メルマガ読むならアプリが便利
アプリで開く

vol.186:「フードデリバリー」「音楽サブスク」「電子書籍」の利用率が減少。その背後にある共通因子とは何か

知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード
  • 2023/07/24
    • シェアする
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード vol. 186 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ みなさん、こんにちは!ITジャーナリストの牧野武文です。 今回は、中国のネットサービスの現状についてご紹介します。 中国のネット人口は天井に達しています。そのため、すべてのネットサービスが成長を続けるというわけにはいかなくなり、利用者が減少に転じたサービスも出てきました。 中国インターネット情報センター(CNNIC)の統計によると、「音楽サブスク」「フードデリバリー」「電子書籍」の利用率(利用したことがあると回答した人の割合)が減少に転じました。 音楽サブスクと電子書籍については、提供側の失敗もあります。しかし、フードデリバリーの減少については根深い理由があります。簡単に言えば、デリバリーの主な利用者である若い世代の失業率が上昇しすぎて、お金がなくなっているというのが根本原因です。その状況は、ある人がSNSに投稿した「昨日まではデリバリーを注文していたけど、今日からはデリバリーを運ぶことになった」というフレーズに集約をされています。 若者の失業問題は、かなり深刻な事態になっています。今年2023年になってから上昇をし続けています。これは、経済状況が悪化をしているというよりも、「人材貯水池」と呼ばれるデリバリースタッフ、ライドシェア運転手、屋台の3つに参入する人の数が増えすぎていることが要因です。 普通の状態であれば、失業をしても、デリバリーをやって生活費を稼いで、並行して職探しをするということができました。失業者のバッファーとしての機能を果たしていましたが、現在はスタッフが増えすぎて仕事の奪い合いとなり、全員共倒れに近い状況になりつつあります。人材貯水池が満杯になってしまって、溢れ始めているのです。 今回は、CNNICのインターネット統計をご紹介し、その中で利用率が減少している3つのサービスについて、その原因を考えます。 知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード vol. 186 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ▼目次▼ 「フードデリバリー」「音楽サブスク」「電子書籍」の利用率が減少。その背後にある共通因子とは何か 小米物語その105 今週の「中華IT最新事情」 次号以降の予定 Q&Aコーナー ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 「フードデリバリー」「音楽サブスク」「電子書籍」の利用率が減少。 その背後にある共通因子とは何か ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 今回は、中国のインターネット状況についてご紹介します。 中国のインターネットの中心は、中国インターネット情報センター(CNNIC)です。非営利団体ですが、中国情報産業部の指揮下にあり、政府機関のひとつに分類されます。日本で言えば、JPNICに相当する機関で、主な役割はIPアドレスの割り当てです。 それだけでなく、さまざまな調査研究を行っていて、CNNICが毎年3月に発行している「中国インターネット発展状況統計報告」は、日本の情報通信白書に相当するレポートで、中国のインターネット統計を見るときの基本中の基本の資料になっています。CNNICには英語サイトも用意されており、一部のレポートについては英語版も用意されています。中国のインターネット状況を知るときには必須の統計情報ですので、調査をする必要がある時は、まずここにアクセスして情報を取る必要があります。 https://www.cnnic.com.cn/ ▲CNNICの公式サイト。英語版も用意され、一部のレポートは英語版も公開されている。 その中でも「中国インターネット発展状況統計報告」は基本中の基本の資料となります。 では、なぜそんな基本資料を今回わざわざご紹介するのでしょうか。今、日本でもそうですが、中国でもインターネット人口というのは頭打ちになっています。私たちの周りを見渡しても、ほぼ全員がスマートフォンやPCを使って情報を入手しています。日本でも5年ほど前までは、公的機関がネットで情報を配信するというと、必ず「情報弱者を切り捨てるのか」という反論が起きましたが、コロナ禍以降、そういう声もほとんど聞かれなくなりました。非ネット人口はもはや少数派であるため、役所の有人窓口で個別対応できるようになっているからです。 ネット人口が頭打ちになるということは、人口ボーナスがなくなり、ネットサービスの中にも減少に向かう傾向を示すものが現れ始めています。具体的にいうと、最新版の「第51次報告書」(2023年3月発行、2022年のデータ)では、音楽サービス、電子書籍、フードデリバリーの3つのネットサービスの利用者が減少をしました。これはいったいなぜなのかというのが今回の主要なテーマになります。 日本もネット人口が頭打ちになっており、ネットサービスのすべてが成長するというわけにはいかなくなっています。もちろん、日本と中国では状況が異なるため、日本の音楽サービス、電子書籍、デリバリーが減少するとは限りません。特に日本ではこの3つはまだまだ黎明期にあるレベルですから、しばらくの間はまだ緩やかに成長をしていく可能性はあります。

この続きを見るには

この記事は約 NaN 分で読めます( NaN 文字 / 画像 NaN 枚)
これはバックナンバーです
  • シェアする
まぐまぐリーダーアプリ ダウンロードはこちら
  • 550円 / 月(税込)
  • 毎週 月曜日