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週刊Life is beautiful 2023年7月4日号:SlashGPT、アンモニアとカーボン・ニュートラル

週刊 Life is beautiful
週刊Life is beautiful 2023年7月4日号: 今週のざっくばらん アンモニアとカーボン・ニュートラル 先週、NHKスペシャル「ヒューマンエイジ 人間の時代」を観ました。最近のNHKスペシャルは中身の薄っぺらいものが多く、少しがっかりしていますが、これも同じでした。色々と面白いテーマには触れるのですが、何も新しいことは教えてくれないのです。 その中に、国がカーボン・ニュートラル戦略の一環として、アンモニアに注目しているという情報があったので、現状把握のために、ネット上でいくつかの資料を読みました。資源エネルギー庁アンモニアが“燃料”になる?!(前編)~身近だけど実は知らないアンモニアの利用先(2021年)国際環境経済研究所アンモニア:エネルギーキャリアとしての可能性経済産業省水素・アンモニアを取り巻く現状と今後の検討の方向性(2022年)旭化成 アンモニア社会への移行が炭素中立の鍵となるか(2014年) 各国の取り組み。科学技術振興機構画期的なアンモニア合成法(2020年) 一つ学んだことは、日本政府が、2050年を目標にしたカーボンニュートラルの実現に向けて、水素社会の実現を今でも真剣に考えている、ということです。Teslaにより「EVシフト」が急速に進んだ結果、(日本政府やトヨタ自動車が描いていた通りの)「水素自動車の時代」が来ないことは明らかなので、そろそろ戦略を大幅に変更しても良いと私は思いますが、日本政府はそう考えていないようです。 水素を利用した燃料自動車が、電気自動車に負けてしまった理由は、大きく分けて5つあります。インフラが整っていない(水素ステーション不足、家庭で充填出来ない)サブライチェーンが整っていない貯蔵・流通コストが高いエネルギー効率が悪いグリーンではない(石油や天然ガスから作っている) そんな中で、水素をアンモニアの形で貯蔵・輸送することにより、貯蔵・流通コストの問題を解決し、同時に、すでに肥料向けに国内外の存在しているアンモニアのサプライチェーンを活用しよう、という発想からアンモニアが注目されているのです。 水素は、そのままの形であれば、700気圧で圧縮しても1立方メートルあたり39.6kgにしかなりませんが、1立方メートルのアンモニアには、121kgの水素が含まれています。アンモニアは、常温1気圧では気体ですが、零下33度まで冷やせば液化するため、水素よりもはるかに貯蔵・輸送が簡単です。現在、船で輸入している液化天然ガスは零下161まで冷やす必要があるので、それと比べても十分に現実的です。 水素の製造がグリーンでない点に関しては、さまざまな研究開発が行われており、太陽光の熱と水から水素を作る研究も行われており、将来はグリーン水素、もしくはグリーン・アンモニアが作れるようになる可能性があります。 水素からアンモニアを常温で安価に作る手法、アンモニアから水素を簡単に取り出す方法も研究開発されており、それら全てが解決すれば、再生可能エネルギーで作った水素(グリーン水素)をアンモニアの形で輸入し、そこから水素を取り出して燃料電池で発電するなどが可能になると考えられているのです。 ちなみに、5番目の資料に紹介されている「画期的なアンモニア合成法」は、大きなポテンシャルを持っているように思えます。 この記事によると、マメ科植物に共生する「根粒菌」という細菌がもつ「ニトロゲナーゼ」と呼ばれる酵素と同じく、モリブデンを含む触媒を用いて、常温・常圧で、ニトロゲナーゼに匹敵する速さで、人工的にアンモニアを合成することに成功したそうです。この技術が実用化できれば、大規模な設備が必要なハーバー・ボッシュ法と違って、太陽光パネルや風車に隣接した小規模な施設でアンモニアの生成、という活用方法が現実的になってきます。 ちなみに、記事には、水素まで触媒を使って水から作り出すと書いてありますが、水の分子から水素を取り出すにはエネルギーが必要であり、触媒を使っただけでは取り出すことは出来ません(エネルギーの保存則)。つまり、太陽光や風力で作った電気で水から水素を取り出し、その水素からアンモニアを生成することにより、水素を貯蔵・運搬しやすくする、という話です。 以上に書いた通り、現時点では数多くの技術が「開発中」であり、それらの技術が2050年までに実用化されている保証はないし、実際にコスト面で見合うものになるかどうかは不明です。既存の技術をデプロイするだけで、十分に実現可能な「再生可能エネルギーとEV」と比べると、かなり無理がある計画に私には思えます。 日本政府が考えている水素とアンモニアの関係を一つの図に表したものを、中小企業基盤整備機構のエネルギーキャリアとは?という記事に見つけたので、下に貼り付けておきます。 SlashGPT ここでも一度触れたことがありますが、LLM(大規模言語モデル)でどんなことが可能かを知るために、SlashGPTというアプリをPythonで作り、色々と実験をしてきましたが、ようやく形になってきたので、オープンソースとして公開しました(SlashGPT)。 アプリとは言え、あくまで開発者用のツールなので、一般の人がダウンロードして試せるような形にはなっていませんが、githubの使い方と、Pythonが多少でも分かるエンジニアであれば、簡単に試せるような作りになっています。github clone git@github.com:snakajima/SlashGPT.git でリポジトリーのコピーを作った後、cd SlashGPT pip install -r requirements.txt として環境を整えた後、OpenAIの開発者向けのウェブサイトで開発者用のキーを取得し、.env ファイルにOPENAI_API_KEY=... の形で、キーをセットすれば準備完了です。./SlashGPT.py でアプリを起動したのち、GPTと会話をしたり、"/"(スラッシュ)で始まるコマンドで、チャットボットを切り替えたりします("/help"と入力すると、チャットボットの一覧が表示されます)。 システムコマンドとしては、以下のものが用意されています。/bye:アプリの終了/reset:アプリの初期化/prompt:対話しているチャットボット向けのシステムプロンプトを表示/sample:対話しているチャットボット向けのサンプルテキストを入力/gpt3:GPT3.5-turboに切り替え/gpt31: gpt-3.5-turbo-16k-0613に切り替え/gpt4:GPT4に切り替え/gpt41: GPT4-0613に切り替え/palm: PaLMに切り替え/verbose: Verboseモードに切り替え/help:チャットボット一覧の表示 チャットボットは数多くのものが用意されていますが、代表的なものとしては、/obachan:大阪のおばちゃんの英語教室/crush: ウミガメのクラッシュ/yoda: スターウォーズのヨーダ/home2: ホーム・オートメーションシステム(function_call のテスト)/cal: イベント予約システム(function_call chainingのテスト)/drone: ドローンのフライトプランナー(OpenAPIを利用したもの)/drone3: ドローンのフライトプランナー(functino_callを利用したもの)/products: 注文管理システム(SQL queryを生成するもの)/currency: リアルタイム為替情報(ChatGPTのプラグインを流用)

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