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第226号 風力発電より馬力発電?/きっこのC型肝炎放浪記/西瓜/東京だョおっ母さん

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  • 2023/08/09
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「風力発電より馬力発電?」 自民党の秋本真利衆院議員(47)が、日本風力開発株式会社の塚脇正幸社長(64)から、2021年10月から今年6月までに計約3000万円を受け取っていた問題ですが、これは完全にアウトでしょう。塚脇社長は「競走馬の購入費用を秋本議員に渡しただけで賄賂には当たらない」と主張していますが、それならどうして秋本議員が管理している馬主組合の銀行口座に振り込まず、わざわざ現金1000万円を用意して、議員会館の秋本議員の事務所まで出向いて行き、直接手渡したのですか? 塚脇社長の主張が事実なら、これは組合への出資金なのですから、後から「受け取っていない」などと言われたら大変なことになります。そのため、普通は銀行振り込みにして、支払ったという証拠がデータとして残るようにします。これほどの大金をわざわざ現金で用意し、相手に直接手渡すというのは、証拠が残ったら困るお金だからです。甘利明議員の「UR口利き疑惑」の時も、相手はわざわざ現金で数百万円を用意し、議員会館の甘利議員の事務所内で手渡しましたが、まったく同じ構図です。 ま、それはそれとして、あたしは競馬ファンなので、今回はこうした一般論ではなく、競馬の観点からこの問題を分析してみたいと思います。まず、日本風力開発の塚脇社長は、昔から競馬ファンで、20年ほど前から個人馬主として複数の競走馬を所有していました。そして、2021年10月、秋本議員と塚脇社長が45%ずつ出資して、「パープルパッチレーシング」という馬主組合を設立しました。 競走馬の馬主というのは、個人馬主、法人馬主、組合馬主の3種類があります。個人馬主は、年収1700万円以上、資産7500万円以上など、他にも厳しい規定がいろいろとあるのですが、組合馬主は年収900万円以上の人が3人から10人で設立できるので、ハードルが低いのです。 で、先ほど、「秋本議員と塚脇社長が45%ずつ出資し」と書きましたが、組合馬主は「最低3人以上」なので、もう1人、秋本議員が知り合いの名義を借り、負担分10%を自分たちで用意し、実際は2人なのに「3人」と偽って馬主組合を設立したわけです。さらに言えば、塚脇社長も自分の名前ではなく、他人の名前で参加しています。 ま、これもこれとして、競馬の賞金は、ほとんどが馬主のものです。その馬が賞金対象の5着までに入着して賞金が支払われれば、そのうち80%が馬主の取り分、10%が調教師の取り分、5%が厩務員ら、そして5%が騎手の報酬となります。賞金1000万円のレースに勝てば、このうち800万円は馬主の取り分なのです。そう聞くと、「いや~、馬主って本当にいいですね~♪」と、水野晴郎さんぽく言ってみたくなりますが、あたしたち庶民でも馬主になることは可能なのです。 競馬には「一口馬主」という方式があって、1頭の馬を複数の人で共同購入することができるのです。たとえば、1000万円で落札された新馬なら、「一口2万円×500口」とか「一口5万円×200口」とかで募集が掛かるのです。もしも2万円払って一口馬主になれば、その馬が稼いだ賞金の500分の1が配当として貰えます。 実際には、入会金や厩務代などの支出もありますし、1レースも勝てずに引退する馬も多いため、馬券を買うのと同じくギャンブルになりますが、凄い成功例もあります。日本馬の最多獲得賞金19億円を稼いだ三冠牝馬のアーモンドアイは、もともとは「一口6万円×500口」で馬主を募集した3000万円の馬だったのです。もしも30万円払って5口の馬主になっていたら、19億円の100分の1、1900万円の配当があったのです。 一方、1頭の競走馬の維持費は、厩務、飼料、調整などで、中央競馬(JRA)で月60万円、地方競馬で月30万円が最低ラインです。つまり、中央競馬の馬を1頭持っていたら、何もしなくても年間720万円以上は掛かるので、少なくとも、それ以上の賞金を稼いでくれないと赤字になってしまいます。そのため、なるべく多くの馬を所有したほうが有利なのですが、よほどの大金持ちでもない限り、個人馬主には限界があります。 そこで、組合馬主なのです。仮に10人集まって組合を作れば、出資額は10倍になり、所有馬の数も10倍になるので、たとえまったく勝てない馬が数頭いても、稼いでくれる馬の数も多くなります。そして、リスクは軽減され、1人当たりの配当が安定へ向かいます。つまり、「ギャンブル」より「投資」に近づくのです。 しかし、秋本議員の運営を見てみると、「投資」とは言えないような、普通では考えられないことが多いのです。たとえば、秋本議員の「パープルパッチレーシング」が所有していた「パルタージュ」という馬がいます。トゥザワールド産駒のまあまあの血統ですが、もともとは一口馬主で有名なキャロットファームの持ち馬で、「一口3万円×400口」の1200万円の馬でした。 パルタージュはJRAでデビューしましたが、2021年10月16日の東京の新馬戦で18頭中10着、同年12月25日の2歳未勝利戦で16頭中7着、2022年2月19日の3歳未勝利戦で16頭中15着、同年5月22日の3歳未勝利戦で15頭中12着と振るいませんでした。その上、このレース後に「右第一指骨近位部剥離骨折」が判明して中央の登録を抹消されたため、一口馬主全員に出資金が返還され、ファンドは解散となりました。 そして、この馬を買ったのが、秋本議員の「パープルパッチレーシング」だったのです。芝もダートもまったく走らず、軽傷とは言え骨折した馬ですから、当初の1200万円よりグンと安くなります。秋本議員はこの馬を買い、地方競馬(盛岡)に登録し、2カ月後の2022年7月19日のレースに使ったのです。すると、2着に入って賞金140万円、続く7月31日のレースでは1着になり賞金400万円。 ここまでは、中央でダメだった馬を地方へ出し、勝ち癖をつけて中央へ戻す‥‥という良くある作戦のように見えます。しかし、ここからが不思議なのですが、秋本議員は今年の1月にパルタージュの登録を盛岡から名古屋へ移し、1月から3月までの5レースで1着2回と2着2回、計941万円の賞金を稼ぎました。それなのに、3月末に突然の登録抹消。 まだ4歳でしたが、牝馬なので、もしかすると繁殖のために引退させるのかと思いきや、登録は抹消したのに引退させず、そのままずっと所有していたのです。故障を発生したわけでもないのに、レースに使わずに所有し続けるということは、毎月の維持費だけが嵩(かさ)んで行きます。そして、今回の事件が報じられる1週間前の7月27日、秋本議員は突然、パルタージュを第463回サラブレッドオークションに「現役競走馬」の枠で出品したのです。 パルタージュは、そこそこの金額で落札されましたが、地方競馬とは言え連勝していたのですから、オークションに出品するのであれば、そのまま月2回のペースで走らせて賞金を稼ぐのが普通です。また、繁殖馬にするのなら、3月に登録を抹消したのですから、すぐに繁殖に回すのが普通です。牡馬はいくらでも子作りできますが、牝馬は1年に1頭しか産めませんので、すぐに繁殖に回さなければ1年を棒に振ることになるからです。 それなのに秋本議員は、パルタージュの登録を抹消しても4カ月間も所有し続け、東京地検特捜部の捜査が入りそうになったとたんにオークションに出品したのです。

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