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【Vol.490】冷泉彰彦のプリンストン通信『日本の保守派、漂流の背景』

冷泉彰彦のプリンストン通信
「気象台が認定しないと、竜巻ではないのか?」  日本の気象現象について、不思議に思うことがあります。それは、竜巻や 雹(ひょう)などについて、気象台の認定が必要だということです。従来か ら竜巻についてはそのような運用がされており、気象台が認定する前は、わ ざわざ各放送局は「突風」として紹介することになっているようです。  例えばですが、一般の人がスマホ等で撮影した動画で「明らかに渦を巻い ている」様子が見えても、せいぜいが「竜巻と見られる突風」という表現で あり、とにかく素人が勝手に「竜巻」と認定してはいけないらしいのです。  私はアメリカに長く住んでおり、竜巻の恐ろしさは春から秋にかけて(最 近は冬も例外ではありません)具体的な脅威です。温暖化の影響で、ニュー ジャージーなど大西洋の影響で比較的「大陸性気候」から離れている地域で も、近年は年に数回の竜巻被害があります。  その場合の鉄則は「早めに竜巻になりそうな積乱雲(スーパーセル)を発 見し、警報を出すこと」です。特に、近年はレーダーによって空中飛来物 (土砂や瓦礫など)がローテーションをしていると、AIが察知して警報を 出すと言うこともあります。いずれにしても、竜巻は深刻なので、警報が出 るような状況になると、地上波のローカル局は通常番組を飛ばして、ブチ抜 きで特番になりリアタイでレーダー画面を映して「旋回の発生と移動」を速 報し続けます。  その際に「突風」だとか「竜巻と見られる」などと悠長なことは言ってい られません。住民に適切な対応(特に地下室への退避等)を促すためには、 「竜巻(トルネード)」という一言というのは絶対に必要だからです。  そう考えると、やはり日本の対応は理解に苦しみます。別にアメリカの竜 巻と比較して日本のものがマイルドということにはならないと思います。規 模の小さなものでも、十分に車両はひっくり返り、下手をすれば人は死にま す。それでも、気象庁の認定を待たないと「竜巻」という言葉を使ってはい けないというのは、どういうことなのか、私には全く理解に苦しみます。  驚いたのは、雹(ひょう)も同じらしいのです。明らかに雷雨があり、空 から丸い氷の塊が降っても、やはり気象台が認定するまでは「雹とみられる 物体」であって「雹」ではないというのは、何なのでしょうか。ゴルフボー ル大の雹が降っているので「自動車なのは屋根のあるガレージに移動」とか、 「ビニールハウスには可能なら二重のカバーを」というような対策も「一刻 を争う」ものです。  現場の人たちが必死に対策をしている際には「雹とみられる」モノであり、 何もかもが終わって肝心の氷塊は溶けてしまってから、気象台がおもむろに 「あれは雹でした」と認定するというのは、やはり滑稽でしかありません。  保険の算定などに影響があり、その場合は気象台の認定が必要というのは 分からないではありません。それはそれで、気象台の認定をつければいいだ けの話です。そうした法的な手続きは粛々とやればいいのであり、それとは 別に、竜巻とか雹という言葉は、災害が現在進行形で起きている時点で注意 喚起のために、どんどん使って良いように運用を改めるべきと考えます。

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  • アメリカ北東部のプリンストンからの「定点観測」です。テーマは2つ、 「アメリカでの文脈」をお伝えする。 「日本を少し離れて」見つめる。 この2つを内に秘めながら、政治経済からエンタメ、スポーツ、コミュニケーション論まで多角的な情報をお届けします。 定点観測を名乗る以上、できるだけブレのないディスカッションを続けていきたいと考えます。そのためにも、私に質問のある方はメルマガに記載のアドレスにご返信ください。メルマガ内公開でお答えしてゆきます。但し、必ずしも全ての質問に答えられるわけではありませんのでご了承ください。
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