■行動経済学とは?
行動経済学こそビジネスパーソン必須の教養だ。現に世界の名だた
る企業がこぞって行動経済学を取り入れている。多くの企業が「行
動経済学チーム」まで設けはじめているほどだ。
たとえば、アマゾンは商品ページでは「アンカリング効果」という
行動経済学の理論を用いている。そうして消費者の購買意欲を無意
識にそそらせている。
また、ネットフリックスは「デフォルト効果」という理論を駆使し
て視聴者が自然と動画を見るように促している。グーグルは確証バ
イアスという理論で採用面接をし、人材を見極めている。
★
行動経済学が、ビジネスの世界で最強の学問とされているのは、経
済活動が人間の行動の積み重ねだからだ。人間の行動を理解するこ
と自体がビジネスのキモになるのだ。
顧客は人間だ。取り巻く上司や同僚、取引先も皆人間だ。経済は、
人間の行動の連続で成り立っているのだ。人間の行動を解明する学
問である行動経済学が支持されるのは当然だ。
行動経済学は「なぜ、人はそう行動するか」を解明する。「ある人
がAをして、Bしなかった」だけでは不十分でも「なぜ、Bをしな
いか」がわかれば「どうすればBをしてもらえるか」がわかる。
ビジネスとは、人間の行動を変えることだから、このような「な
ぜ」を理解し、フレームワークを駆使すれば、何千万、何億もの
人々を一気に動かすことも不可能ではない。
実際そんな事例は世界中にある。この「圧倒的インパクト」こそ
が、行動経済学が最強の学問とされるゆえんだ。このことに気づい
ているからこそ世界のエリートはこぞって行動経済学を学ぶのだ。
★
「経済学」と「心理学」が融合した学問が行動経済学だ。もとも
と行動経済学が誕生する前から、経済学は経済活動における人間の
行動を科学してきた。
それなのに行動経済学が生まれた理由は、伝統的経済学ではすべて
の人間の行動の解明に限界があるからだ。伝統的経済学は、人間は
常に合理的に行動するとしている。
そこには「人は非合理な生き物である」という大前提が欠けてしま
っている。だが、実際は、人間は頻繁に非合理な行動をする生き物
なのだ。
たとえば、合理的に考えれば、痩せたい人はヘルシーなランチを頼
むべきだ。それなのに、コッテリしたほうを頼んでしまう。お金を
貯めるべき時に、レジ横の商品をついで買いして無駄遣いする。
伝統的経済学は、人間を研究対象としながら、こういった非合理な
人間の心理面を、考慮してこなかった。そこで、経済学に足りない
人間の心理面を加える必要が出てきた。それが心理学だ。
これら2つの学問を融合したことで行動経済学が誕生した。その結
果、経済活動おける「人間の行動」全般を解明することができるよ
うになったわけだ。
★
行動経済学は、体系化するのが難しい。若い学問だからだ。体系化
される前に、次々と新しい理論が発表されてきた。また全く異なる
アプローチをとる学問だから融合させて体系化することが困難だ。
経済学の専門家は、合理的な人間を前提として「人はこう行動する
べきだ」という理論を展開する。ところが、心理学の専門家は、
我々人間のありのままの行動を分析しようとする。
これら2つの学問は、水と油のようなものだ。なかなか両者が納得
いく落とし所が見つからない。そのことは、ビジネスにおいては大
きな問題ではない。
ポイントは、人間の非合理な意思決定のメカニズムを解明するとい
うことだ。意思決定のメカニズムが理解できれ、人間の行動を変え
ることができれば、ビジネスの現場では十分なのだ。
この記事は約
NaN 分で読めます(
NaN 文字 / 画像
NaN
枚)