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『 田中優の未来レポート 』
第287号/2023.7.15
http://www.mag2.com/m/0001363131.html
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「生殖危機」の現実(下)
「ネオニコチノイド農薬 7化合物のうち、チアメトキサムを除く 6化合物までが日本において合成されたことは特筆すべきこと」などとよくも言えたものだと思う。さすが書いているのが「バイエル クロップサイエンス社」だけのことはある。米モンサントの主力の除草剤「ラウンドアップ」や「ジカンバ」などに関連する訴訟や和解に関連する費用を131億ユーロ計上しているだけのことはある。
加害者グループがその毒性ある農薬を誇っているようではないか。そしてこのネオニコチノイド農薬に昆虫たちは抵抗力を持ち始めた。各地で汚染の中でも生きられるようになった昆虫たちが発生し始め、今や場所によっては回復している。それはネオニコチノイド農薬によって抵抗力のない従来の昆虫たちが滅び、残されたほんのわずかな生き残りたちが抵抗を示し始めたのだ。この後、わずかな期間のうちに残りの生物たちは抵抗力を持つようになって、この「ネオニコチノイドの春」を打ち砕くだろう。
なぜそうなるのか。大変面白い本だった「破壊する創造者」に書かれていた通りの進化が進んでいるからだ。その話を今回の中心だ。
破壊する創造者――ウイルスがヒトを進化させた (ハヤカワ・ノンフィクション文庫) 文庫 2014/12/15
現在、進化の要因は、4種類あると考えられている。
「突然変異」
「異種交配」
「エピジェネテックス」
「共生」
だ。
この本ではウイルスのような寄生者を宿主が受け入れるだけでなく、お互いが影響を与えあって変化するのだという。ウイルスは生物とは従来呼ばなかったが、全ての生物が絡み合って進化する一事例としてウイルスなくして進化はなかったのだから、現在は多くの人が生物に加えている。
「突然変異」は放射線や宇宙線によって生物が変異する仕組みで、これが「自然選択によって環境に適応するように進化する」というのがダーウィンの考えた進化論だ。
一方のラマルクの進化論は、
『生物が特定の器官を多く使えばそれは発達し、使わなければ萎縮する。この変化がオスとメスで共通な場合、両者の子供へと変化が遺伝する。」と推測した。すなわち、「獲得形質が遺伝する」と推測したが、現代では否定されている』
とされている。
ところがDNA塩基配列の変化を伴わない後天的な遺伝子制御の変化を「エピジェネティクス」と呼び、それは今や主要な研究分野となり、具体的に医療にも利用され始めている。例えば「DNAメチル化」や「アセチル化」などにより、まとめられたゲノムを発現させたり休止させたりする。ゲノムの解読が進んだ現在では、確かに後に獲得した形質は遺伝するのだ。しかしこれはラマルクの復活ではないかとして警戒されることも多い。それでも現在では上の四つを含めて進化論を考えるのが一般的だ。
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