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ジャーナリスト伊東 森の新しい社会をデザインするニュースレター(有料版)2023年7月23日(日)号

ジャーナリスト伊東 森の新しい社会をデザインするニュースレター(有料版)
------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 原発処理水問題の本質 トリチウムに関する研究は少ないのが実情 IAEAとは何か 問われる日本の外交に関する二重基準  ------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------  共同通信社は7月14日~16日に実施した全国電話世論調査によると、東京電力福島第1原発の処理水に関する政府の説明について、「不十分」と回答した人が、全体の80.3%達し、処理水について、国民への理解が十分に進んでいないことが分かった。  また、処理水の放出で風評被害が起きると思うか問うと、「大きな被害がある」が15.8%、「ある程度起きる」が71.6%と、懸念をする声が計87.4%を占めた。一方、政府の説明が「十分だ」との回答は16.1%程度に過ぎなかった。  処理水の放出について、賛成は31.3%、反対は25.6%を割れ、「どちらとも言えない」が43 .1%を占める(1)。  処理水放出をめぐる政府の説明については、自民党支持層の間でも「不十分」との回答が71.3%を占める一方、「十分である」との回答は25.6%にとどまっている(2)。  公明党支持層でも、「不十分」が87.2%、「十分だ」が8.4%にすぎなかった。各野党の支持層でも「不十分」が大半を占め、与野党を問わず政府の説明への不満が浮き彫りとなった。  政府と東京電力は2015年、福島県漁連に対し、 「関係者の理解なしにいかなる処分(海洋放出)もしない」 と文書で約束(3)。全国漁業協同組合連合会(全漁連)も「断固反対」との姿勢を貫く。  一方、国も処理水放出のタイミングを”刻々と”睨んでいる状況だ。8月中旬からは被災3県で地方選が相次ぐ。  岩手県知事選(同月17日告示)と同県議選(同25日告示)は9月3日投開票。10月に宮城、11月に福島の県議選も控える。  放出と選挙期間が近くなれば、放出の是非が争点化する可能性がある。また、首相は今秋以降の衆院解散を視野に入れているとされ、支持率低下につながりかねない。 目次 ・トリチウムに関する研究は少ないのが実情 ・IAEAとは何か ・二重基準 ・トリチウムに関する研究は少ないのが実情 三重水素をも呼ばれるトリチウムの分子構造は、水とほぼ変わらない。そのために、人体にそれほど重大な影響は及ぼさないと政府は説明する。しかし、分子生物学者はだからこそ、トリチウムの危険性を訴える。  水とほとんど変わらないがゆえに、人体はトリチウムを水と区別できず、それを容易に取り込んでしまう。  そのために、トリチウムは微量であっても体内に長期間にわたりとどまり続け、人体を内部被ばくにさらし続けるという指摘もある。  冷却の過程で発生する処理水からほとんどの放射性物質はALPS(Advanced Liquid Processing System=多核種除去設備)と呼ばれる装置などによって取り除かれている。  しかし、水素の同位体で陽子1つに中性子2つを加えただけの、きわめて水素と分子構造が似ているトリチウム水はALPSを持ってしても水と分離することが難しい。  有識者会議はトリチウムの生体への影響としてマウスやラットで発がん性や催奇形性が確認されたデータの存在を認めながら、ヒトに対する疫学的データが存在しないことを理由に、トリチウムが人体に影響を及ぼすことを裏付けるエビデンスはないとの立場をとり、海洋投棄を正当化した(4)。  しかし実際には故ロザリー・バーテル博士などによってトリチウムの人体への影響はこれまでも繰り返し指摘されてきた。  実際は、トリチウムの研究論文自体が少ないのが実情だ。発がん性があることが知られている他の物質についての研究論文数は、アスベストが19万7,000件、ラドンが9万6,700件、アクリルアミドが31万3,000件、ビスフェノールAが8万7,000件。  これに対して、トリチウムの発がん性関連の研究は、わずか14件しかなかった(5)。

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  • 日々流れるニュースを、様々な視点から分かりやすく解説するニュースサイト「ジャーナリスト 伊東 森の新しい社会をデザインする The Middle News Journal」のニュースレター有料版です。 いまだ私たちに伝えられてこないマスコミの情報は、残念ながら存在します。 「そもそも?」「Why?」を大事に、マスコミの情報を再編集し、様々な視点や確度から執筆していきます。 その「水先案内人」として、私の仕事が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
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