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第228号 貧困児童の夏休み/クジラが初めて泳いだ日/続々・西瓜/走れ!4トントラック

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  • 2023/08/23
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「貧困児童の夏休み」 東京に本部を置く認定NPO法人「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」が、8月2~6日に実施した「ひとり親世帯」を対象にした生活実態アンケートによると、この夏休み中の子どもの食事回数について、「1日2食」との回答が全体の40.2%に上りました。これは、夏休みで学校給食がなくなるからです。ちなみに、「1日3食」は54.9%、「1日1食」は3.8%でした。 「電気代を節約するためエアコンの使用を控えようと思うか」という設問には、「思う」と「とても思う」が合計で82.4%となりました。また、1週間のお風呂やシャワーの回数については、「週4~6回」が24.1%、「週2~3回」が9.2%となり、この猛暑でも3世帯に1世帯は、毎日お風呂やシャワーを使っていないことが分かりました。そして、どうしてここまで節約しているのかについては、回答者全員の7月の収入の平均が「12万4000円」という事実が物語っています。 住んでいる地域にもよりますが、1カ月の収入が「12万4000円」で、ここから家賃を支払い、高騰し続ける光熱費を払ったら、そうとう厳しい状態になると思います。その上、食品や日用品も値上げラッシュが続いているのですから、食事の回数を減らしたり、エアコンの使用頻度やお風呂の回数を減らす世帯が多いのもうなずけます。 そして、ここでの落とし穴は、「1日2食」との回答が40.2%だったからと言って、これは単純に「ひとり親世帯の子どもの10人に4人が1日2食しか食べられない」ということではない、と言うことです。何故なら、これは「世帯」ごとのアンケートであり、子どもの数は「1世帯あたり最低1人」だからです。 あたしは週に1回、近所のお寺でやっている「子ども食堂」のお手伝いをしていますが、小学生のお姉ちゃんと保育園児の弟など、子どもを2人連れて来るシングルマザーがとても多いのです。こうした現状を踏まえると、「1日3食」と回答した54.9%の世帯の多くは「ひとりっ子」なので金銭的負担が少なく、「1日2食」と回答した40.2%の世帯の多くは「子どもが2人以上」なので金銭的負担が大きい、と推測することができます。 つまり、世帯数で言えば「10世帯のうち4世帯が1日2食」ということになりますが、子どもの数で言えば「10人に5人以上の過半数が1日2食」ということになります。また、「1日1食」と回答した3.8%の世帯が、さらに子どもの数が多い「3人以上」であったと仮定すれば、人数換算して「10人に1人が1日1食」となってしまうのです。 あたしは、小学6年生の時に両親が離婚したため、中学1年生の時から母さんと2人、小さなアパートで暮らし始めました。母さんは子どもの養育費を1円も貰わずに離婚したので、朝早くから夜まで、2つのパートを掛け持ちして働くようになりました。あたしは、そんな母さんを見ていられず、入部したばかりの軟式テニス部を辞め、新聞配達のバイトを始めました。学校がある期間は朝刊だけ、夏休みや冬休みは朝刊と夕刊、あたしは中学の3年間、ずっと新聞配達を続け、お給料は封筒のまま、すべて母さんに渡して来ました。 そのため、わが家では、お金がなくて1日2食しか食べられないということはありませんでした。でも、今も母さんと2人暮らしをしているあたしにとって、安倍政権下で報じられた「母子家庭の子どもの2人に1人が1日3食を食べられていない」「全国で増え続ける子ども食堂が6000カ所を突破」という悲しい現実が、とても他人事とは思えませんでした。それであたしは、近所のお寺のご住職が運営している週1回の子ども食堂のお手伝いを始め、その後、ひとり親世帯に食品を無償提供する民間支援プログラムへの定額寄付を始めたのです。 しかし、あたしがSNS等で「シングルマザーへの支援」を訴えると、必ずと言っていいほど、「お前は絶対的貧困と相対的貧困の違いも知らないのか?日本の母子家庭は相対的貧困だから別に生活には困ってないんだよ!」などとイチャモンをつけて来る人たちがいます。テレビやラジオに出演している著名な政治コメンテーターの中にも、自民党政権寄りの一部の人たちは、「日本の貧困は相対的貧困だから大した問題じゃない」などと言っています。 ザックリ言えば、「絶対的貧困」とは、主に途上国などで飢餓に直面している人たちのことで、「相対的貧困」とは、主に先進国などで、その国の平均年収よりも低い人たちのことです。では、その実態がどうなのかと言うと、国税庁の「民間給与実態統計調査」による昨年2022年の男女の平均年収は、男性が「545万円」、女性が「302万円」です。一方、ひとり親世帯の平均年収は、男性が「420万円」、女性が「243万円」です。 いくら「相対的貧困」とは言え、日本の賃金はもともと男女格差が大きいですから、父子家庭の平均年収は「420万円」もあり、一般の女性の平均年収「302万円」より120万円近くも多いのです。ですから、同じひとり親世帯でも、父子家庭の場合は、自分の子どもに1日3食を食べさせられないというケースは、ほとんどないでしょう。あたしにイチャモンをつけて来る人たちは、こういうケースを言っているのだと思います。 しかし、日本のひとり親世帯の数は、母子家庭が約123万2000世帯、父子家庭が約18万7000世帯なのです。金銭的にそれほど苦しくない父子家庭は全体の約13%ほどで、残りの約87%は、平均年収が「243万円」の母子家庭なのです。こうしてデータを付き合わせて行くと、冒頭で紹介したアンケートの「7月の収入の平均が12万4000円」という発表ともツジツマが合い、調査の信頼度も増して来ます。 日本のGDP(国内総生産)は、アメリカ、中国に次いで世界第3位ですが、日本の子どもの相対的貧困率は、世界の先進国の中で最悪のレベルです。OECD(経済協力開発機構)の調査によると、日本の子どもの相対的貧困率は、OECD加盟国38カ国の中で21位。特に「ひとり親世帯」に限定すると、約半数の世帯が相対的貧困で、OECDのランキングではワースト3位になります。 多少、乱暴な言い方をすれば、この日本という国は、他の国よりも国民を働かせているのにも関わらず、その国民から徴収した税金を、自国の子どもたちのためにはあまり使っていない、自国の子どもたちにはほとんど還元していない、ということになります。そして、その実態が、今回のアンケート調査で証明されたのです。

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