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§ ぶんぶくちゃいな § vol.355 § デズモンド・シャム「ぼくは共謀者−−中国の政治、ビジネス、そしてカネ」(後編) §

§ 中 国 万 華 鏡 § 之 ぶんぶくちゃいな
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ § 中 国 万 華 鏡 § 之 ぶんぶくちゃいな § vol.466 § 2022年6月24日発行 § 今週のトピック:デズモンド・シャム「ぼくは共謀者−−中国の政治、ビジネス、そしてカネ」(後編) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  今回は463号に続いて、「ニューヨーク・タイムズ 中国語版」編集長の袁莉さんが展開するポッドキャストから、日本でも今年刊行された『レッド・ルーレット 私が陥った中国バブルの罠 中国の富・権力・腐敗・報復の内幕』(https://amzn.to/45BcXGm )著者、デズモンド・シャム(沈棟)氏のインタビュー後編をお送りする。 温家宝夫人と密接な関係のもと、中国政府トップの人脈やカネ、そしてその生活ぶりを暴いた同書は貴重な証言が詰まっており、温家宝はすでに政治トップを退いてはいるものの、その後続く「中国共産党政治」の事情を垣間見ることができる非常に興味深い一冊である。 なお、以下のうち、[]は筆者による注釈と解説である。 =============================== ◎ポッドキャスト「不明白播客」:デズモンド・シャム(沈棟)「ぼくは共謀者--中国 の政治、ビジネス、そしてカネ」(後編) ●続く資本家たちの災難 袁莉(以下、袁):アリババのジャック・マーが最近、海外から帰国したのをどう見ますか? デズモンド・シャム(以下、「シャム」):彼が帰国するとすぐにアリババグループが企業の分割を発表しましたよね。それは偶然じゃない、そんな偶然なんてありえない。彼は呼び戻されて、グループ分割発表をさせられたんでしょう。 だいたい、まず[当局が]最初にマーに手をかけたのは、もちろん彼の尖った発言や態度と関係があるとは思います。でも、それだけじゃなくて、最も根っこの理由は彼が「大きくなりすぎた」からです。彼らの手は基本的にすべての業界に広がっており、その規模によってかなり多くの業界で独占的なパワーを手に入れていた。それを分割してバラバラにしてしまおうと考えたんでしょう。 袁:さらに、我われの共通の知り合いである、華興キャピタルの創業者である包凡[*]も最近行方不明になっています。つい最近になってやっと、華興キャピタルは正式に彼が拘留されて取り調べを受けていることを明らかにしました。 《[*] 包凡:1970年生まれ、モルガン・スタンレーやクレジットスイスなどを経て、2004年に投資会社の「華興資本」を設立。中国系民間投資会社として大きな注目を集める企業となった。2023年2月に行方不明が伝えられ、5月に中国の監察当局が彼を拘束していることを認めた。》 シャム:4カ月になりますね。[訳注:番組収録は4月、つまり業界内では失踪が公開される前にすでに話題になっていたことを意味している。] 袁:そのニュースを聞いた時、驚かれましたか? シャム:ある程度はね。でもショックというほどではなかった。というのも、まず連中[政府当局]はいろんな業界で大資本家を手に掛けるようになってから、もうかなりになりますしね。次に、インターネットの業界はずっと目をつけられていたし。 そして3つ目は、中国でインターネットが台頭してきたのはここ20年ほどのことで……いや20年も経っていないか。本当に台頭を始めたのは2005年からですからね。 ぼくの本にも書いてますよね、ぼくとジャック・マーは、彼が最初の融資を探していた時、一緒にコーヒーを飲んだことがあるって。 あの頃の彼はもうものすごく威張っていた。一緒にコーヒーを飲んだのは香港だったんですが、そのカフェの窓の向こうはゴールドマンサックスのオフィスビルでした。彼は言ったんです、「あのゴールドマンサックスは500万出すと言っている。それでもビジネス計画を出せなんて言わなかった。ぼくがキミに出してほしいのは300万だ。たかがそれくらいで計画書なんていらないだろ」と。 ぼくは心のなかで、「バカなことを。計画書もなくて、どうやってボスに報告するんだよ?」って思いましたよ(笑) 結局、当時ぼくが勤めていた会社は投資しなかった。その後数年のうちに、2000年初め頃に彼らは2回ほど倒産の危機に直面しました。そのとき、マーは職員たちに銀行でクレジットカードを申請し、そこから現金を調達しろと言い、それを会社の資金に当てたと聞きました。そうやってインターネット業界は台頭してきた。そしらそれが実際に中国で本当の意味で頭をもたげ、どうにか足元を固めたのは2005年頃のことでした。つまり、2005年ごろには…たぶん、アリババの時価総額は千数百万米ドル程度だったんじゃないでしょうか。 袁:そうですね、大したことはなかった。大きくなったのはその後で、2008年から09年頃でした。 シャム:そうです。時価総額は最も高かった時には7000億米ドルあまりになった。何倍になったのか……そこに、さっきお話した「白手袋」、そして政治、そういった多くのものが関わっていたわけです。 袁:アリババが上場する時、それこそ多くの人たちがそこに関わりたがっていましたよね。 シャム:でも、業界全体がそんなふうに歩んできたわけではなかった。華興キャピタルはそれこそ、中国で最初にIT業界に注目した投資銀行です。つまり、彼らは業界のいろんなことを見聞きしてきた。 だからそういう意味においては、[包凡が拘束されたことは]ぼくにとって意外ではありませんでした。ただ、意外だった点を上げれば2つあります。一つは、たった今お話したように、彼が付き合っていたビジネスマンたちは友人だったのか、仲間だったのか? だったらなぜ彼を陥れたのか?てこと。 次に、「相対的」に……中国はすべてが「相対」なんですよね、さっき言ったとおり白黒がはっきりしていないんですから……ぼくは彼が事業を始めたばかりの1990年代から彼を知っています。彼はまさに……「相対的」に真面目にルールに則って中国市場でやってきた人です。そんな彼ですら拘束されるんですから、言葉がない。 ●共産党は迷っていた

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