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知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード
vol. 186
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みなさん、こんにちは!ITジャーナリストの牧野武文です。
今回は、中国のネットサービスの現状についてご紹介します。
中国のネット人口は天井に達しています。そのため、すべてのネットサービスが成長を続けるというわけにはいかなくなり、利用者が減少に転じたサービスも出てきました。
中国インターネット情報センター(CNNIC)の統計によると、「音楽サブスク」「フードデリバリー」「電子書籍」の利用率(利用したことがあると回答した人の割合)が減少に転じました。
音楽サブスクと電子書籍については、提供側の失敗もあります。しかし、フードデリバリーの減少については根深い理由があります。簡単に言えば、デリバリーの主な利用者である若い世代の失業率が上昇しすぎて、お金がなくなっているというのが根本原因です。その状況は、ある人がSNSに投稿した「昨日まではデリバリーを注文していたけど、今日からはデリバリーを運ぶことになった」というフレーズに集約をされています。
若者の失業問題は、かなり深刻な事態になっています。今年2023年になってから上昇をし続けています。これは、経済状況が悪化をしているというよりも、「人材貯水池」と呼ばれるデリバリースタッフ、ライドシェア運転手、屋台の3つに参入する人の数が増えすぎていることが要因です。
普通の状態であれば、失業をしても、デリバリーをやって生活費を稼いで、並行して職探しをするということができました。失業者のバッファーとしての機能を果たしていましたが、現在はスタッフが増えすぎて仕事の奪い合いとなり、全員共倒れに近い状況になりつつあります。人材貯水池が満杯になってしまって、溢れ始めているのです。
今回は、CNNICのインターネット統計をご紹介し、その中で利用率が減少している3つのサービスについて、その原因を考えます。
知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード vol. 186
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▼目次▼
「フードデリバリー」「音楽サブスク」「電子書籍」の利用率が減少。その背後にある共通因子とは何か
小米物語その105
今週の「中華IT最新事情」
次号以降の予定
Q&Aコーナー
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「フードデリバリー」「音楽サブスク」「電子書籍」の利用率が減少。
その背後にある共通因子とは何か
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今回は、中国のインターネット状況についてご紹介します。
中国のインターネットの中心は、中国インターネット情報センター(CNNIC)です。非営利団体ですが、中国情報産業部の指揮下にあり、政府機関のひとつに分類されます。日本で言えば、JPNICに相当する機関で、主な役割はIPアドレスの割り当てです。
それだけでなく、さまざまな調査研究を行っていて、CNNICが毎年3月に発行している「中国インターネット発展状況統計報告」は、日本の情報通信白書に相当するレポートで、中国のインターネット統計を見るときの基本中の基本の資料になっています。CNNICには英語サイトも用意されており、一部のレポートについては英語版も用意されています。中国のインターネット状況を知るときには必須の統計情報ですので、調査をする必要がある時は、まずここにアクセスして情報を取る必要があります。
https://www.cnnic.com.cn/
▲CNNICの公式サイト。英語版も用意され、一部のレポートは英語版も公開されている。
その中でも「中国インターネット発展状況統計報告」は基本中の基本の資料となります。
では、なぜそんな基本資料を今回わざわざご紹介するのでしょうか。今、日本でもそうですが、中国でもインターネット人口というのは頭打ちになっています。私たちの周りを見渡しても、ほぼ全員がスマートフォンやPCを使って情報を入手しています。日本でも5年ほど前までは、公的機関がネットで情報を配信するというと、必ず「情報弱者を切り捨てるのか」という反論が起きましたが、コロナ禍以降、そういう声もほとんど聞かれなくなりました。非ネット人口はもはや少数派であるため、役所の有人窓口で個別対応できるようになっているからです。
ネット人口が頭打ちになるということは、人口ボーナスがなくなり、ネットサービスの中にも減少に向かう傾向を示すものが現れ始めています。具体的にいうと、最新版の「第51次報告書」(2023年3月発行、2022年のデータ)では、音楽サービス、電子書籍、フードデリバリーの3つのネットサービスの利用者が減少をしました。これはいったいなぜなのかというのが今回の主要なテーマになります。
日本もネット人口が頭打ちになっており、ネットサービスのすべてが成長するというわけにはいかなくなっています。もちろん、日本と中国では状況が異なるため、日本の音楽サービス、電子書籍、デリバリーが減少するとは限りません。特に日本ではこの3つはまだまだ黎明期にあるレベルですから、しばらくの間はまだ緩やかに成長をしていく可能性はあります。
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