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vol.182:中国のデジタル科学研究は米国にどこまで迫っているのか。論文、人材、特許の量と質から考える

知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード
  • 2023/06/26
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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード vol. 182 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ みなさん、こんにちは!ITジャーナリストの牧野武文です。 今回は、中国の科学技術の現状についてご紹介します。 この数年、中国の科学技術の進展には目覚ましいものがあります。特にAIの分野では、ChatGPTのような大規模言語モデルの分野では遅れをとりましたが、その他の画像解析などの分野では米国と肩を並べています。 しかし、一方で、「中国の科学技術研究は粗製濫造」という批判もよく耳にします。これはかなりあたっているのではないかと思います。なぜなら、いつもの中国のパターンだからです。 科学研究だけでなく、ビジネスでもそうですが、中国はやるとなると、まずは、なんでもいいから手数を打ちます。質は低く、カオスな状況が生まれます。しかし、その中から突破できるものが見つかると、そこに集約をし、質を上げてくるというパターンです。 科学技術もまさにこの「いつものパターン」に従っています。 問題となるのは「では、量から質への転換はどの程度進んでいるのか」ということです。 それを知るのにうってつけのサイトがあります。AMinerというデジタル科学論文ポータルサイトで、世界中の論文を集め、検索できるポータルサイトです。ここでは、論文の統計データをとり、さまざまな統計情報も公開しています。 今回は、このAMinerのデータを使い、中国のデジタル科学研究の「論文」「人材」「特許」の3つについて、その量と質がどのような状況にあるのかをご紹介します。 知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード vol. 182 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ▼目次▼ 中国のデジタル科学研究は米国にどこまで迫っているのか。論文、人材、特許の量と質から考える 小米物語その101 今週の「中華IT最新事情」 次号以降の予定 Q&Aコーナー ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 中国のデジタル科学研究は米国にどこまで迫っているのか。 論文、人材、特許の量と質から考える ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 今回は、中国のデジタル科学研究が、米国を中心とする国際レベルの中でどこまで迫ってきているのかについてご紹介します。 今年も6月7日から、高考(ガオカオ、普通高等学校全国統一試験)が開催されました。現在採点中で、6月27日から入学の申し込みが始まります。今年の受験者は1291万人と過去最高になりました。 高考の合格率は80%程度と報道されることが多いですが、高考は総合大学だけでなく、単科大学、職業大学なども含まれます。4年制のいわゆる「本科」だけに限ると、今年の募集人数は490万人で、本科に進学するには倍率2.63倍というかなり厳しいハードルを超えなければなりません。 高考は、統一試験と言っても、実際は省、直轄市などの行政単位ごとに行われ、科目なども微妙に違っています。例えば、上海市では国語、数学、外国語が必須で、政治、歴史、物理、化学などの科目から1つを選択します。江蘇省では必須3科目の他、選択科目を2つ選択します。 各大学は、行政単位ごとに募集人数を割り振り、受験生は得点上位から希望の大学を選んでいきます。定員が埋まってしまうと選択できないため、第2希望、第3希望に進学をするということになります。 今年の高考受験生が多かったのは、コロナ禍の影響だと言われています。高考は高卒資格を持っていれば年齢制限はありません。ただし、合格をしたのに進学をしないと受験資格を失います。そのため、どこも不合格であったら翌年また受験することができます(アリババの創業者ジャック・マーは高考を3回も受験しています)。また、多いのが、大学に入学してみたものの、自分が思っていたのとは違うと失望して、翌年の高考を受け直すというパターンです。コロナ禍の間、多くの大学が授業をオンラインに切り替えたため、授業の内容に不満を持った学生が多かったのではないかと言われています。 これにより、再度高考を受験する人が増え、過去最高になったようです。それでも、昔よりはかなり大学は入りやすくなりました。教育部の統計によると、1970年代の本科合格率は、5%以下、つまり倍率20倍以上で、大学進学は簡単ではありませんでした。入りやすくなったのは、2000年前後からで、本科の合格率が30%を超えます。そして、2015年には過去最高の44.17%となり、以降、合格率は再び下がり始めます。大学の数を増やし、募集人数も増やしていますが、それ以上に大学進学を希望する人が増加をし、進学しづらくなっています。 しかし、大学の新設はあまり行われなくなっています。4年制総合大学は教育機関であるとともに研究機関でもあるため、むやみな新設は研究機関としての質を下げることになるからです。一方で、即戦力を養う単科大学や職業大学などを新設することで誰もが高等教育を受けられるように対応しています。

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