━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード
vol. 189
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
みなさん、こんにちは!ITジャーナリストの牧野武文です。
今回は、農村から都市を包囲する戦略についてご紹介します。
この「農村から都市を包囲する」戦略は、毛沢東が新中国を建国する上での重要な戦略となりました。欧州の共産革命は都市労働者を味方につけ、都市を制圧するという手法でした。しかし、毛沢東は中国の状況を考察して、農民を味方につけることこそ、革命を成功させる唯一の道だと主張したのです。
ここから、私たちは多くのことを学ぶことができます。
1)教科書(欧州)通りではなく、状況に応じて、戦略を改善しなければならない
2)リソースが不足する革命軍は、主戦場(都市)を避け、サブ市場(農村)でシェアを獲得することから始めなけれならない。
3)サブ市場で体制を整え、リソースを得て、それから主戦場に参入していかなければならない。
毛沢東の政治家としての功罪を置いておけば、この人は戦略家としては天才です。しかも、漢の始祖である劉邦や、蜀を打ち立てた劉備と諸葛亮のコンビニに似た天才ぶりです。三国志を思い起こしてください。弱小であった劉備は、蜀というサブ市場を確保し、そこで体力を蓄え、孔明の北伐により中原(メイン市場)に打って出ました。これも規模は異なりますが、「農村から都市を包囲する」に共通した考え方があります。
中国のビジネスが面白いのは、このようなややもすると講談に出てきそうな戦略、戦術というものを、実際のビジネスで活かしている企業がたくさんあるのです。それどころか、「農村から都市を包囲する」戦略は、リソースの少ないスタートアップ企業には定番中の定番の戦略と言っても過言ではありません。
今回は、ソーシャルEC「ピンドードー」、フードデリバリー「美団」、シェアリング自転車「ハローバイク」、コンビニ「美宜佳」の4社について、「農村から都市を包囲する」戦略をどのように活用しているのかをご紹介します。
知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード vol. 189
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
▼目次▼
農村から都市を包囲する戦略。中国独特の地方戦略で成功する企業たち
小米物語その108
今週の「中華IT最新事情」
次号以降の予定
Q&Aコーナー
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
農村から都市を包囲する戦略。
中国独特の地方戦略で成功する企業たち
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
今回は、「農村から都市を包囲する」戦略についてご紹介します。
中国のビジネス界では、この「農村から都市を包囲する」という言葉がよく登場します。資金力に限りのあるスタートアップ企業、中小企業が、主戦場となっている市場をあえて避け、競争の激しくない市場でサービスの体制を整え、力を蓄えてから主戦場になっている市場に参入をしていくということを指します。
特に2010年以降のテック業界では、投資環境が急速に整い、整いすぎて過剰に投資資金が集まる状況になったこともあって、新サービスの競争はしばしば資本力の競争になることがあります。いわゆる「焼銭大戦」と呼ばれるもので、大量のクーポンを発行し、大量のサービスを投入し、一気にシェアを握ってしまおうというものです。
そのため、資金力のないスタートアップ企業や遅れて参入をした企業は、なんらかの知恵を絞らなければ食い込んでいくことができません。そこで、焼銭大戦となりやすい主戦場を避けて、サブ市場で力を蓄えてから、主戦場に再参入するという戦略を取ることが多いのです。
中国の場合、購買力のある大都市が主戦場となることが多く、購買力の弱い地方市場や農村がサブ市場となることが多くなります。このような企業の戦略が「農村から都市を包囲する」と表現をされることになります。
この記事は約
NaN 分で読めます(
NaN 文字 / 画像
NaN
枚)