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高野孟のTHE JOURNAL Vol.610 2023.7.24
※毎週月曜日発行
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《目次》
【1】《INSIDER No.1216》
21世紀的な「多極化」と20世紀的な「一極化」と、2つ
の世界編成原理のせめぎ合いが激化する
【2】《CONFAB No.576》
閑中忙話(7月16日~22日)
【3】《FLASH No.524》
政府も国民も福島第1原発「処理水放出」問題をあまり
に他人事と捉えていないか/日刊ゲンダイ7月20日付
「永田町の裏を読む」から転載
■■INSIDER No.1216 23/07/24 ■■■■■■■■■■
21世紀的な「多極化」と20世紀的な「一極化」と、2つ
の世界編成原理のせめぎ合いが激化する
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「多極化」という言葉を誤用もしくは曖昧な使い方を
しているために、人々の世界理解を妨げ混乱させている
と思われる事例を、ほぼ毎日のようにメディアのあちこ
ちで見かけることができる。
●北大教授の歪んだ目
直近の一例は、7月20日付毎日新聞「発言」欄の岩下
明裕=北海道大学教授の「プーチン氏流の『多極化』と
は」と題した一文。6月にハンガリーでの「ブダペスト
平和フォーラム」に参加したところ、プーチンに甘いオ
ルバン政権の意向を反映して「反米・反NATO」一色の基
調で、とりわけ米コロンビア大学地球研究所長として知
られるジェフリー・サックス教授が「米国が手を引けば
世界は平和になる」と主張し、またシンガポールのキシ
ョール・マブダニ元国連大使が「世界の多極化」を支持
しG7による露批判を歴史の遺物であるかに嘲笑したこと
を、「困ったもんだ」という口調を滲ませながら批判し
ている。
岩下に言わせると、マブダニも支持する「プーチン流
の『多極化』論」は、「19世紀的な大国」すなわち「ロ
シア」が「国家主権平等ルールの破壊」を辞さずに「小
国」すなわち〔この場合〕ウクライナを「支配」しよう
とする理屈で、「かつてソ連が東欧諸国へ軍事介入した
際の『制限主権』論」と同じ類のものに他ならない。し
かし、例えばモンゴル、中央アジアや中東のいくつかの
小国は、中露に囲まれた中で「生存をかけて米国を自ら
の地域に巻き込もうとする」のであって、その国々に向
かって「米国が手を引けば」と言うのは、「彼ら『知識
人』の底の浅さ」を露呈したものである……と。
●米国の20世紀ノスタルジア
ずいぶん屈折した論理の運び方で、あっちの壁にぶつ
かったと思えばこっちの電柱に擦ったりする酔っぱらい
運転のようにさえ見える。
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