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アップルが経験した「衰退期」からの飛躍 辻野晃一郎のアタマの中【Vol.10】

『グーグル日本法人元社長 辻野晃一郎のアタマの中』~時代の本質を知る力を身につけよう~
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 『グーグル日本法人元社長 辻野晃一郎のアタマの中』  ~時代の本質を知る力を身につけよう~【Vol.10】 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【今週号の目次】 1. 最近気になったニュースから  ◆ 社会人の「学び直しから転職まで」を政府が一体支援??? 2. 今週のメインコラム  ◆ アップルが経験した「衰退期」からの飛躍 3. 読者からの質問に辻野晃一郎が答えます! 4. スタッフ“イギー”がつぶやく今週の辻野晃一郎 ──────────────────────── 2.今週のメインコラム ──────────────────────── ◆ アップルが経験した「衰退期」からの飛躍 前号では、衰退期から復活した企業の事例としてマイクロソフトを取り上げ、同社がグロースマインドセットの企業に生まれ変わったことが復活のカギであることを書きましたが、そのマイクロソフトと深い恩讐関係にあったアップルのケースについても簡単に振り返っておきたいと思います。 会社にも、人間と同じようにライフサイクルや寿命があります。ざっくり言って、会社の一生には、「創業期(少年期)」「成長期(青年期)」「安定期(壮年期)」「衰退期(老年期)」の4つのライフステージがあるといえるでしょう。それこそ、マイクロソフトやアップルのように、「衰退期」から新たな「成長期」に移行してさらに大きな飛躍を遂げる企業も珍しくありませんが、一般的には、企業の一生はこの4つのステージを順にたどります。そしてステージが進むにつれて、いわゆる「大企業病」が進行していきます。逆の言い方をすれば、企業は成長につれて徐々に大企業病に蝕まれるようになり、衰退への道を進みます。 成長に伴って間接人員や管理系の仕組みを強化したり、さまざまな設備投資を行ったりするうちに徐々に硬直化していき、まるで人体で動脈硬化や成人病が進行するように、次第に柔軟性や俊敏性が失われていきます。さらには、社内政治や足の引っ張り合いが横行するようになり、そのような状況に手をこまねいていると、次第に活力が失われてイノベーションが生まれなくなり、没落して寿命を迎えることになるのです。 この大企業病(必ずしも企業の規模には関係しません)を一言で表現するなら、社内からグロースマインドセットが失われていき、失敗を恐れるフィックストマインドセットが支配的になる現象といえます。グロースマインドセットとフィックストマインドセットについては、前号を参照してください。 技術革新を含めた外部環境や社会情勢は、会社の内情と無関係にどんどん変わっていきます。そのため、会社を衰退させずに継続的に発展させていくには、それらさまざまな外部要因の変化と、その会社がどのライフステージにいるかに応じて、企業カルチャーや経営スタイルをダイナミックに変化させながら大企業病に対処していかねばならず、そういうことが出来る基幹人材を登用していかねばなりません。 アップルの場合、創業期と最初の成長期は、三人の共同創業者の一人であるスティーブ・ジョブズが牽引しました。しかしその後、ジョブズがまさにアップルのライフステージに合わせて、「安定期」のオペレーションを任せようと外部から招き入れたジョン・スカリーの反乱にあって追い出され、そこから一気に衰退期に突入していきました。 業績悪化の責任を取ってスカリーが退任した後、マイケル・スピンドラーやギル・アメリオなど、次々と「企業再建請負人」のようなプロ経営者が外部から投入されましたが、凋落の流れを止めることはできませんでした。 実はこの頃、ソニーはアップルの買収を真剣に検討していました。結局、その話は流れて、同時期にソニーはコロンビア・ピクチャーズを買収しましたが、歴史にifは無いものの、もしもこの時にソニーがアップルを買収していたら、どのような展開になっていたでしょうか。 その後、奇跡的にジョブズが出戻ってから、iMac、iPod/iTunes、iPhoneなどを次々と投入して、アップルは一気に衰退期を脱却して返り咲き、今日の飛躍に繋がる黄金期を築き上げたわけです。ソニーとの立場もすっかり逆転し、今やアップルは時価総額300兆円を超えてGAFAMの一角をなす存在となりましたが、対するソニーの時価総額は10数兆円といったところです。 ちなみに、ジョブズは、ソニーの井深さんや盛田さんとも交流があり、特に盛田さんとは個人的にも親しくしていました。ジョブズは日本文化への造詣が深く、そのシンプルな美しさを好みアップルの製品に生かしたとされますが、彼のシンプルさに対するこだわりは、盛田さんとの交流から学んだものだったようです。 ジョブズは、いつかアップルをソニーのような会社にしたいと――

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