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週刊金融日記 第584号 植田総裁の狙いどおりに日本経済はインフレを常態化できるのか

藤沢数希メールマガジン「週刊金融日記」
// 週刊金融日記 // 2023年7月26日 第584号 // 植田総裁の狙いどおりに日本経済はインフレを常態化できるのか // 日銀YCC解除の憶測でドル円相場は乱高下 // 日本のうどんは世界進出できるのか // オススメ証券会社と金融商品 // 他  こんにちは。藤沢数希です。  諸用がいろいろあってバタバタしており、今週は配信がすこし遅れてしまいました。申し訳ございません。  まだ、東京にいるのですが、この1週間ぐらいは涼しくて助かりました。その前は、めちゃくちゃ暑くて、Twitterでは、東京はもう東南アジアより暑い(実際にこれはけっこう本当だと思いますが)とか、日本をディスる海外出羽守たちがTwitterには溢れていたわけですが、どういうわけか、涼しくなると、誰もそのことはつぶやきませんね。  これは、昨今のインフレとか円安に自分のポジション的にムカついている人たちが、ちょっとマクドナルドの値上げとか見つけると、これ見よがしに、日本はこんなにインフレしている!もう生活できない!!日銀は早く緩和やめろ!!!と得意げにつぶやくのと似ています。たしかに、高くなったものもありますが、日本は全般的にまだまだ安くて、お値打ちなものもたくさん残っているのですけどね。  さて、そのTwitterですが、また、イーロン・マスクさんの一存で、名前がX(エックス)に変わりました。イーロン・マスクさんは、当初から、なぜアメリカには中国のWeChatみたいなアプリがないんだ、と言っていて、それでTwitterを買収したのだから、今回の思い切った変更には、特に驚きはありません。 ●Twitterが「X」へとブランドを変更しても、“スーパーアプリ”の実現には課題が山積している https://wired.jp/article/twitter-x-rebrand-elon-musk/  WeChatは、日本でいえば、LINEとTwitterとPayPayがぜんぶいっしょになって、さらに政府のいろいろな電子化された手続きも代行しています。  中国本土は、世界で一番キャッシュレス決済が進んでいて(逆にWeChatPayとかAlipayがないと詰みます)、何でもスマホでQRコード見せたり読んだりで、ピッと支払いができます。また、コロナ給付金みたいなのもこうしたアプリでもらえますし、あとは、たとえば、僕は先日、深センに行ったんですが、まだコロナ禍の名残りで、いろいろ健康状態を申告しないといけなくて、それもWeChatでやります。 『週刊金融日記 第576号 AlipayHKをインストールして深センに行ったら新世界への扉が開いた』  イーロン・マスクを世界的な起業家にしたのは、もちろん電子決済サービスのペイパルの成功なので、彼の中で、なぜ中国で実現できているものが、アメリカにはないのだ、という素朴な疑問とともに、自分ならできる、という自信もあったのでしょう。だからこそ、私財を投じてTwitterを買収したわけですね。  これからのTwitter……ではなく、Xに期待しましょう。  中古車販売大手ビッグモーターのさまざまなスキャンダルがたいへんに悪辣で、また、出てくる登場人物も面白く、Twitter、いやXでは最近この話題で持ち切りです。しかし、日本の中古車業者の話なんか、グローバル経済に何のインパクトもないし……、ということで、僕はスルーを決め込んでおりましたが、大規模な保険金不正受給の話も出てきて、金融業界にも火の粉が降りかかる、かなりの大事(おおごと)になってきましたね。 ●ビッグモーターの不正可能性、損保ジャパンは認識し取引 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB254EF0V20C23A7000000/  中古車というのは、売り手が正確な情報を持っている一方で、買い手にはそれがわからないため、情報の非対称性があります。英語では、こうした質の悪い中古車をLemonと呼ぶことがあり、まさに、こうしたレモン市場の分析で、アメリカの理論経済学者ジョージ・アカロフが、自由市場における情報の非対称性の研究でノーベル賞を受賞しています。  日本のレモン市場での大スキャンダルも、コーボレートガバナンスなど、いろいろ興味深いファイナンスの研究対象を提供してくれそうで、感慨深いですね。 ●レモン市場 https://w.wiki/783f  今週も読者から興味深い投稿がいくつもあります。見どころは以下のとおりです。 - 新社会人ですが上司も先輩メンターも女性です - 30代前半のデート用私服の効率的な揃え方について - 日銀がマイナス金利をやめられない理由は - 証券会社は楽天証券で買うものはeMAXIS Slim 全世界株式(除く日本)で合っていますか  それでは今週もよろしくお願いします。 1.植田総裁の狙いどおりに日本経済はインフレを常態化できるのか  好むと好まざるとにかかわらず、日本の経済環境は岐路に立っているように思います。日本経済は、1990年代半ばぐらいからじつに30年間に渡って、物価がほとんど上がらない状態が続いたのですが、現在、いよいよインフレが常態化する環境になるかもしれない、というところに来ているのです。 ●日本の物価は35年前と比べて約2割上昇したが、世界に比べると・・・ https://www.nissay.co.jp/enjoy/keizai/154.html  このままインフレ気味が常態化するのか、あるいは、また、物価が上がらない、ゆるやかに衰退しつつ閉塞感が漂いながらも安定していたかつてのような状態に戻るのか。どちらに転んでも、マクロ経済環境的にはそれぞれに良いことも悪いこともありますが、ミクロに個人単位で見れば、勝者になれるか、敗者になるかは、職種や個人の財産を何に投資しているかではっきりと分かれるでしょう。  物価がはっきりと上がり始めたのはつい最近ですが、こうしたデフレ経済との戦いの象徴であるアベノミクスと異次元緩和の効果なのか、一足先に資産インフレ的なことは起こっており、東京のタワマンなどは大きく値上がりしました。そういう意味では、ふつうのサラリーマンでも、10年ちょっと前のいい時期に、結婚や育児などを理由に、たまたまマイホームを住宅ローンをめいっぱい借りて買えた人と、ずっと賃貸の人では、その間の給料が同じだったとしても、個人資産に1億円以上の差がついていますから、すでに勝者と敗者は分かれているわけです。  通貨の価値も円安が大幅に進行していますから、個人資産を外国株式などに投資できていた人と、そうでない人では、同じようなサラリーマンでも、やはり数千万円ぐらいの差はついたように思います。  そして、これからはこうした資産価格だけでなく、日々の生活に関わる物価そのものも変わり、会社からもらう給料そのものも職種によって勝ち組と負け組ではっきりとわかれてくるのかもしれません。もし日銀の植田総裁が、狙い通りにインフレが常態化する経済環境にすることに成功するならば、確実にそうなっていくと思います。  今週号では、日本経済はインフレを常態化できるのか、あるいは、また昔みたいに戻るのか、仮にインフレ経済になるとしたら、誰が勝ち組で誰が負け組になるのかを考えてみたいと思います。

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