【下町の酒場で…】
「あーら、きんちゃんいらっしゃい、いつもの席空いてるわよ」
みつおはすっかりその店が気に入って毎日のように通っていた。
「マーマ、キープ残ってる?」
「あいよ、まだ残ってるわよ」
その店は繁華街のスナックのように高くないので、1人でキープを飲むと2,000円で済むのだった。
那覇とは大違いである。
那覇のスナックは高かった、座っただけでチャージとチャームで2,000円である。
クラブだと座っただけで1人1万円の所もあった。
それに比べると、酒飲んで歌っても3,000円で済むのは嬉しかった。
「きんちゃーん、ちょっと賑やかな曲おねがーい」
「おっけー、賑やかな曲ね」
「きんちゃん、チークタイムしたいからムードのある曲おねがーい」
いつの間にか、みつおはお店を盛り上げるためのカラオケ担当になっていた。
店の都合に合わせて歌を歌うのである。
那覇のスナックで働いていたみつお、年配の客層の好みそうな曲を沢山知っていた。
だから、年配の客はみつおが歌うと喜んでくれたのである。
そこに目をつけたママさんは、いつのまにかみつおに歌のリクエストをするようになっていた。
みつおの歌に合わせてママさん狙いの客がママさんとチークタイムをするのである。
もちろん、ママさんは商売のプロなので、ここでチークタイムを踊る事でニューボトルが出る事を計算してのことだった。
「きんちゃん、いつもありがとうね、カラオケ代はいらないからさ、たまには自分の歌いたい歌も歌ってね」
「ありがとうございます」
といって曲を探しても、結局は店の客層をみて喜びそうな歌を歌うのだった。
これはスナックの時の職業病で今だにカラオケを歌う時はその店の雰囲気に合わせて選曲するのだった。
丘のホテルの、赤いひが〜
「よっ、いいねー」
「きんちゃん、よくこんな歌知ってるわね」
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