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ジャーナリスト伊東 森の新しい社会をデザインするニュースレター(有料版)2023年8月6日(日)号

ジャーナリスト伊東 森の新しい社会をデザインするニュースレター(有料版)
------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- なぜアメリカは原爆投下を肯定し続けるのか? 核兵器禁止条約に参加しない日本と対米追従外交の帰結 --------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------   原爆開発をモデルとした映画「オッペンハイマー」が、やはりというべきか、公開の危機に瀕している。  オッペンハイマーは、7月21日よりアメリカで公開。  同日にバービー人形を実写化した「バービー」が公開されるとともに、SNS上では両作品を併せたハッシュタグ「#Barbenheimer(バーベンハイマー)」がブームとなった。  しかし、これが日本のTwitterユーザーの標的となる。  米国内のユーザーから投稿さえたと思われる、火のようなものが飛ぶなかで、バービーがオッペンハイマー氏の肩に乗る画像に「It's going to be a summer to remember(思い出に残る夏になりそうだ)」と、米「バービー」公式ツイッター(現在はX)が返信したり、バービーの髪形を「キノコ雲」に置き換えたコラージュ画像に「This Ken is a stylist(ケン<バービーの恋人>がスタイリスト)」と反応したりした。  これら公式の返信が日本にも知れ渡り、「原爆をからかっている」などと問題視され、ハッシュタグ「#NoBarbenheimer」で反対運動が拡散されるようになる。  確かに、米「バービー」公式ツイッターは日本に対し、「失礼なこと」をした。  しかし、同時期に日本のメディアも失礼なことをしているのにも関わらず、所詮は日本のメディアの影響力など、世界と比べても”微々たるもの”なので、こちらは世界で”炎上”などしていない。  日本テレビ制作の情報番組「ズームイン!!サタデー」が先日、サッカー・サウジアラビア1部アル・ナスル所属のクリスティアーノ・ロナウドにインタビューを行った際、あるタレントが「大谷翔平選手はご存知ですか」と質問されると、ロナウドが「知らない」と返している。  しかし、ことの本質は所詮、Twitter(X)など、日本人”だけ”が好きなガラパゴス・SNSなので、炎上=日本でだけ炎上ということを押さえておかなければならない。  もう一つの問題は、なぜアメリカが”いつまでも”日本における原爆投下を反省しないのか、だ。その答えは、日本政府(自民党)の戦後の対米追従外交があるからに他ならない。 目次 ・日本が唯一の被爆国という嘘 ・核兵器禁止条約に参加しない日本 ・対米追従外交の帰結 ・日本が唯一の被爆国という嘘  よく、日本を指して「唯一の被爆国」という言われた方がなされる。しかし、実際にはそのことは正確ではない。  核兵器の被害にあった国は日本だけではない。1945年、アメリカはニューメキシコ州で、世界で初めての核実験を行い、以降もこれまでに2050回以上の核実験を行ってきた(1)。  アメリカは、ネバダ砂漠や太平洋で核実験を行ってきた。アメリカだけでなく、ロシアはカザフスタンや北極海で、イギリスはオーストラリアや太平洋の島国で、フランスはアルジェリアや南太平洋の仏領ポリネシア・タヒチで、中国は新疆ウイグル自治区で核実験を行う。  米プリンストン大などの研究チームは、1945年8月の広島と長崎への原爆投下に先立つ同年7月に行われた人類初の核実験「トリニティ」の放射線降下物(フォールアウト)が、爆発から10日後に周辺へ広がる様子などを再現したシミュレーションを作成(2)。査読前の論文を、7月20日にインターネット上に公開する。  シミュレーシ結果は、これまで影響が過小評価されていた可能性を示唆する内容であり、実際には放射性降下物は、米南西部のニューメキシコ州にあるトリニティ実験場から、全米50州のうち46州にまで、広がり、またメキシコとカナダ東部にまで広がっていた(3)。  トリニティ実験は第二次世界大戦中にアメリカ政府が原爆を開発する「マンハッタン計画」の一環として、理論物理学者のオッペンハイマー氏が主導。ニューメキシコ州の砂漠地帯で、プルトニウム型原爆を高さ30メートルの鉄塔の上に固定させ、爆発させた(4)。エネルギーは長崎原爆とほぼ同じ。  一方、論文によると、米本土ではトリニティ実験以降も、部分的実験禁止条約が発効する前年の1962年まで、西部ネバタ州で100回の大気圏内核実験が行われ、現地の住民の被爆と環境汚染をもたらしたという。 ・核兵器禁止条約に参加しない日本  アメリカが日本への原爆投下を一向に反省しない、そして日本政府が米政府に対し、原爆投下の謝罪を求める”ことができない”理由の一つとして、日本が核兵器禁止条約に批准していないことが挙げられる。

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  • 日々流れるニュースを、様々な視点から分かりやすく解説するニュースサイト「ジャーナリスト 伊東 森の新しい社会をデザインする The Middle News Journal」のニュースレター有料版です。 いまだ私たちに伝えられてこないマスコミの情報は、残念ながら存在します。 「そもそも?」「Why?」を大事に、マスコミの情報を再編集し、様々な視点や確度から執筆していきます。 その「水先案内人」として、私の仕事が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
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