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【Vol.351】「エジプト紀行」(4)

NEW YORK 摩天楼便り-マンハッタンの最前線から-by 高橋克明
Vol.351 06/28/2023 【Vol.351】「エジプト紀行」(4) 深夜なのに、営業中のお店も多く、特にアイスクリーム屋さんの店頭では長蛇の列。民族衣装をまといスカーフを巻いて目しかみえない女性たちが、男性の手をつなぎ、アイスクリーム屋さんに並んでいます。日本人、特にある一定世代以上の方々は、中東、特にイスラム圏の方々にとんでもない誤解をしがちになります。俯瞰で見て、冷静に考えて、もっとも「やさしい」教えを説いているのは、イスラム教だと僕個人は思っています。イスラム圏に対する日本人の偏見は、そのまま日本人に返ってくる。世界の中には、日本人がいまだ、ちょんまげをして、刀を差して、着物で歩いている、と思っている人が少なくありません。ターバンを巻いている人を見て、それだけでテロリストを想像する日本人は、それと変わらない。 と同時に経済において、日本ほど、東京ほど豊かな国、街もない、とも悟ります。経済都市としては世界にまるまる無視されている昨今「豊か」という表現はもちろん間違えてはいるかもしれない。豊か、ではない。だとして、このエジプトの首都を歩いている今、小一時間で、何人ものホームレスに声をかけられると、東京ではさすがにそんなことはない。街で無料で配っているティッシュを「ワンダラー」と泣き顔で売ってこようとする女性。なにも売り物がなくて、ただ単に「ワンダラー」とお願いしてくる年配の男性。炎上覚悟で書くなら、やっぱり世界はホームレスで溢れている、、と思うのです。振り切った言い方をするなら、貧困は現代の人類において無視できない国際問題。SDGsだって言っている。 地面にダイレクトに置かれ、売られている衣類を踏まないように Kasr Al Nileストリートを西に向かい歩きます。この時間帯でも車の交通量がハンパない。信号がない。クラクションの音と数がエグい。道路の向こう側に渡るのを何回か繰り返しているうち、地元の「先輩」を見ていると、コツが掴めてきます。現地の人間が当たり前のように、ビュンビュン走っている車の中、信号ナシで横切っていく。それについていく。ついていける人数は自分を含めて3組まで。4組目だと車に跳ね飛ばされる。2組目だと1組目、そのグループのリーダーが観光客だとしたら、やっぱり跳ね飛ばされる。なので、つまりは3組目。その位置をキープできれば、命懸けではあるけれど、向こう側に渡れる。そこまでして渡る必要があるかどうかの問題は、この際、考えない。 カイロの街も、KFC、マクドナルド、バスキンロビンス、など、いまとなっては世界中どこでも見かけるアメリカ発チェーン店で埋め尽くされています。違うのは、ゴミ収集車が日本やアメリカでは見たことない積載量で走っていること。積み上げられたゴミの高さは漫画でしか見ない光景で、さらに働いている人間が数人、その上で寝転んで睡眠をとっている。下から、車、積み上げられたゴミ、寝ている人の順。自分の身長と同じくらいの高さの廃棄物を背中に背負って通り過ぎる男性も横切っていく。 うちの子供くらいの、、7歳くらいの男の子が「ワンダラー、ワンダラー」、、恵んでくれと左手を差し出してきます。時刻は夜中1時を回っている。ホームレスを避けて歩くことに慣れていても、さすがに、立ちすくむ。うちの子たちと同世代。頭では避けて行きたくても、足が動けなくなる。どうしたらいいと、周囲を見回すと、アイスクリーム屋の横で、パイプ椅子に座って、リンゴを食べている女性と目が合う。まさかと思い、目を逸らさずにいたら、その女性が、子供の名前を呼ぶ。男の子は、言われるがまま、その女性の元に走って戻る。母親はターゲットを変え、まだ別の観光客の元へ自らの息子を走らせる。

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  • 全米発刊の邦字新聞「WEEKLY Biz」の発行人、高橋克明です。新聞紙面上や、「アメリカ部門」「マスコミ部門」でランキング1位になったブログでは伝えきれないニューヨークの最新事情、ハリウッドスターとのインタビューの裏側など、“ イマ”のアメリカをお伝えします。
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