【2度目の挑戦】
カラオケ屋での給料では足りないので、昼間の仕事も頑張ろうと思ったのだが、かなり切羽詰まった状況なので、みつおの気持ちは大きなリフォームの仕事よりも自分でできる小さな仕事を探すようになっていた。
建前上はリフォームの会社だが、実際は便利屋みたいなことをして日銭を稼いでいたのである。
しかし、それでも全然よくなる見通しはなかった。そんな時にふと思ったのは…
「俺、何で沖縄にいるんだろう?」
ということだった。
そもそも、上京して一旗上げるつもりだったのだが、母親の危篤で沖縄に戻り母親が亡くなった後、一人で残された父親が心配なので沖縄に帰ることにしたのだった。
しかし、父親が亡くなった今、みつおは沖縄にとどまる理由はなかった。
地元だからと言って、地元の友達と遊びまわることはなかった。
別に地元に特別な執着があるわけでもなく、どちらかというと、都会の方が好きだったのである。
「そうか、沖縄にいなくてもいいんだ」
そう我に返ったのだった。
そしてすぐに東京の友達に連絡してみた。
「もしもし、元気?」
「おぉ、金ちゃん元気?どうしたの?」
「実はさ相談があるんだけど、東京で仕事ないかな?借金の返済がキツくて沖縄では2つの仕事を掛け持ちしても間に合わなくてさ」
「おぉ、いい時に電話してきたね、実はここでも人材がいなくて探していたんだよね、俺のとこじゃないんだけどさ、同じ系列の会社が困っていたから聞いてみるよ」
「そうなの?ありがたい、よろしくお願いします」
その友達は今、ガス屋をやっているとのことだった。
プロパンガスではなく、都市ガスの配管の仕事である。
友達は内菅といって、建物の中のガスの配管が専門である。
同じガス屋で供給菅というのがあって、道路に埋められている大きな本管から、建物の敷地内へ配管する班である。
道路には水道やガス、電気の大きな配管が埋められていて、そこから各家庭へと菅を繋ぐことで都市ガスが使えるようになるのである。
だから、みつおが行こうとしている供給菅の仕事は、道路で穴を掘って本管に供給菅を繋ぎ敷地内へと菅を伸ばす仕事である。
その後、内菅の班のひとが、その供給菅を建物の仲間で繋いで、末端のガスコンロに繋ぐのである。
しかし、そんな事を電話で話されても理解できるわけもなく
「大丈夫、最初に教えてもらえれば何でもできるから」
と軽口を叩いたのが、のちに大きな過ちだったことは知る由もなかった。
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