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227回 警察が市民を守らない国の悲劇

和田秀樹の「テレビでもラジオでも言えないわたしの本音」
札幌の首無し遺体殺人事件で、若い娘とその一家(父親と母親)が逮捕されて、マスコミの餌食になっている。 恨みをどんどんエスカレートさせてコントロールできなかったと、心の病やパーソナリティに問題を持つ人をいつものようにコテンパンに叩く本を出し売れ続けている、精神科医がコメントする。 私はこんな冷たい人の治療を受けたいと思わないことだけは確かだ。 その後の報道によると、被害者の男性は、この若い娘に性加害を加えていたようだし、また、加害者宅に押し掛けるようなこともかなりあって、毎日玄関の前で父親が見張りをしているという証言もある。 ちゃんと警察に訴えたらいいのにという声が強い。 「甘すぎる」 というのが、精神科医としての私の率直な感情だ。そして、おそらくこの医師も精神科医であったから、日本の警察が何もやってくれないこと、性犯罪を軽くあしらうことを痛いほどわかっていることが、今回の悲劇の元凶だと私は考えている。 この事件は精神科医なのに起こした事件というより、精神科医だから起こした事件だと精神科医の私は考える。 このメルマガでも何度も書いたが、警察は、性犯罪をひどく軽く見ている。 法務省の検察統計によると2018年のレイプ事件の起訴率はわずか34.3%。97年は7割を超えていたことを思うと、それが半減している。 とある法律事務所の広告には、刑事事件化しなかったものも含めると25%とされる。 警察に訴えたらよかったのになんて能天気なことを言っているのは、この事実を知らない人なのだろう。 そして、金持ちが加害者だった場合は、示談を警察のほうから示唆され、100万円も出せば恩の口のように言われる。 警察にとってはレイプは高級売春なのだ。 それを拒むと証拠不十分で起訴はできませんと脅されたりもするという。 レイプの捜査は面倒くさい。そんなのに人を割くくらいなら、一時停止のところに警官を3人立たせておいて金儲けをするほうがよほどおいしい。これが日本の警察だ。 ところが、レイプのPTSD患者は一生苦しむ。 精神科医をやっていると患者になぜ被害届を出さなかったのかを聞くこともあれば、こういう警察のひどい扱いを聞かされることもある。 自分の娘が被害届を出したところでどういう結果になるのがよくわかっていたから、この父親は警察に頼らない断罪を行おうとしたのだろう。 私は、この父親の気持ちはよくわかる。 そして、娘にジュースに溶かしても味がしないで、眠らせたり、抵抗できなくなるような薬をもたせて、その男をホテルに誘って、眠っているか、ぐだぐだになったところで気が済むまでの復讐をさせたところ、結局殺してしまって、それなら首を切ってしまえという話になったと私は想像するが、これはわからない。 私だって、自分の娘がレイプしたら、日本の警察のことをよく知っているので、同じことをしたかもしれないと思うと背筋が寒くなった。私の場合は、多少、警察にまじめにやらせるすべを知っているから(というか、多少のコネがあるから)、そちらのほうを選ぶとは思うが、冷静を保つ自信はない。

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  • 和田秀樹の「テレビでもラジオでも言えないわたしの本音」
  • 世の中のいろいろなことにたった一つしかないと考え、それを信じ込むことは、前頭葉の老化を進め、脳に悪い。 また、それが行き詰った時に鬱になるというメンタルヘルスにも問題を生じる。 ところが日本では、テレビでもラジオでも、○○はいい、××は悪いと正解を求め、一方向性のオンパレードである。 そこで、私は、世間の人の言わない、別の考え方を提示して、考えるヒントを少しでも増やし、脳の老化予防、メンタルヘルス、頭の柔軟性を少しでもましになるように、テレビやラジオで言えない暴論も含めて、私の考える正解、私の本音を提供し続けていきたいと思う。 質問、相談、書いてほしいテーマ等、随時受付。
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