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日本経済、これから10年「勝負所」 企業は「賃上げ・設備投資」で対応完了

勝又壽良の経済時評
  • 2023/07/13
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労働力不足対応が分岐点 寸前に来た金利規制撤廃 日銀短観「ゴーサイン」 量子技術で橋頭堡を築く 30年ぶりで、日本経済に陽が当たってきた。株価が好調である。1990年1月大発会から暴落に転じて以来、暴落前の高値を抜けずにきた。「雌伏30年余」にして、高値更新への期待が掛るまで、「体力」が回復したのだ。日本企業は、一皮も二皮も剥けて国際的なコーポレート・ガバナンス(企業統治)が身につき、発想法が国際的な視点に向っている。 従来の日本企業は、守りの姿勢一辺倒であった。できるだけ出費を少なくして企業を守るという「ゴーイング・コンサーン」(企業継続)が重視されすぎたのだ。営業赤字や債務超過など、事業活動継続の障害を除くことに力点を置いてきた。その結果が、内部留保を貯め込み実質「無借金経営」(借入金よりも預金が多い状態)をモデルになった。これが、バブル崩壊後の経営苦難期が生んだ教訓になったのである。 日本の民間部門の総貯蓄は、2010〜19年に、平均で国内総生産(GDP)の29%という驚異的な水準まで高まった。ドイツ(25%)を優に上回り、米国(22%)や、英国(15%)を寄せ付けない厚みを誇っている。 問題は、この総貯蓄を活用することだ。その使い道として突然、人件費の大幅引上げを迫られることになった。労働力人口(15~64歳)の減少が、本格的な「人手獲得競争」として迫ってきたのである。「人手不足」という巨大な内圧が、内部留保に励む日本企業の思考に一撃を加えることになった。 労働力不足対応が分岐点 「人手不足」では、「ゴーイング・コンサーン」が維持できるはずがない。これまでは、賃上げを渋ることで「ゴーイング・コンサーン」を維持したが、これからは人手集めに必要な賃上げをしないと、「ゴーイング・コンサーン」を守れないという180度の大転換が起っている。 すでに、中小企業に淘汰の波が訪れている。東京商工リサーチが発表した2023年上期(1~6月)の倒産件数は、前年同期に比べ3割も増えた。上期としては2020年以来、3年ぶりに4000件台となった。人手不足や物価高の逆風に見舞われ、事業継続できなくなったものである。一見、倒産増は不況の前兆に見えるがそうではない。冷たい言い方で申し分けないが、マクロ経済的には「企業の新陳代謝」を促すものである。より高い生産性を上げる企業が、倒産した企業の労働力を吸収して行くからだ。経済は、こういう過程を経て発展していくものである。

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  • 勝又壽良の経済時評
  • 経済記者30年と大学教授17年の経験を生かして、内外の経済問題について取り上げる。2010年からブログを毎日、書き続けてきた。この間、著書も数冊出版している。今後も、この姿勢を続ける。
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