【それぞれの旅立ち】
ワクガワが連れて来たのは同じ高校のクラスメイトだった。
仕事を転々として今は料理人をやっていたらしいのだが、ワクガワに説得されてこのそば屋の調理人として働くことになったのだった。
「美味い!いいんじゃない?こんなに美味かったらすぐに人気店になるよ」
それはお世辞抜きで本当に美味しかった。
沖縄では、蕎麦粉を使わない沖縄そばが主流で、沖縄の人は美味しいそば屋を見つけると車で2時間かけてでも食べに行くくらいそば好きの人が多かった。
ラーメン屋も美味しい所には遠くても行くのだが、そんなにラーメンばかりを食べたら飽きてしまうものである。
しかし、沖縄そばは飽きることがなかった。
そば好きな人なら週に3回食べるのが普通である。
だけら、いかに美味しいそばを作るかで勝負は決まるのである。
美味しいという口コミはあっという間に広がるので、味次第で直ぐに繁盛店になれるのだった。
年明け早々、いい一年になりそうだった。
ところが‥
「おい、お前の会社はどうなってるんだ?」
ある現場に顔を出しに行った時のことである。
「えっ?何がですか?」
「何がじゃねーよ、前回の工事分の代金がまだ入っていないんだけと、月末じゃなかったのか?」
「えっ?マジッすか?」
「マジっすかじゃねーよ、明日までに入らなかったら、この現場もストップするからな」
その下請け会社の責任者はかなり怒っていた。
「すみません、すぐに確認しますのでちょっと待ってください」
みつおは焦ってしまった。
こんなことは初めてである。
すぐに電話したが、電源が切れているメッセージだった。
とりあえず事務所に向かった。
ドアを開けると、パソコンと睨めっこしている社長がいた。
「社長、どうなってるんですか?」
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