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『グーグル日本法人元社長 辻野晃一郎のアタマの中』
~時代の本質を知る力を身につけよう~【Vol.18】
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【今週号の目次】
1. 気になったニュースから
◆ テレワーク率が減少してオフィス回帰へ
2. 今週のメインコラム
◆ 日本経済凋落の真因を探る(第7回):家電産業で何が起きたか(その6)
3. 読者の質問に答えます!
4. スタッフ“イギー”のつぶやき
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1. 気になったニュースから
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◆ テレワーク率が減少してオフィス回帰へ
◇ オフィス出社を求める動きが活発化
8月7日に配信された朝日新聞デジタルの「テレワーク実施15.5%、コロナ禍後で最低 オフィス回帰浮き彫り」という記事が目に留まりました。
同日、日本生産性本部が発表した調査結果によると、働く人のテレワーク実施率が15.5%となり、新型コロナ禍以降で最低になったそうです。半年前の前回調査時の16.8%から1.3ポイント低下し、最も高かった2020年5月の初回調査時の31.5%と比べると半分以下の水準になりました。
テレワークを活用していると答えた人は、従業員1,001人以上の企業で22.7%、101~1,000人の企業で15.5%、それ以下の企業では12.8%となりました。特に大企業での低下が目立ち、前回調査の34%から11.3ポイント減少しています。
週5日のすべてをテレワークする人の割合も14.1%と、半年前の調査からほぼ半減しており、テレワークを継続する人の間でも出勤日数が増える傾向にあります。
同調査は今回が13回目で、国内企業などで働く20歳以上の1,100人を対象に、7月10から11日にかけてインターネットで行われました。
日本生産性本部によると、政府が今年5月に、新型コロナの感染症法上の位置付けを5類に移行したことを受け、コロナ禍での緊急対応としてテレワークを導入していた企業で、オフィス回帰を求める動きが活発になっているそうです。
◇ 米国でも同様の傾向
米スタンフォード大学の報告によると、米国の全労働者のうち、出社してフルタイムで働く労働者は約60%で、彼らは相対的に賃金が低い傾向にあるということです。小売業、飲食業、旅行業、警備業などの職種にあたります。週に2~3日の出社とテレワークを組み合わせたハイブリッドワーカーは約30%を占めていて最も賃金が高く、フルテレワーカーは約10%とのことです。
オフィス回帰を求める傾向は米国でも同様で、アマゾンでは、社員への出社(RTO:Return to office)を求めるメールが物議を醸しているそうです。アマゾンは、2022年時点では、社員に出社を強要しないとしていましたが、今年2月、週3日以上の出社を求める形に方針を改めました。そして、8月9日、RTOポリシーを遵守していない社員に対して、出社を促す警告メールを送信し、一部社員の反発が高まっていると報道されています。
グーグルも、コロナ後、一部の社員に対して完全なテレワークを認めてきましたが、現在ではハイブリッドワークに切り替えて、やはり週3日以上の出社を求めています。テレワーク嫌いで知られるイーロン・マスクも、テスラやX(旧ツイッター)などではオフィス出社を原則とし、テレワークを禁止しています。
コロナとは無関係ですが、かつて私が在籍していた時代のグーグルで、製品担当の副社長をしていたマリッサ・メイヤーが、2012年にヤフーのCEOに転出したときにも、幽霊社員の実態が把握できないとして、翌年、在宅ワークを禁じる措置を講じていました(ちなみに、マリッサはヤフーの立て直しに失敗して、ヤフーはベライゾンに買収されてしまいました)。
極めつけは、Zoomが週2日のオフィス出社を命じたことでしょう。同社では、2022年1月の時点で、社員のわずか2%しか出社していなかったそうですが、コロナによるテレワーク拡大の最大の恩恵を受けて急成長した同社が、オフィス回帰の姿勢を強めたことは皮肉でもありインパクトがあります。
◇ テレワークは生産性を落とすのか?
前述のスタンフォード大学の報告によると、――
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