■アルツハイマー病にならない習慣
多くの人が認知症に罹りたくないと思っている。これは、がんを大
きく引き離す。だが、認知症患者は増え続け、厚生労働省は2025
年に700万人を超えるという推計値を出している。
高齢者の5人に1人が認知症になるのだ。一方、がんは一生のうち
に2人に一人が罹患する。それでも認知症のほうが恐れられている
のは「不治の病」だからだ。
認知症の中でも、特に多いのがアルツハイマー型認知症だ。一般的
には「アルツハイマー病」と呼ばれ。日本人の認知症の半分以上を
占めている。
アルツハイマー病は、徘徊などにより家族や周囲の人たちも混乱に
陥れる。苦しめられるのは、患者本人に留まらないのだ。今後も、
増加の一途をたどれば、社会的にも大きな問題となるはずだ。
★
これまで「アルツハイマー病は防げない」と言われてきた。だが、
アルツハイマー病は予防できるし、グレーゾーンなら元の状態に戻
せる。実際、自分の患者さんたちを救ってきた実体験がある。
アルツハイマー病は糖尿病と深くリンクしている。専門家の間では
「アルツハイマー病は3型糖尿病」とされている。その予防には糖
尿病に関する深い知見が必要不可欠なのだ。
また、糖尿病にかかるとアルツハイマー病のリスクが倍増する。だ
から、検査をし、結果に応じた予防が必要なのだ。これにより、グ
レーゾーンにいた人も悪化せず、普段通りの生活が送れる。
もちろん、その方法は、糖尿病でない人にもあてはまる。年齢も置
かれた状況も問わず、アルツハイマー病に不安を抱く人なら、誰で
も活用できるのだ。
★
日本人は、世界一アルツハイマー病にかかりやすい国民だ。長寿が
一つの原因だが、若年性認知症も多く40代~50代の働き盛りや
20代で発症する例もある。油断はできないのだ。
アルツハイマー病に限らず認知症全般について「軽度認知障害」と
いうグレーゾーンの段階がある。これは、専門家の間ではMCI
(mild cognitive impairment)と呼ばれている。
いわば、認知症予備軍だ。日本には、現在400万人ものMCI該
当者がいると言われている。65歳以上の高齢者人口の13%にも相
当するのだ。
MCIを放置すると、約半数の人が認知症を発症する。この段階で
適切な予防治療ができれば、発症を防いだり、遅らせたりすること
もできる。とにかく、発症前の対策が重要なのだ。
★
糖尿病になるとアルツハイマー病にかかりやすくなるのではない。
糖尿病になる人は、アルツハイマー病にかかりやすいのだ。なぜな
ら、発病のメカニズムがほぼ同じだからだ。
糖尿病もアルツハイマー病も、ある原因からもたらされる。発症メ
カニズムが一緒なのだから、糖尿病を防ぐ食事とアルツハイマー病
を防ぐ食事は同じだ。
そして、老化促進物質であるAGEを増やさないことも、アルツハ
イマー病の予防に重要だ。そのためにも、食事についての知識と工
夫が必要なのだ。
もちろん、食事以外にも気を付けるべき生活習慣がある。また、生
活習慣を改善する以外にも「予防につながる検査」を受けることが
有効だ。
日本では、アルツハイマー病の診断には「長谷川式簡易知能評価ス
ケール」や「ミニメンタル・ステート(MMSE)」が一般的に用い
られる。だが、これは予防には適さない。
これらは、すでにアルツハイマー病を発症していることを確認する
に過ぎないからだ。それより、MCIや、もっと前段階で脳の状態
をキャッチすべきだ。適切な予防治療の検査が必須なのだ。
この記事は約
NaN 分で読めます(
NaN 文字 / 画像
NaN
枚)