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象徴的な「日立復活」、企業統治論の実践 名目GDP600兆円へのテコ

勝又壽良の経済時評
  • 2023/08/07
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企業経営者にお目付役 今後高まる賃上げ圧力 名目GDP600兆円 AIが日本企業を救う 日本経済は、1990年1月大発会で株価が暴落するまで、世界がうらやむ高い成長率を実現してきた。その牽引役は、日本企業の設備投資を支えた重電機メーカー「日立・東芝」である。だが、日本経済破綻は、日立・東芝にとって嵐の到来を告げるものになった。東芝は、非上場企業になるところまで追込まれているが、日立製作所は「業態転換」によって再生復活を果たした。海外からは、日本企業「再生」モデルとして評価されている。 日立は創業以来、国産技術の開発にこだわり、それが独自の技術を生み出した。この自信が、日本のバブル崩壊後には大きな障害になった。「日立モデル」が崩壊したのである。経営立て直しのきっかけは、コーポレート・ガバナンス(企業統治)によって、外部役員を登用して内向き経営から脱皮したことだ。現在では、役員12人中9人が社外取締役で、5人が外国籍になった。従業員32万2500人の過半数が、国外で働くという大転換を成し遂げたのである。 内向きの代表的な日本企業、日立製作所の成功は、日本経済の未来への展望を明るくさせている。日立の株価純資産倍率(PBR)は、1.7倍であるのに対し、東証株価指数(TOPIX)を構成する企業の約45%は1倍を下回る。日立は、コーポレート・ガバナンスを刷新し、成長分野に資源を集中するため子会社を売却、グローバル企業へと進化した。株価は、2009年の安値から8倍余りも上昇した。世界の投資家が日立を高評価した結果だ。以上の日立に関する記述は、『ブルームバーグ』(8月4日付)を参考にした。 日立の変貌は、海外の日本企業を見る目を変えさせた。コーポレート・ガバナンスが、従来の日立経営に変革を迫ったのである。「株主」の利益を重視して、従来の「企業経営者」中心の視点を否定することになった。これは、過去の日本企業に全く欠落していた視点である。日本企業が、賃上げも増配もせず、ひたする内部留保を貯め込んできたのは、「経営者安泰」第一であり、コーポレート・ガバナンスの精神に著しく反する行為であった。 企業経営者にお目付役 コーポレート・ガバナンス重視は、アベノミクスの重点項目の一つである。最近、アベノミクス批判の書籍が発刊され、その宣伝文句に「アベノミクスは資本家の利益」と書いてあった。最近の株価上昇を捉えて、「資本家の利益」と断じたのであろう。株価上昇が、資本家の利益と直結させるのは昔の話だ。今や、「NISA」によって国民に長期視点から投資を勧める時代である。また、年金の資産運用も株式投資などで年金ファンドを増やす環境になっている。株価上昇が、国民全体の利益や福祉に関わるのである。

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  • 勝又壽良の経済時評
  • 経済記者30年と大学教授17年の経験を生かして、内外の経済問題について取り上げる。2010年からブログを毎日、書き続けてきた。この間、著書も数冊出版している。今後も、この姿勢を続ける。
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