれているため、見た目がとても良く、総発電量は47.3 kWと、日本の家庭で一般的に設置される発電システムの約10倍になります。設置は2022年の12月末に完了しましたが、認可が降りるまで時間がかかった上に、いざ工事を始める段階になってからも、パーツが届かない、火山の噴火など、色々な問題がありました。設置工事を担当したRising Sunという会社にノウハウがなく、パネルの設置はカルフォルニアの会社に外注し、彼らが火山が噴火している間はハワイ島に来れないと言い出したり、いざ、パネルの設置が終わった後も、パワーウォールの設定がちゃんと出来ないなど、数多くの問題が噴出し、ハラハラドキドキでした。設置したシステムは、AとBの二つのシステムから構成されており、Aには3つのインバーターと4つのPower Wall、Bには2つのインバーターと2つのPower Wall、トータルで6つのPower Wallが設置されています。これらのシステムが協力し、基本的には太陽光パネルから家に電力を提供し、日中余った電力はTesla Wallに蓄積し、太陽が沈んだ後は、Tesla Wallに貯めた電力を使うことになります。 総発電量は、最終的には42.0kWになりましたが、記事を書いた時点では47.3kWと私自身が勘違いして書いてしまったので、仕方がありません。それ以外の情報は、すべてあっています。 より突っ込んだ質問もしてみました。ちゃんと私のメルマガの内容に従った回答が返ってきます。 A: 日本の自動車メーカーが抱える問題を5つ指摘してください。 Q: EVシフトに対する慎重な姿勢 ソフトウェア開発における人材不足 ハイブリッドの技術力・シェアに対する執着 4年おきのモデル・チェンジによる開発サイクルのミスマッチ ハードがコモディティ化され、ソフトウェアが利益を上げる時代に対する対応の遅れ 良い結果ばかり紹介しましたが、質問によってはメルマガではなく、GPT3.5が学習したネット上のデータを活用した答えを書くこともあれば、全く出鱈目を書くこともあるので、注意が必要です。 このチャットボットをどう活用すべきかはまだ決めていませんが、Embedding データベースを活用したチャットボットを作る際に、どの程度データを引っ張ってくるべきか、チャット履歴の扱いをどうするかなど、色々と学ぶ面があるので、まずはそこで活用していく予定です。日本語の場合、漢字1文字あたり2トークンを使うので、GPT3.5-turbの最大値である4,096トークンに抑えるためには、2000字の枠に全てを含める必要があるので、いろいろな工夫が必要です。 「コンビニ交付システム」問題に関して一言 デジタル庁の「コンビニ交付システム」がさまざまな問題を起こしていることに関して、河野デジ相がビデオメッセージで謝罪した上で、開発したのは「富士通Japan」であり、問題が解決するまでの間すぐにサービスを停止するように指示を出したと語りました(試練続く富士通Japan、コンビニ誤交付トラブル巡り河野デジ相からは「強い叱責」)。 富士通は私が常に批判している典型的なITゼネコンです。理系の大学や大学院を卒業した、いわゆる「理系エリート」を採用しながら、彼らには仕様書の作成と工程管理のみ行わせ、実際のコーディングは下請けや孫請けに丸投げする、という日本特有のゼネコン・スタイルでソフトウェアを作る会社です。 こんな風に、設計とコーディングを分断した開発では良いものを作れないことをこれまで何度も指摘して来ました。どんなに優秀なソフトウェア・エンジニアでも、実際にコードを書かずに良い設計をすることは不可能で、コードを書きながら設計を変更し、徐々に良いものに仕上げていくプロセスが必須です。 しかし、ITゼネコンのように、設計は上流で、コーディングは下流で、というスタイルの開発だと、その効率が著しく落ちる上に、 コードを十分に書いた経験が少ないエンジニアが机の上で設計することになる 上下関係があるゆえに設計を批判しにくい 人月工数で仕事をしているため、効率良くクオリティの高い仕事をするメリットがない 孫請け会社が、派遣社員を雇って頭数を揃えるようなことが堂々と行われる などの弊害があり、良いものは作れないし、人も育ちません。 それでもこのビジネスが成り立ってしまうのは、高度成長期にIBMと対抗するために国策として育てて来たIT産業(=今のITゼネコン)と官僚組織との強い結びつき(信頼関係+天下りなどによる癒着)があり、景気対策の意味も含めた政府による「IT投資」の大半が、ITゼネコンに流れ込むようになっているからです。

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