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佐々木俊尚の未来地図レポート 2023.7.31 Vol.766
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【今週のコンテンツ】
特集
ChatGPTで人類は古代の「対話することによる知」を取り戻す
〜〜〜対話型AIの「現在地」と「未来」を俯瞰して解説する
未来地図キュレーション
佐々木俊尚からひとこと
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■特集
ChatGPTで人類は古代の「対話することによる知」を取り戻す
〜〜〜対話型AIの「現在地」と「未来」を俯瞰して解説する
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メタが提供する新しいSNS、スレッズがサービス開始から5日間で1億人ユーザーに達して話題になりました。この「最速1億人」の記録をそれまで保持していたのは、ChatGPT。2022年11月に公開されてから2か月で1億人を突破し、話題になったばかりです。
それ以前というとティクトクが1億人に達するのに9か月、インスタグラムは2年4か月かかっています。それが2023年になってからのこの半年で、「最速1億超え」のレコードが二度も塗り替えられてしまいました。ちょっと前まで「これからはウェブ3だ、自律分散だ!」と言っていたのが、あっという間に中央集権に回帰してビッグテックにパワーがふたたび集中してきている感じもしますね。
さて、今回のメルマガの本題はウェブ3ではありません。ChatGPTの産業利用についての現状把握です。
ChatGPTが普及し始めて半年あまり。1億人を超えた膨大な利用者たちが、ChatGPTのさまざまな活用法に取り組んでいます。インターネットに蓄積された膨大な知識や情報を参照するだけでなく、英語の文章の添削をさせたり、テーマを与えると小説や歌詞を書かせたり、会議の録音の文字起こしから議事要点をまとめさせたり、さらには人生相談の相手にさせたりなど、無数の試行錯誤がおこなわれています。
可能なことは無限にあり、これが人間の従来の仕事をある程度は奪っていくのは間違いありません。
特に重要な点は、従来のAIやロボットが比較的単純な仕事だけをになうと考えられていたのに対し、ChatGPTなどはより高度な仕事までをもになっていく可能性が高いことです。具体的にいえば、弁護士や小説家、建築家、教師、営業といった仕事まで人の手から奪われる可能性が指摘されています。
とはいえ過去にも産業革命やテクノロジーの進化によって、人間の仕事はさまざまに機械に移行してきました。そのたびに人間は、より人間らしい新たな仕事を生み出して対応してきたという歴史的経緯もあります。だからChatGPTに仕事を奪われたとしても、また新たな仕事が登場してくる可能性もあるでしょう。いずれにしても現時点では、その先は未知数です。
そこでここでは視線を少しずらし、ChatGPTがわたしたちの仕事を「どう変えるか」「変えうるのか」という視点から考えてみましょう。
そのテーマに入るために、考えておきたいポイントが二つあります。「ハルシネーション」と「ブラックボックス化」です。ひとつずつ説明していきます。
まず「幻覚」「妄想」といった意味を持つハルシネーションについて。ChatGPTに質問すると何でもすぐに答えてくれますが、その中にとんでもない嘘が混じっていることがあります。これがハルシネーションと呼ばれる現象です。
なぜハルシネーションが起きるのか。ChatGPTはインターネットの膨大な文章データを学習しています。しかしChatGPTには人間のようにそれら文章データの意味を理解しているわけではありません。ではどのようにして回答を生成しているのでしょうか。
たとえば利用者が「『けさ会社に行ったら』に続けて、詩的な文章を書いて」と質問したとしてみましょう。ChatGPTは「けさ会社に行ったら」に続けて書かれている膨大な文章を探し、その平均的なところから「詩的」なものを選び、続きの文章を生成しています。つまり統計的に処理しているのにすぎず、「会社」や「誌」の意味を理解しているわけではないのです。ただ参照する文章データがあまりにも膨大なので、そこから得られた回答が複雑で人間らしく見えてしまうということなのです。
ちなみに、いま「平均的なところから」選んだと書きました。これは正確には完全な平均ではなく、少し外れ値的な要素が加えてあります。完全な平均だけを選出すると、実につまらない答しか出てこないからです。外れ値をどの程度加えるのかというところが、ChatGPTの精度を高める重要なポイントにもなっているのです。
さて、この「ChatGPTは意味を理解していない」ということは、ChatGPTに算数の計算をさせてみるとよくわかります。3桁から4桁ぐらいのかけ算をやらせてみると、見事に間違った回答ばかりを返してくるのです。
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