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【Vol.493】冷泉彰彦のプリンストン通信『バイデン次男問題とUFO審議』

冷泉彰彦のプリンストン通信
「自民女性議員のフランス記念写真、何が問題なのか?」  自民党「女性局」の参加議員(国会議員と地方議員38名)がフランスへ の海外研修に行き、一部の議員たちがエッフェル塔を背景にポーズを取る写 真がSNSに上がったそうです。これに対しては、「血税で旅行か」などと 批判のコメントが多数書き込まれる事態となり、当該の写真は削除されてい ます。  この問題ですが、大阪参議院で維新票に対して善戦し続けていると同時に、 外交官出身ながらポピュリズムとは一線を画して実務的な政策発信を続けて いる、松川るい議員が絡んでいるのが気になります。もしかしたら、松川議 員の足を引っ張ろうという勢力が何らかの動きをしたのかもしれません。  それはともかく、やはり今回の動きは軽率です。何故ならば「少子化対策 についてフランスを視察する」というのは、大変な覚悟が必要だからです。  フランスの出生率(合計特殊出生率)は、1.88前後となっており、安 定していると言われています。その原因としては、 「子育て家庭や子供本人への手厚い経済的支援」 「婚外子が過半数超え(61%)という家族の多様化」  が指摘されています。内閣府や厚労省などは、この事例を研究して様々な 形でレポートしていますが、実際に政策に踏み込むとなると、強い抵抗勢力 が出てくるようです。  特に婚外子の問題は、日本の場合ですと夫婦別姓の選択制ですら「自分が 属している国柄がガラガラと壊れてしまう」というような原理主義的な態度 が高齢世代には残っており、多くの政治家はこれと戦うことから逃げていま す。現金給付についても、賛否両論があり、政治家が取り組むのには勇気が 要ります。  考えてみれば、今回の研修旅行について「フランスが行った義務教育開始 年齢の3歳への引き下げについて、目的や効果などを調査するのが狙い」だ ったなどと説明しているのは、現金給付と婚外子という「本筋」から逃げる ためという見方も可能です。だとしたら、最初から戦いに負けているとも言 えます。そんな弱腰だから、SNSのエントリを拾われて罠に落ちるのです。  そもそも、日本の政治状況は、野党に政権担当能力がなく、その中身も、 バラマキ左派ポピュリズムか、納税者カスハラの右派ポピュリズムか、バラ マキ独裁の経済破壊かといった低レベルの選択肢しかありません。自民党が しっかりしなければ、この国は回っていかないのです。その自民党「婦人 局」がフランスの少子化対策の中で「現金給付」と「婚外子」の問題を世論 と対話するのから逃亡し、その挙げ句に下らない写真を拾われて、恐らくは 維新勢力などに「敵失ポイント」を稼がせるとしたら、話として論外です。

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  • アメリカ北東部のプリンストンからの「定点観測」です。テーマは2つ、 「アメリカでの文脈」をお伝えする。 「日本を少し離れて」見つめる。 この2つを内に秘めながら、政治経済からエンタメ、スポーツ、コミュニケーション論まで多角的な情報をお届けします。 定点観測を名乗る以上、できるだけブレのないディスカッションを続けていきたいと考えます。そのためにも、私に質問のある方はメルマガに記載のアドレスにご返信ください。メルマガ内公開でお答えしてゆきます。但し、必ずしも全ての質問に答えられるわけではありませんのでご了承ください。
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